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【完結】夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します  作者: ma-no
八章 夜遊びの自主規制

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187 フレドリクの策


 アードルフ侯爵一家が殺害されてから1週間……この間にフレドリクは慌ただしく動いていた。


 フィリップが予想した通り、皇帝は被害者の線から暗殺者を突き止めようとしていたが、それをフレドリクがあの手この手で止めようとしていた。

 そんなことをしていたら、アードルフ侯爵家を調べていた者から調査報告書が届き、潮目が変わる。


 アードルフ侯爵家の敷地から、100人どころではない数の遺骨が見付かったからだ。


 どうやらフレドリクはこの報告書を待っていたから時間稼ぎをしていた模様。死者数さえわかれば皇帝の説得に使える。死者数が増えることもフレドリクの読み通り。

 この頃には帝都では、アードルフ侯爵家の罪が広げられていたから、フレドリクはいもしない義賊をでっち上げるだけで民衆は盛り上がって、話題は皇帝の耳にも入っている。


 あとは落とし所。民衆のガス抜きがてら、アードルフ侯爵家はお取り潰しにすることで皇家の信用は上がる。どうせ跡取りは全員死んでいるのだから、貴族からの不満も上がらないから皇家へのダメージもなし。

 でっち上げた義賊が自分だと言う馬鹿が現れれば、裁けばいいだけ。暗殺者もボロを出すかもしれない。なんなら民衆が見付け出してくれるかもしれないから、これほど楽なことはない。


 これらの策をフレドリクが用意したのだから皇帝も被害者を捕らえることはやめ、表向きには暗殺者を探すフリだけで事態の収束になったのであった。



「すげぇ~。フレドリク殿下、どんだけ賢いんだよ」


 フレドリク暗躍の話は、本人からフィリップに説明があったのでボエルは大興奮。フレドリクが出て行った瞬間、大声でフィリップに同意を求めた。


「ま、これぐらいやってくれないとね」

「なんだよ。殿下の願いを全て叶えてくれたのに偉そうだな」

「そりゃ、黒幕は僕だも~ん。お兄様を上手く操れたな~」

「操る? ……あっ! そういう捉え方もできる!!」

「このまま僕がお城でぐうたら生活できるように、頑張って操るぞ~」

「そんな考えのヤツには、フレドリク殿下を操ることなんて無理だな……」


 フィリップの言葉をちょっと信じてしまったボエルだが、ぐうたら発言で噓をつかれたとすぐに気付いてしまうのであったとさ。



 その夜のフィリップは、皆が寝静まったら夜の町に出て情報収集。キャロリーナとやることやったら、義賊について聞いていた。


「義賊ねぇ~……本当にいるのかしらぁ」

「あら? キャロちゃんは信じてないんだ」

「あたしはねぇ。みんなは信じてるみたいだけどぉ……殿下が義賊って言うのなら信じるわよぉ」

「なんで僕? ケンカしたこともないよ~」

「8歳の頃から、ウチの部下をボコボコにしてたじゃなぁ~い。それに女の子に手を上げる男も、半殺しにしてるって聞いてるわよぉ~」

「そういえば、夜の僕は強いことになってたんだった……」


 フィリップ、うっかりミス。夜の町では強さを隠していては遊ぶこともできなかったから、その力を使っていたのをすっかり忘れていたみたいだ。


「殿下が義賊だと言うのならぁ、腑に落ちるんだけどねぇ」

「なんで僕がそんな面倒なことをしなきゃいけないの。そもそも義賊って、お兄様のでっち上げだよ?」

「そうなのぉ?」

「あっ! これ、言ったらヤバイやつだった……」

「やめてよぉ~。そんなの聞かされたら、こっちが怖いじゃなぁ~い」


 うっかりミス2。いや、フィリップはキャロリーナを怖がらせて、自分の強さをごまかしたっぽい。


「ゴメン。でも、言ってしまったモノは仕方ないね。義賊には気を付けて」

「わかってるわよぉ。何も聞かなかったことにするぅ」

「そっちもそうだけど、義賊を語るヤツにもね。タダ酒とかツケとか、払いもしないのに言って来るかも?」

「あぁ~……ありそうねぇ」

「そういうヤツは、容赦なく衛兵に突き出して。貴族の暗殺犯として処理されるから」

「うわ……出来心が命に関わるのねぇ……」

「どんだけ馬鹿が現れるんだろ~? プププ」


 キャロリーナは少しかわいそうに思ったけど、売り上げに関わることなので系列店には徹底されたので、義賊を語る者は何人も衛兵に連れ去られた。

 その偽義賊は、金輪際現れないか現れても怪我が酷かったから、帝都ではすぐに義賊を語る者はいなくなったそうだ。



 フレドリク暗躍の裏では、リネーアの引きこもりを改善しようとしていたフィリップであったが、いまだに部屋から一歩も出れずにいた。

 そのせいでリネーアは毎日のように謝罪を繰り返すようになり、フィリップもこのままでは自殺に走るのではと心配している。


「う~ん……ちょっと、ショック療法を試してみようか?」


 なので、フィリップも最終手段。その手段はボエルはなんとなくわかったのか、不安な顔で質問する。


「そんなことして大丈夫なのか? よけい心の傷を広げてしまうんじゃないか?」

「まぁ、怖いは怖いね。でも、男が怖いモノと刷り込まれているんだから、優しい男とすれば怖くなくなるかも? それにこれから長い人生を送るんだ。パートナーができるかもしれない。そのとき行為を怖がって嫌われるよりは、いま試しておいたほうがプラスになるかもしれないよ」

「言ってることはわかるけどよぉ……」


 2人でリネーアの将来について議論していたら、それを聞いていたリネーアがそろりと手を上げた。


「それで部屋から出られるようになるなら、試してみたいです……」

「震えてるじゃないか。無理するな。やっぱり無理だって」


 ボエルは心配してリネーアの背中をさするが、フィリップは覚悟の目を信じて立ち上がる。


「わかった。寝室においで」

「殿下……」


 そして寝室に向かうとボエルは何か言おうとしたが、リネーアが震えながらついて行くと口を閉ざす。


 こうして心配するボエルとマーヤの目の前で、寝室のドアは閉ざされたのであった……


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