140 女性の扱い
楽しいダグマーとの面会は話が尽きないが、そろそろフィリップも寮に戻らなくてはならない。そんな雰囲気をボエルから感じ取ったダグマーは、自分に用事があると言って席を立った。
フィリップも同時に立ち上がろうとしたが、今まで我慢した言葉がふいに出てしまうと締まりが悪いので、その場で別れを告げて残った。
「先輩! 待ってください!!」
応接室を出たダグマーを追うボエル。ダグマーは自分が呼ばれていたとは気付かずに歩いていたら、ボエルに回り込まれた。
「あなたは……殿下を1人にしていいのですか?」
「許可をもらいましたので、大丈夫です」
「はあ……何か私にご用で?」
「はい……」
ダグマーが問うと、ボエルは急にモジモジし出して声も小さくなった。
「あの……先輩は、殿下とそういう仲だったのですか?」
どうやらこの質問がしたくて追いかけて来たっぽい。
「大きな声では言えませんが、その通りです」
「エイラという先輩もですよね? 殿下のメイドになったら、そういうことをしないといけないのでしょうか……」
「いえ……たぶんですが、しなくてもいいと思います。無理矢理はして来ないはずです」
ダグマーは自信なさげにフィリップを語るので、聞いてるボエルも不安そうだ。
「体を許しさえしなければ、強要して来ないはずなので、確固たる意志を持って断ってください」
「それならなんとかなりそうです」
「そうですか……しかし心配ですね」
「何がですか?」
「殿下が我慢できるかどうか……もう1ヶ月以上もしてないから、自制を保てるかどうか……念のため聞きますけど、生徒に手を出していませんね?」
「それはたぶん……そんな噂はありますけど、たぶん……」
今度はボエルが自信なさげなので、ダグマーは鋭い目を送る。
「まさか、目を離したりしてませんよね?」
「うっ……気付いたら消えてることがしばしばで、捜すのに手を焼いています……」
「それは危険ですね……」
「で、でも、授業が始まる頃や食事の時間にはいつの間にか戻って来てますよ!」
「私は聞かなかったことにしますから、殿下の行動、交友関係には目を光らせておくことをお勧めします。もしくは……」
「はい。お手数お掛けしました……」
フィリップが自由行動しているのでは、元メイドのダグマーでも心配なので忠告。主に誰かを孕ませないか……
ボエルもそのことは危惧していたから素直に受け入れる。ダグマーが言い掛けたことを理解して、最悪の場合は自分の身を売る覚悟みたいだ。
「あ、最後にひとつだけ!」
そしてもうひとつアドバイスをしてもらったら、2人はお辞儀をして別れたのであった。
ボエルは走って応接室に戻ると、表情の暗いフィリップと共に馬車で寮に戻る。この間フィリップは一言も喋らないので、ボエルもなかなか話を切り出せないでいた。
そうして寮の自室に入り、夕食を済ませてお風呂の時間が迫ると、フィリップがセクハラ発言をしたのでボエルは口を挟む。
「体調崩した時、裸で温めるっての、嘘ついただろ?」
「へ??」
「ダグマー先輩から聞いたぞ!」
「いや、ダグマーはやってくれたよ??」
「それは! そ、そんな関係だからだろ……」
「プッ……初心だね~。ゴメンゴメン。嘘ついた。その時が来るの、楽しみにしてたのにな~」
フィリップが嘘と認めたけど謝罪もしているので、ボエルも怒りをぶつけられないって顔をしてる。
「てか、こんなオレみたいな女でも、したいと思うのか?」
「思うよ~。お風呂ではいつも立ってるでしょ?」
「う、うん……見せびらかして来るから知ってる」
「それだけボエルが魅力的なんだよ。ま、男にこんなこと言われても嬉しくないか」
「ま、まぁ……褒められてるから悪い気はしないけどな」
ボエルの顔がちょっと赤くなっているのでフィリップは攻めてみる。
「ボエルって、女性とそんなことしたことあるの?」
「ないけど……自分が気持ちいいと思うことをやったらいいだけだろ? ……なに言ってんだオレ!?」
「アハハ。女だもんね。そう思うだろうね」
「ち、違うのか?」
「間違いじゃないけど、それだと同じ趣向の人しか気に入ってくれないんじゃないかな~?」
「あ……そういうことか。感じ方は人それぞれってことだな!」
ボエルが正解を言い当てたので、フィリップは指をパチンと鳴らした。
「そそ。上手い下手ってのは、相手に合わせられるかどうかだよ。ましてやボエルの場合は、同性の人に気に入ってもらわないといけない。初めてする時に失敗したら、やっぱり男のほうが好き~って離れちゃうかもね」
「な、なんてことだ……付き合ってそこまで行けば、安泰だと思っていたのに……ど、どうしたらいい?」
「そりゃ~……」
フィリップはニヤリと笑う。
「男を知っておくのもいいんじゃない? 僕なんてどう??」
「結局お前がやりたいだけか~~~い!!」
残念無念。フィリップはボエルを落とそうとしたけど、失敗してしまうのであった。
「たぶん僕、めちゃくちゃ上手いと思うんだけどな~……それを見て決めるってのはどう?」
「いや、経験人数2人だけだろ? それでどうして上手いと言えんだよ??」
「2人とも上手いって言ってくれたも~ん。1人目の人は、手取り足取り教えてくれたも~ん。5年の経験があるも~ん」
「その歳で5年!?」
でも、まだ諦めないフィリップであったとさ。




