153 デートに出発
フレドリクパーティを夜までストーキングしていたフィリップだったので、翌日はボエルが部屋から一歩も出さない構えで見張っていたけど、目を離した瞬間に書き置きを残して脱走。
ダンジョンに潜り、ダッシュで地下6階までやって来たフィリップは、フレドリクパーティを付け回していた。
「今日はこのフロアでレベル上げっぽいな……」
しかしフレドリクパーティは地下6階を巡回していたので、フィリップは悩んでいる。
「中ボスにも苦戦してたしな~……しばらくはレベル上げで面白いことは無さそうだな。これなら兄貴から報告を聞くだけでも大丈夫そうだ。よし! 娼館行こっと」
それはエロイことを考えて……
そのままエロイ顔で、ボエルの待つ自室に帰るフィリップであった。
翌日からフィリップは仮病を使うが、眠りが浅いのでまだ夜型になれず。昼頃にトイレで起きてしまったので、ボエルにランチを頼んでいた。
「てかさ~……いつもどこに行ってんだ?」
ボエルも同席して一緒に食べていると、話を振って来た。
「ヒミツ~」
「これだけは聞かせろ。女のところか?」
「ハズレ~」
「本当に本当なんだな??」
「ホントホント。貴族の女子なんて、後々面倒そうじゃん」
「確かにそうだけど、オレも貴族の女子だぞ」
「ボエルは僕との結婚なんて考えてないでしょ? そういう後腐れがない人としかやりたくないんだよ」
フィリップもちゃんと考えて相手を選んでいると知ったボエルは安心したのも束の間、違うことが頭によぎった。
「まさかだけど、学校を出て平民に手を出してないよな?」
「手を出したいんだけどね~……どうやったらここから出れるの?」
「そりゃ申請書を出したら……なんでもない」
「え? 出れるの??」
「だからなんでもないって言ってんだろ」
「申請書か~……」
ここまで言ったのだから、フィリップだってどうやったら外出ができるかわかるってモノだ。
「ダメだ! 殿下を外に出したら帰って来なくなる! 忘れてくれ!!」
ボエル、必死。フィリップを町中に解き放つと撒かれたあとの大捜索が待っているから、土下座する勢いでお願いしているな。
「ボエルと一緒ならいい?」
「ダメだ。逃げるだろ?」
「逃げない逃げない。デートするだけ」
「そんなこと言って……デート??」
「うん。ずっと手を繋いでデートするの。それなら逃げられないし、楽しそうじゃな~い?」
フィリップは譲歩したつもりだけど、肝心のことを忘れてた。
「なんでオレが殿下とデートしなくちゃいけないんだよ」
ボエルの女の子好きだ。最近はやることやっているからフィリップもすっかり忘れていたみたいだ。
「じゃあ、デートの下見ってのはどう? 僕もデートはしたことないから、お互いを練習相手にするってのは??」
「う~ん……逃げないならやってみたいけど……」
「絶対に逃げないと約束するから。もし逃げたら、ボエルと結婚するよ」
「なんだその条件……めっちゃオレに利があるな」
「あれ? 僕なんかと結婚したかったの??」
フィリップの問いにボエルは顔を赤くせずに難しい顔で答える。
「第二皇子と結婚したら家のためになるし……なんだかんだで殿下は優しいし顔もかわいいし……女の子にも見えなくない。女装すればアリかも??」
「イヤだよ。僕、かっこよくなりたいの」
「一度だけ女装してくれ! いつもオレは殿下のことを女だと思ってやってるんだ!!」
「そんなこと考えてたの!?」
ボエルにはフィリップが女に見えていたとは初耳だったので、逃げない条件を結婚にしたことを後悔するフィリップであったとさ。
数日後……夜遊びを少し延期したフィリップは、帝都学院の南側にある校門に立っていた。
「なんで男装?」
「殿下こそ、なんだその頭?」
フィリップの格好は、派手さを抑えた貴族風。金髪パーマは目立つのでカツラを被っているけど、夜遊びで使う黒髪は夜の街に生息する人にバレそうなので、予備で作っていた茶髪だ。
ボエルの格好も、派手さを抑えた貴族風だけどパンツルック。綺麗な顔なので、健康的な美男子みたいになっている。さらに腰には剣を差しているから、どう見ても騎士様の休日だ。
ちなみに2人がここで初めて格好に言及しているのは、デートの演出。待ち合わせから始めたのだ。
ここまでの経緯は、フィリップは服だけ用意させて自分で着替え、馬車に乗ってやって来た。片やボエルは、自室で自前の服に着替えて徒歩。
道行く女子に「あの人、カッコイイ~」とか何度も言われたので、ボエルはめちゃくちゃ頬が緩んでいたらしい。
「まぁ……とりあえず行こっか?」
「うん……」
ひとまずフィリップは約束通り手を出してボエルも繋ぐと、門番に申請書を提出して声を掛ける。
「僕たちって、どんな関係に見える?」
「はっ。仲の良い兄弟です」
「だよね~」
「だよな~」
同じ髪の色の青年と少年では、兄弟にしか見えないとフィリップもボエルも思っていたので、デートは出鼻から挫かれたのであったとさ。




