333 新メイド決定
「「着ましたけど……」」
「おお~。いいねいいね。見違えたよ~。ね?」
カイサとオーセが下級貴族の普段着に袖を通すと、フィリップはボエルと一緒にベタ褒め。
「カイサは少しサイズ合ってないかな? 今度、どこかで買ってあげるから、それまで我慢してね」
「はあ……」
「オーセもね」
「わ、私はこれでも……」
着慣れない服にカイサとオーセは恐縮しっぱなしでまた緊張したように見えるが、フィリップはそのまま続ける。
「それでなんだけど……僕のこと知って、働くのイヤになったよね?」
フィリップの問いに2人は顔を見合わせて頷いた。
「「い、いえ……」」
「本当のこと言っても大丈夫だよ? 怒ったりしない。どうしてもイヤなら、帰ってくれていいからね」
「「正直言いますと……畏れ多いと言いますか……」」
カイサとオーセは遠回しに拒否。それを聞いたフィリップはニッコリ微笑んで立ち上がった。2人はビクッとしたけど。
そのフィリップはボエルを後ろに立たせると、リビングを行ったり来たり歩き出した。
「これ見て何か思わない?」
「えっと……護衛を伴って歩いてるです」
「偉い人みたいです」
「平民だとそう見えちゃうか~……貴族だと違う風に見えるらしくてね~。いつもクスクス笑われてるの。ボエルはなんでか知ってる?」
「いや、それは……」
「知ってるなら教えてよ~」
フィリップが頬を膨らませて後ろを向くと、ボエルも言いにくそうに答える。
「オレが言ってるんじゃないからな? 貴族のバカ女どもだからな? アイツらオレの顔を見ると、『いつも子犬のお散歩大変ですわね~』って、嫌味を言われました」
「犬の散歩に見えてたの!?」
そりゃボエルも言えないワケだ。フィリップだってそこまでおかしく言われてたとは思ってなかったみたい。
「「プッ……フフフ」」
その話がおかしいのか、カイサとオーセは軽く吹き出した。
「なんで子犬なんだよ~。こんなに大きいんだよ? そこは成犬だよね??」
「「ブハッ! あははははは」」
「え? なんで笑うの??」
「殿下、そういうことじゃないんだよな~」
「「あははははは」」
そこを狙って笑いを膨らませたら、カイサとオーセも大笑い。ボエルの冷たいツッコミもちゃんとツボに入ってフィリップはしてやったりだ。でも、子犬扱いされてたのは、ちょっとショックだったらしい……
「まぁ2人をここに連れて来た理由は、そういうこと。僕、ナメられまくってるから、これ以上ナメられたくないの~。お願いだから協力して。ね?」
笑いが落ち着いた頃に、フィリップは最後のお願い。カイサとオーセは、初めてフィリップと会った時に思ったままの人物像だったから、働いてもいいと考える。
「うん……私はやってもいいかも」
「私も……でも、貴族様の中でやっていけるかどうか……」
「それは心配だよね。でも、カイサとオーセのことは、何があろうと僕が必ず守る。だから安心して僕に仕えて」
「「……はいっ!」」
交渉成立。カイサとオーセは、フィリップのことを信じると決めて、第二皇子専属メイドになることを自分の意志で決めたのであった。
専属メイドが決まると、フィリップは2人を抱き締めて感謝。でも、「第二皇子に抱き締められた!?」と2人はカチンコチン。
とりあえずフィリップもまだ早かったと反省して、2人には残りの服を好きに選ぶように言って離れる。
「あ、そうだ。ボエル、明日から2人にメイドの作法とか教えてあげて」
「オレが? メイド長に頼んだほうがいいんじゃないか??」
「2人はまだ貴族の常識をひとつも知らないんだから、段階を踏んだほうがいいと思うんだよね。最低、ボエルレベルにしてから教育係に預けたら、怒られることも少なくなるでしょ?」
「言いたいことはわかるけど……ボエルレベルってなんだ? まるでオレがレベル低いみたいじゃねぇか」
フィリップの言い方が悪かったので、ボエルはオコ。
「ボエル……メイドレベル高いと思ってるの?」
「そりゃ~。皇子専属になれるぐらいなんだから、それなりの実力だろうよ」
「ないないない。エイラとダグマーと比べたら、いいとこ半分の実力だよ」
「んなわけないだろ! どこが悪いんだ!!」
ボエルがツバを飛ばして怒鳴るが、フィリップは真面目な顔で反論する。
「まず、口。エイラたちは敬語を崩したことがない」
「あ……」
「あと、なんでもかんでも顔に出すとこ。それにお辞儀の角度も悪い。お茶も僕のいれたヤツのほうが美味しいしね~……」
それは出るわ出るわ。ボエルも一切反論できずにどんどん小さくなって行くのであったとさ。
「さあ~て! 2日連続の宴だ~! 新しい仲間、カイサとオーセにぃ……かんぱ~~~い!!」
「「「「「かんぱ~~~い!!」」」」」
夕方になると、1階のエントランスで宴。昨日より人数は少ないが、料理は豪華だ。これだけでもカイサとオーセは感動しているけど、ふと違うことも頭に浮かんだので、今日迎えに来てくれた護衛騎士に聞いてみる。
「あの……第二皇子様も同じ物食べてるんですが、これって普通のことなんですか?」
「いや、普通じゃない。殿下はな~……俺たちも新入りだからサッパリわからん。いたっ。これか? ボエルが言ってた『殿下のことを考えると頭が痛くなる』ってのは……いてて」
「いつから殿下に仕えてるのですか??」
「まだひと月ぐらい……」
護衛騎士、早くも頭痛持ちになる。なので長く仕えているボエルは皆から尊敬と哀れみの言葉が次々と送られ「わかってくれるか~?」と大泣きしたんだとか……




