194 冬休み初めの出来事
フィリップに取り入ろうとしたヴィオラ・エーケロート伯爵令嬢の事件は、フレドリクが上手く立ち回ってくれたのですぐに収束。
冤罪を掛けられたルーヌ・ポールソン男爵令息には、婚約者の家に一筆書いていたから、もしも変な噂があがっても仲は拗れないだろう。
ヴィオラは噓をついた手前、フレドリクは注意はしていたけど、その一言でダメージ大。皆から嘘つき扱いされて、恥は上塗りされてしまった。
その事件を聞いた女子たちは、自分が一番じゃなくてよかったと胸を撫で下ろしていた。フィリップならハニートラップに簡単に引っ掛かると思っていたから、同じことをしようとしていたみたい。
それなのに大声で犯されたなんて宣伝されるのだから、たまったものじゃないと手を引いていた。
フィリップがここまで騒ぎを大きくしたのは、見せしめ。元々リネーアをネタに近付いて来るとわかっていたから、わざと騒ぎを大きくして牽制したのだ。
そのおかげで女子たちは違う策を考えているから近付いて来ない。男子が来たらシッシッと追い払って、平和な日常を過ごしている。
しかしながら、学校は平和だけど寮の自室はそうはいかない。授業中はずっと寝てるんだからと、ボエルはフィリップを殴る勢いで勉強を教えているからだ。
リネーアもそれに巻き込まれてというか、勉強について行けてないのだから真面目に聞いてる。なので、適当に聞いてペンをクルクル回して遊んでいるフィリップは、「リネーアを見習え!」ってボエルに怒られっぱなしだ。
そんなことをしていたらついに二学期の期末試験となり、ボエルは自信満々でフィリップを送り出した。
「ご、50点……」
「ゴメ~ンちゃいっ」
「なんで何もしなかった前回より低いんだよ~~~」
でも、この体たらく。あんなにやったのにと、ボエルは床に手をついて嘆くのであった。
ちなみにフィリップが皇帝に見せる答案用紙に書いた点数は平均70点。学校側に見せる解答用紙は何点に設定しようかと悩んだ結果、前回より低く前々回より高い平均50点にしたのだ。
ちなみにちなみに、リネーアは頑張ったけど、勉強の遅れが酷かったので平均35点。それでも過去一番で点数が高かったので喜び、嬉しそうに復習してる。
「そこはこうしたほうがいいよ」
「あ、本当ですね。わかりやすいで…す……」
「ん?」
「殿下もここ間違ってなかったですか?」
「そうだっけ? 忘れた~」
「本当は賢いのでは??」
たまたまその現場を見たフィリップがアドバイスしてしまったので、リネーアに疑われるようになったのであったとさ。
期末試験が終わると、帝都学院は冬休み。
フィリップがテラスに出て外を見ていたら馬車が1台も発車しないのでボエルに聞いたところ、冬休みは短いし、年末年始には貴族がこぞって帝都に集まるから、子供は親と会えるから帰る人はいないらしい。
「何しに来るの?」
「なんで知らねぇんだよ。皇帝陛下主催の式典があるから、貴族の当主は全員参加なんだよ」
「ああ! いつも体調不良で寝てた!!」
「マジか……第二皇子が一度も出席してないだと……」
ボエル、驚愕の事実に戦々恐々。フィリップは内容を聞いたらつまらなそうだったから、体温を上げてサボってただけなのに。なんなら、夜には町に繰り出し、カウントダウンやニューイヤーパーティーを主催してはっちゃけていたのに。
そんな2人が今年の年末はどうするかの話をしていたら、深刻な顔をしたリネーアがやって来た。
「そろそろ殿下の部屋を出ようと思うのですが……」
「あ、そう。体に気を付けてね」
「言い方! あんなに心配してたのに、そんな言い方ないだろ!!」
リネーアとは逆に、フィリップは軽すぎたので、ボエルのツッコミが炸裂だ。
「ゴメンゴメン。冗談冗談。顔が暗かったから、笑わそうとしただけだよ~」
「本当のこと言ってると思うんだけど、言い方が噓っぽいんだよな~」
「ほら? リネーア嬢も笑ってくれてるよ」
「本当だな……でも、納得いかねぇ!」
「「「アハハハハ」」」
再びボエルがツッコムと、一同大笑い。これがここでの日常なのだから、リネーアもマーヤも心が軽くなったのだろう。
「ま、なんにしろ。怖くなったり不安になったら、いつでも遊びにおいで。扉は開けておくから。あ、いまの比喩だからね? 戸締まりはするから、反応がなかったら待っててね」
「わかっております。安心できる場所を殿下が用意してくれているだけで、私は救われております。長い間、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「そんなのいいって。すぐ帰って来てもいいからね」
「はいっ!」
涙ぐんで頭を下げるリネーアをフィリップが優しく励ますと、満面の笑みの返事。そのまま出口に向かったけど、タタタッと小走りで戻って来た。
「あの……例のこと、したくなったらどうしたらいいでしょうか?」
どうやらフィリップのマッサージを定期的に受けたいから戻って来た様子。
「アハハ。エッチな子になったね~」
「もう……殿下がそうさせたんですよ~」
「この分なら、彼氏ができるのも近いかな? 彼女にしとく??」
「いい人に巡り会えたら、どちらでも嬉しいです」
こうしてフィリップに両刀使いに改造されたリネーアは、笑顔で部屋から出て行き、度々マッサージを受けに帰って来るのであった……




