327 護衛騎士の初任務
ボエルが久し振りに彼女に会った次の日。今日もフィリップは部屋でゴロゴロしてると言ったら、ボエルは昼前にスキップで部屋から出て行った。
フィリップは用意されたランチをムシャムシャしながら豪華な服にお着替え。着替えも終わると部屋を出た。
最初はのんびり城の中を歩き、人気がない場所まで来たらダッシュで移動。時間を短縮してやって来たのは、フィリップの新居だ。
「やあやあ。ご苦労ご苦労」
フィリップが新しく設置した門から入って偉そうに労いの言葉を掛けると、庭で訓練していた護衛騎士がギョッとした顔をしたあとに全力疾走で挨拶しにやって来た。
「お、お疲れ様です。ボエルはどうなさったのですか??」
「疲れてないよ。ボエルは~……逢い引き中」
「アイツ、男いたんですか!?」
「僕が言ったって言わないでね~?」
ギョッとした理由はボエルを連れずにフィリップが1人で歩いて来たから。ボエルにパートナーがいると聞いたほうが凄い顔してるけど。
ただし、ボエルはまだカミングアウトしていないのでフィリップからは言い辛い。その辺は濁して、今日来た目的だ。
「普段着、持って来た?」
「はっ。用意しております」
「んじゃ、町にお出掛けしようか」
「はっ! ……はあ~~~??」
フィリップの対応していた護衛騎士、普段着は聞いていたけど町に出るなんて聞いてなかったので驚いちゃった。
「実地訓練だよ。できないなんて言わないよね?」
「いえ……ちなみにですが、応援なんかは……」
「なし。まぁ僕もまだお前たちのこと信じてないから、お忍びってテイの馬車移動だけにする。今日、信頼を勝ち取れ」
「はっ!」
「「「「「はっ!」」」」」
突然の無茶振りだが、第二皇子の命令には逆らえない。それにフィリップが護衛を簡単にしてくれていると言ってくれたのだから、それならばできると確信して準備する護衛騎士たちであった。
フィリップも綺麗目の平民服に着替えたら、護衛騎士が使っている普通の馬車で出発。2人が御者をして、2人がフィリップと同乗。残り2人が馬車の後ろから徒歩で目を光らせるシステムだ。
新居から出た馬車は外壁に向かい、そこから南に抜ける通路を走る。その時、フィリップは窓から顔を出して後ろを見たら、徒歩組が目を血走らせていたので「リラ~ックス。そんなんじゃ要人が乗ってるとバレるよ~?」と苦情。
馬車の中でも護衛騎士が鼻息荒いので、フィリップはボエルの帝都学院時代の面白い話をさせて緊張を解していた。
そうして貴族街に出る門に到着すると、フィリップが顔を出して、外出用の紙にサインする。これはもう大人なので、1人で手続きできるのだ。
でも、門番には話が行ってなかったから揉めたので、フィリップは「クビになるか物理的に首だけになるか、どっち?」と脅してた。
それでなんとか城を脱出したけど、馬車の中の護衛騎士がド緊張。自分も首だけにされるのかと怖かったみたい。
なのでフィリップはまたボエルの話をして、ダンジョン実習ではボエルがテンション上がって護衛をすっかり忘れていた話で笑いを取る。
貴族街は治安がいいというか人がほとんど歩いていないので、楽々クリアー。貴族街の門番もフィリップが脅せば、ほぼ素通りだ。
ここからは危険度が上がるから護衛騎士に緊張が走ったが、それは外だけ。フィリップが下品な話ばっかりするから、護衛騎士はけっこう楽しんで聞いてる。
「じゃ、お前だけついて来て。残りは待機」
「はっ」
目的のカフェに着いたら、フィリップはカツラを被り1人だけ護衛騎士を連れて中に入る。その護衛騎士も、入口で待機だ。
「あ、いたいた。久し振り~」
「う、うん……久し振り」
フィリップはカイサを見付けると、小走りに近付いた。
「今日は準備が整ったから、手紙を持って来たよ。そっちはもう準備は整った?」
「うん。いちおう……本当にいいとこの子だったのね。護衛まで連れちゃって」
「あれ? もうバレたの? またアイツは緊張して~……素人連れて来たと思わないでね?」
「あ、その可能性もあるのか。見栄張ってるんじゃないよね~?」
「まぁちょっとは張るよ。マスター、これ、迷惑料。引き抜いちゃって悪かったね」
「金貨……10枚!?」
「「「「「そんなに!?」」」」」
引き抜き料があまりにも多かったので、マスターだけじゃなくその場にいた客までビックリ。
その雰囲気のなか、フィリップは「手紙に全て書いてあるけど帰ってから開けてね。絶対に誰にも見られないで」と、カイサに念を押してから引き上げるのであった。
フィリップが馬車に乗り込むと、徒歩組を変更。車内組を歩かせて次に向かう。
その車内では、カフェについて来た護衛騎士のダメ出し。一目で護衛とバレたから、次はバレないように念を押しているみたい。でも、2人とも自信がないみたいだからジャンケンだ。罰ゲームみたいだな。
続いて向かった先は、大衆食堂。フィリップから先に入って護衛騎士は入口に立たせたけど、やっぱり緊張してる。
「オーセ。来たよ~?」
「ライアンく~ん!」
ここはオーセの働く職場。フィリップが声を掛けると、オーセは嬉しそうに走って来てフィリップに抱きついた。
「もう~。遅いから騙されたんじゃないかと思ってたんだからね~」
どうやらオーセは、フィリップの資金力とテクニックにけっこうやられていたから、こんな出迎えをしたっぽい。
「ゴメンゴメン。お待たせ。この手紙に迎える詳しい日時とか書いてあるから、帰ってから家で読んで。絶対に誰にも見られないように1人で読んでね?」
「うん。わかった」
「ところで、店はいつでも辞められる感じ?」
「それは大丈夫。大将に話したら、絶対に騙されてると引き留められたけどね」
「アハハ。そりゃそうか。こんなにかわいらしいもんね。大将! 引き抜いた迷惑料だ。受け取ってよ」
「「「「「そんなに!?」」」」」
こちらも金貨10枚で売買成立。あんなに引き留めていた大将が手のひら返ししたからオーセは怒っていたけどね。
こうして引き抜きを金銭でやり取りしたフィリップは、笑顔で帰路に着くのであった……
「なあ? 今日のアレって、側室かなんかの引き抜きかな??」
「たぶん……」
「殿下、ロリコンだったんだ……」
「これ、人に言ったらヤバイやつだよな……」
「「「「「はぁ~……」」」」」
それとは逆に、フィリップが少女を買ったと勘違いした護衛騎士の6人は、寮に帰ってからヤバイやつに仕えてしまったのではないかと不安に駆られるのであったとさ。




