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【完結】夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します  作者: ma-no
一章 帝都で夜遊び

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022 雲隠れ


 衛兵に屋根に登って逃げているのを見られてから夜の街で遊びづらくなったフィリップは、最近は城の自室にこもっていた。1週間ほど雲隠れして、ほとぼりが冷めるのを待つ作戦を取っているみたいだ。

 そのフィリップは、夜に眠れるように昼型になり、ベッドの上でノートを見ながらブツブツ言っている。


「な~んかこの世界、変なんだよな~。城と一般家庭では、世界が異なるような技術差があるんだよな~」


 実はフィリップが夜遊びをしていた理由は、この世界の調査。マッサージのために外に出ていたわけではない。

 病弱設定のせいで城から出ることもままならないし、人々が寝静まった時間しか行動ができないので、夜の住人から情報を聞き出していたのだ。


「あ、ここの娼館に行き忘れてた。今度、誰かにお金を掴ませて連れてってもらおっと」


 けっして、マッサージのために出ているわけではない。はず……


「そうそう。城は水道とかあるのに、外ではないんだよな。井戸から水を汲んでたし……お風呂のお湯も、ここまで来たら魔法で沸かしたらいいのに薪だし……しかもシャワーからお湯が出るってどうなってんだ?」


 ほらね? 真面目に考えてるでしょ??


「貴族の家とか高級なお店はみんなボイラー室があるらしいけど……ちょうど中間辺りまでの宿屋はタオルで拭くだけ。ちょっと上のランクは浴槽と水道はあるけど、出て来るのは水だけ。不思議だ……」


 治水関連を考えても答えが出ないので、ノートを捲って違うことを考える。


「女性も妙に美人が多いんだよな~……ブスだと思ったのは2割前後。貴族が美人なのはわかるけど、一般市民はなんで? 肌とか髪の毛がもうちょっと綺麗だったら、貴族とたいしてかわんないぞ。う~ん……」


 意外とフィリップはこまめにメモを取っていたみたい。ノートには年齢別の男女をグラフ化した物が書いてあるから一目瞭然。ちなみに男性は、フィリップ目線では5割ぐらい見た目が悪いらしい。


「ひょっとしてこれって……」


 他にも気になる点をノートを見ながら考えていたら、フィリップもある可能性に気付いた。


「乙女ゲームの世界観が反映されてる? だったらゲームに出て来る場所やそれに近い場所が近代化されてたり、絵師さんの書いた絵に近い人物像になるかも……だから西洋風の世界なのに、言葉や文字が日本語なのかも……そう考えたら、モンスターが僕の魔法に対応できないことも辻褄(つじつま)が合う……」


 これがフィリップの結論。しかし、それにも穴がある。


「どんな発展の仕方をしたらこんなことになるんだよ~。神様がイタズラで作ったとしか思えないぞ~」


 結局はドツボに嵌まり、ノートを投げ捨てるフィリップであったとさ。



 考え事がいちおうの結論が出たフィリップだが、納得できないとベッドの上をゴロゴロ転がっていたらノックの音が響いたので入室を許可したけど、さっき投げ捨てたノートが床に落ちたままなので焦るフィリップ。


「そんなところでどうされました?」

「端にいたら滑って落ちちゃった。アハハ」

「お怪我はありませんか?」

「うん。ダイジョブ。よっこいしょ」


 エイラが入って来たけどギリセーフ。ノートはアイテムボックスに入れて、ベッドに戻ったフィリップ。それから何をしに来たかと聞いたら、体調がいいなら勉強しろとのこと。

 フィリップもたまには勉強してやるかと重たい腰を上げて、エイラと一緒に勉強机に向かった。ただし、現代人のフィリップには問題が簡単すぎるので、わざと半分以上間違えて答えている。


「そこはこう書くのです。妖せ……フフ」

「ん~? 何がおかしいの??」


 フィリップが「幼生」を「妖精」と書いてエイラが正そうとしたけど、何故か軽く吹き出した。


「いえ。城下で妖精が出たと話題になってると聞きまして。メイド仲間で話をしていたので、こんな偶然があるのだと笑ってしまいました」

「へ、へ~……妖精って実在するんだ~。どんな見た目なの?」

「男の子の妖精と聞いていますが、どうなんでしょうね」

「女の子じゃないんだ~」


 まさか城でも話題になっていると知ってフィリップは焦ったが、なんとか顔に出さずに乗り切り、男の子から女の子に話をすり替えようとしている。

 しかしエイラはフィリップの顔をジッと見て来たから、夜遊びがバレたのかと緊張が走った。


「殿下なら綺麗な顔なので、暗闇で出会ったら妖精と間違えられそうですね。ウフフ」

「そこまで小さくないって~。ほら? 羽も生えてないでしょ??」

「ウフフ。冗談ですよ。ウフフフフ」

「アハハハハ」


 珍しくエイラが褒めて笑っているのでフィリップも茶化して笑っているが、本当はこんなことを思っていた。


(いや、妖精に思われるぐらい僕って背が低いの? いったい僕は、何センチまで大きくなるんだろ……)


 現在8歳で身長が110センチぐらいのフィリップには、大きさで笑われるのは現実を思い出してしまうのでやめてほしいのであったとさ。



 それから予定通り1週間は部屋でゴロゴロし、たまにエイラから勉強を教えてもらって馬鹿っぽい回答をして、夜にはエイラに教えてもらったマッサージの復習をする日々。

 念の為もう数日様子を見たフィリップは、雲隠れしてから10日後にキャロリーナの奴隷館に顔を出した。


「生きてた!? 心配したのよぉ~~~」

「オッフ……」


 走り寄るキャロリーナはフィリップの顔を胸に挟んで抱き上げたので、フィリップは嬉しそうな声が出たけど、数秒後にはギブアップして下ろしてもらっていた。窒息しかかったらしい。

 それからキャロリーナの自室まで抱いたまま連行されたフィリップは、ベッドの上に投げ捨てられた。


「生きてたってどういうこと??」

「尾行の話をしてから来なくなったじゃなぁい? 衛兵にも追われてるって話があったからぁ、そのどちらかに殺されたのかとぉ……」

「あ~……そっか。何も言わずに消えたもんね。ちょっと別の町に行ってただけだよ」

「よかったぁ~~~」

「てか、脱がすの早すぎない??」

「溜まってたのぉ~~~」


 キャロリーナは何が溜まっていたかわからないけど、しばらく話ができないぐらい2人はベッドの上で暴れ回るのであった……


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