151 アーティファクト
期末試験を無難に乗り切ったフィリップは、夜遊びは小一時間だけで我慢して、終業式までは学校内で暇を潰す。
ちなみにフィリップの順位は、下の上。それでも最下位からかなりアップしたのでフレドリクにめっちゃ褒めてもらえたが、フィリップは「この程度でいいんだ。甘ちゃんだな」とほくそ笑んでいた。
ボエルも感謝されまくっていたが、たいして勉強も教えてないから「これ、自分の手柄なのかな~?」とか思っていたそうだ。
終業式が終わると、生徒の乗った数多くの馬車が走り出す。夏休みは長いので、遠方から来ている生徒も親に顔を見せに帰るみたいだ。
もちろん遠いから帰らないって生徒や、学業優先と考えている近場の生徒、ダンジョンに挑戦したい5年生は寮に残って自主勉強したりダンジョンに向かっている。
フィリップの場合は余裕で登校できる距離に住んでいるので、帰っても残ってもたいして変わらない。せいぜいごはんが豪華になるぐらい。なので、ボエルの意見を聞いている。
「オレは~……どっちかというと、こっちのほうが楽かな?」
「そうなの?」
「ほら? 城のメイドって貴族の女ばっかだろ? あいつら嫉妬深いから、オレが1人でいる時は必ず嫌味をグチグチ言われてたんだよ」
「あぁ~。ヴィクトリアの件もあったもんね~……わかった。こっちに残ろう」
「え? オレなんかのためにいいのか??」
「僕もコソコソ言われてるも~ん。ナカマナカマ」
「殿下がそれでいいなら……」
ボエルの好感度、ちょい上げ。フィリップが悪口を言われるのはエロイ馬鹿皇子だからなので、大抜擢されたボエルとしては仲間と言われるのは引っ掛かるみたいだから、ちょっとしか上がらなかったっぽい。
ひとまずフィリップは寮に残ることにしたので、皇帝に「勉強がんばる」と一筆書いて送ったけど、翌日に呼び出された。
フィリップは手紙の内容が悪かったのかと思ってビクビクしながら寮の玄関を出たら、ちょうど豪華な馬車が発車した。
「さっきの馬車って、皇族の紋章ついてたよね?」
「たぶん……フレドリク殿下かな?」
「だろうね~……あ、そゆことか」
「どゆこと??」
ボエルとお喋りしていたら豪華な馬車がやって来たので、続きは中で。ただ、ボエルには関係ないことだし一緒に見れるかはわからないので、期待を持たせないようにフィリップはまったく関係ない話をしていた。
そうしてやって来たのは謁見の間の控室。そこには大勢の貴族っぽい人がいたけど、フィリップは相手にせずにフレドリクパーティの下へ寄って行って声を掛ける。
「お兄様。おはよう」
「ああ。おはよう」
「てか、何この騒ぎ?」
「父上から聞いてないのか?」
「ぜんぜん。逆に聞くけど、父上って呼び出しの理由、前もって教えてくれるの??」
「ああ。いつも報告はあるが……」
「僕だけなんだね……」
かわいそうなフィリップ。哀れむフレドリク。皇帝の気持ちはわからないけど、長男に対しての期待の表れがここに出ていると2人の頭に浮かんだ。事実は、フィリップの生活態度が悪いから、皇帝はちょっと意地悪してるだけらしい。
フィリップが毎回ビクビクして皇帝に会いに行っていると愚痴っていたので、フレドリクも「見て行くか?」と会いに来た理由を教えてくれた。
それならフィリップも渡りに船と「ボエルも出席させて」とお願いして許可をもらっていたら、そんな必要もなく全員中に通された。
「お兄様も意地悪だね……」
「フフフ。すまない。父上もその顔を見たかったのだろうと思ってな」
「そんなに面白い顔してる~?」
まだフィリップが文句言っているのに、執事がフィリップとボエルを連れ去って各々の配置に立たせる。フィリップは玉座に一番近い位置に立たされたので、ちょっと緊張。
謁見の間には偉そうな人がいっぱい居るし、皇帝が鋭い視線を送っているから下手なことができないみたい。これなら膝の上に乗せてもらったほうが幾分マシとか思っている。
そんなことを考えていたら、フレドリクパーティが扉から前進。中央を堂々と歩いて、皇帝の座る玉座に近付いた。
(おお~。これこれ。これが見たかったから、追試なんてやってられなかったんだよ。さすがは兄貴、凛々しい顔。その他も堂々としてるけど、聖女ちゃんはかわいそ過ぎないか? そりゃ、緊張して手と足揃っちゃうよ~……ここでこける! プププ)
そんな中、フィリップは乙女ゲームのままだとニヤニヤ観察。ルイーゼがローブの裾に足を取られて前にべちゃっとこけたので、周りも数人笑っているから、フィリップもお咎めなし。
フレドリクがルイーゼの手を取って、式典は進む。
「我が息子、フレドリクに、初代様から受け継がれし剣を貸し与える。これを持つからには、必ずやダンジョンを攻略して来い」
「ははっ! このフレドリク、必ずや成し遂げることをここに誓います」
皇帝の手から、フレドリクの手へと譲渡される豪華な剣。これこそ、帝国の象徴とも言える神話の遺物。代々、後継者に受け継がれる最強の剣だ。
今回に限っては、フレドリクがすでに次期皇帝に内定していることと、ダンジョン完全制覇を成し遂げて力を示したいと説得されてこともあり、皇帝も貸し出す許可を与えたのだ。
それほど価値がある重たい剣でも、フレドリクが握ると普通の剣。謁見の間にいる全ての者は「初代様の再来だ」と、薄らと涙を浮かべて拍手を送るのであった……
「あ~あ。ちょっとぐらい握らせてくれてもいいのにな~。お兄様のケチ~」
「あの光景を見て、剣に触れようと思うヤツなんて殿下だけだぞ?」
フィリップ以外……
式典が終わった直後、剣を貸りられなくてブーブー言うフィリップと、それを畏れ多いと呆れるボエルであったとさ。




