328 親友の反応
カイサとオーセに手紙を渡した次の日は、ボエルと一緒に新居に移動。そこの庭でフィリップはボエルと喋っていた。
「午後から今日も彼女のとこ行くの?」
「ああ。今日は長く会えるんだ。ムフフ」
「そのついででいいから、彼女の主人にこの手紙を渡してくれる?」
「主人に? また何か企んでるんじゃないだろうな??」
「ちょっとお願いがあるだけだよ。ボエルは関係ないから気にしないで」
まだボエルは疑った目をしているので、フィリップは話を逸らす。
「てかさ~……女性と付き合ってるって、友達にいつ言うの?」
「いつと言われても……」
「近衛騎士になる時にも秘密にするつもり? 秘密にすると、カイとお兄様も対応が難しくなると思うんだよね~」
「うっ……そうだよな。オレみたいなどっちつかずの人間、初めてだろうからどうしていいかもわかんねぇよな……」
「とりあえず、友達からカミングアウトしてみたら? 怖いだろうけど、頑張って!」
ここはフィリップも心を鬼にしてボエルのカミングアウトを見守る。ボエルも覚悟を決めて護衛騎士の下へ向かったが、怖くなる度に振り返るので、フィリップがニヤニヤしてることが3回目でバレていた。
それで少しは緊張が解れたボエルは護衛騎士の前に立つと、大声で自分のことを完結に説明する。
「オレ、体は女だけど、心は男なんだ!」
そのカミングアウトに護衛騎士は……
「「「「「……知ってるぞ?」」」」」
「はあ??」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
「ちょっと待ってろ……」
全員、真顔で同じ答え。こんなに簡単に受け入れられたことが信じられないボエルであったが、フィリップが転がって笑っていたから頭グリグリだ。
「殿下がこいつらに何か吹き込んでいたのか?」
「違う違う。その説明だと、全然足りてないの。付き合いの長い人ほど、ボエルの中身は男だって思ってるって」
「てことは~……説明する必要ない?」
「ないワケないでしょ。彼女のこと言ってみたらわかってくれるはずだよ」
ボエルが逃げようとするのでフィリップの助言。
「オレ、女と付き合ってるんだ!」
「「「「「だろうな」」」」」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
「殿下!? 騙しやがったな!?」
でも、それも納得が早いのでフィリップは大笑い再び。ボエルが激怒して胸ぐら掴むので、説明はタッチ交代だ。
「女が女と付き合ってるのっておかしくない?」
「普通は……でも、ボエルは俺たちが女の話をしていたら、喜んで入って来てましたので。好みのタイプも知ってますよ」
「そういうことか~」
どうやら学生時代からボエルは男とつるみ、男どうしの会話にも喜んで入っていたらしい。
「ま、それなら話は早いと思うけど、これからする話は真面目に聞いて。時として、神様は人々に非情なことをするんだよね~……」
フィリップから語られる性同一性障害の概要。護衛騎士は命令だから真面目に聞いていたけど、途中からなんとも言えない顔になっていた。
「そういうことだったのか……」
「どうりで女の中に入って行かないワケだ……」
護衛騎士から見詰められたボエルは目を逸らした。
「変だよな。気持ち悪いよな……だから、誰にも相談できなかったんだ……」
友達に哀れんだ目をされたと思って……
「そんな顔するなよ。そっちのほうが気持ち悪い」
「ボエルは男だろうと女だろうと、ボエルだろ」
「そうそう。男と言われたほうがしっくりくる」
「そんなことで、友達やめるワケないだろ」
「てか、彼女、どんな子だ? 紹介しろよ~」
「みんな……」
その考えは間違い。護衛騎士は全員、ボエルのことを受け入れてくれたから、ボエルもいまにも泣きそうだ。その気持ちを汲んで、フィリップが前に出た。
「ボエルの彼女、ボンキュッボンで、幼い顔立ちしてるんだよ~? それにボエルはメロメロ。一時期…ムグッ」
「わ~! わ~わ~わ~! 余計なこと言うな~~~!!」
いや、からかうためだね。彼女とニャンニャン言っていたこともチクろうとしたけど、ボエルに口を塞がれるフィリップであった。
「てか、誰かボエルに惚れた人いなかったの?」
「「「「「こいつに惚れる~~~??」」」」」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
「い、いいだろ! ……笑い過ぎなんだよ!!」
フィリップの質問に護衛騎士はめっちゃ嫌そうな顔をするので、再びフィリップは笑い転げるのであったとさ。
ボエルの秘密を聞いても、護衛騎士は態度が変わらない。嬉しくなったボエルは照れ隠しで殴っていたから、フィリップが止めていた。クマパンチは致死性があるもん。
そうしてフィリップは自室に戻ったら、ボエルはスキップで彼女に会いに。夜になると翌日の予定を話し合ったり、ペトロネラにお酒1杯だけ付き合ってマッサージするフィリップ。
朝になるとダラダラして、お昼前におめかしだ。
「あぁ~……行きたくねぇ~」
「まだ言ってるよ……フレドリク殿下に招待されたんだから諦めろ。それに中を見たかったんだろ?」
「見たいけど、誰もいない家の中を漁りたかったんだよ~」
「それはただの泥棒なのでは……」
今日はフレドリク邸にお呼ばれされた日。フィリップはフレドリクとルイーゼが揃っている所に行きたくないのでいまさらゴネまくり。
かといって、遅れるワケにはいかない。フィリップは嫌々馬車に乗り込み、フレドリク邸に向かうのであった。
「お腹痛い気がする……」
「気のせいだ。てか、ここまで来てゴネるなよ」
まだまだゴネるフィリップに手を焼くボエルであったとさ。




