347 自宅案内
皇族一同はいまは亡き皇后の話で盛り上がっていたら、あっという間に1時間が過ぎてしまった。皇帝とフレドリクは忙しいなか来ているので、フィリップの根城紹介に戻る。
「中も変わっているのだな。何故、こんな作りなのだ?」
1階は、突き当たりだらけ。2階に上る階段まで最低3回は曲がらなくてはならない作りなので皇帝からの質問が来てしまった。
「防犯状の都合だね。うち、6人しか騎士を雇ってないから、できるだけ守りを固めてるの」
「これで防犯になるのか? 心配だからもっと雇え。それぐらい出しても俺も文句は言わないぞ」
「う~ん……これが破られたら考えるよ」
「しかしだな」
皇帝の心配をフィリップがかわしていると、キョロキョロ廊下を見ていたフレドリクは閃いた顔をした。
「フィリップ……まさかこの作り……」
「わ~! こんなに人がいる中で言わないで! セキュリティーが~~~!!」
「フッ……これは誰が考えたのだ?」
「いちおう僕だけど……無茶振りを叶えてくれたのは大工の人。箝口令は敷いたから、そっちにも聞かないであげて」
「これは大変だっただろうな。父上には教えてもいいだろう?」
「うん。まったくお兄様には敵わないな~」
フィリップの考えたセキュリティー、天才フレドリクは簡単に看破。皇帝に耳打ちすると「面白い」とフィリップの頭を撫で回してた。
1階は見る物なんてそれぐらいなので、さっさと3階へ。ここのワンフロアのほとんどは、ガランとした何も無い空間だ。
「なんだ。まだ完成してないのか」
「完成してないというか、必要ないというか……相談なんだけど、ダンスホールとか必要? 必要ならここを使おうと考えているんだけど」
「まぁ、あったほうがいいとは思う」
「そっか~。絶対舞踏会なんて開かないのに、作らなきゃダメか~」
「開く気がないのなら、無理する必要はない」
「本当? もしもの時は、壁に豪華な布でも張って経費削減しよっと」
皇帝、フィリップの言葉で簡単に意見を変える。フィリップが懇意にしてる人なんていないもん。その逆に、フィリップに好意を持っている人も少ないもん。
3階にはいちおう客室はあるけど、ここも使われるか謎なので、いまは一部屋だけ。その説明をしたら2階に移動する。
「ここは皇族だけしか入れたくないんだけど……」
「もう時間も少ししかないからかまわん」
フィリップが部屋に入れる人数を絞ると、皇帝は執事やメイドに待機の指示を出してくれたのでホッとする。自分の部屋に知らない人は入れたくないんだって。
許可を得たフィリップは、玄関口でもお願い。靴を脱いでスリッパに履き替えてもらってから、ようやくリビングに招き入れた。
「ほう……」
「これはまた面白い部屋だな」
スウィートルーム風の部屋、皇帝とフレドリクになかなか好評。ルイーゼはフィリップの許可無くウロウロしてる。
フィリップは「好きに見て」と告げたらカイサとオーセにお茶の準備をさせ、皆の質問に答えていた。
「どうして板張りなのだ?」
「一番は掃除のしやすさかな~? 靴を脱いで入るから、汚れ難いでしょ? メイドも少ない人数で済むし」
「ここも経費削減か……」
「まぁね。そのおかげで気付いたんだけど、どこでも横になれるの。お兄様もどう?」
皇帝が難しい顔をするので、フィリップはフレドリクにトス。
「どうとは?」
「ほら? お姉様との赤ちゃんが産まれたら、こういう部屋があったほうがいいと思うんだよね。ハイハイしても、手とか汚れないよ?」
「なるほど、それは……」
「もう! フィリップ君! なに言ってるのよ~」
フレドリクと喋っていたのに、赤ちゃんというワードに照れたルイーゼがカットインどころか背中をバシンッと叩いたので、フィリップはイラッと来たけど睨めない。
ならば最善の手をと、わざと前のめりに倒れた。
「わっ! フィリップ君、ゴメ~ン」
「いつつ……ほら? 倒れても汚れな~い」
「アハハ。ホントだね。でも、痛かったよね? ヨシ……」
「コロコロ転がっても汚れな~~~い!!」
ルイーゼに頭を撫でられそうになったフィリップはコロコロエスケープ。その後ろには、怖い顔のフレドリクがいたんだもの。
そのまま転がっていたら、皇帝の足にぶつかりそうになったので、急停止。からの起立。背筋を正して右手を軽く差し出す。
「あちらにお飲み物を用意させております」
「フッ……お前も大変だな」
はしたないと怒られると思っていたフィリップは、皇帝に鼻で笑われただけなので心底ホッとしたのであった。
リビングのソファー席に移動したフィリップと皇帝は、フィリップは前に座ろうとしたのに皇帝の横に置かれたのでそこにお座り。カイサが頑張ってお茶を運んで来て、離れたところで皇帝の質問が来る。
「渡した金はどれぐらい残っている? 帳簿は付けているのか??」
「かなり残ってるよ。オーセ、帳簿持って来て」
「はっ」
元々この質問は来ると予想していたので、キッチンの引き出しに入れていた帳簿をオーセは丁寧に持って来て、膝を突いて皇帝に差し出す。
「家の改築までして、こんなに残したのか……」
皇帝の予想では、半分以上使っていると思っていたようだが、フィリップが使用した金額は4分の1程度。褒めるよりも驚きを隠せないみたいだ。
「まぁ僕に掛けるお金は、半分ぐらいでも大丈夫そうだよ」
「そうなるな……だが、このまま支払いは続ける。公爵になった時には入り用だから、その時まで貯めておけ」
「うん。もしもの時は、返すからね?」
「そんなもしもは永遠に来ない」
「そりゃそうか」
こうして皇帝たちは、残り時間いっぱいまでフィリップの部屋でくつろいでから帰って行くのであった……




