第92話 フェン vs セラフィリア
決闘の日はあっという間に訪れた。
今回の決闘の場所は、実習場に作られた特設闘技場。
黄金の装飾が散りばめられた、煌びやかなステージ。
前回の中央広場の闘技場よりも遥かに大きく、豪華な装いだった。
朝日が昇る頃から、会場全体が異様な熱気に包まれている。
ほぼこの学校の生徒全員が、フェンとセラフィリアの決闘を見に集まっていた。
当然だろう。
これは学校最高レベルの決闘————それすなわち、この世界で最もレベルの高い魔法戦だと言える。
学園の歴史に刻まれるであろうこの瞬間を絶対に見逃すまいと、生徒達は興奮に満ちていた。
「さあ、ついにこの日がやってきました! ニルヴァータ対アストラ! 一体どんな戦いを見せてくれるのでしょうか!」
どういうわけか実況と解説までついており、場はまさにお祭り騒ぎだった。
実況を担当する生徒の声が響き渡り、会場が響めくほどの歓声が上がる。
皆、決闘が始まる瞬間を今か今かと待ち望んでいた。
「それでは、決闘者の紹介に移りましょう!」
実況が熱を帯びた声で進行する。
指し示された手の先————入場口に、照明が向けられた。
「たった数週間でCクラスから第三位まで上り詰めた男、幻想の新星————フェン・ニルヴァータ!」
フェンは気まずそうな表情を浮かべながら、壇上に上がる。
こんな持て囃されて登場させられるなんて聞いていない。
観客席から声援やフェンの二つ名を叫ぶ声が聞こえるが、どう反応していいかも分からない。
心構えはしてきたつもりだったが、こういうのはいつまで経っても慣れない。
こんな精神状態で、決闘なんて本当にできるのか……?
一抹の不安を抱えながら、壇上に登ったフェンだったが、その不安は一瞬にして消え去ることになる。
「————対するは、伝説の四大魔女の一人、セラフィリア・アストラ!」
一通りの歓声と拍手が止んだ後、実況は反対方向を指し示した。
反対側の照明に照らされながら、その魔女はゆっくりと姿を現す。
その瞬間————フェンの体は強張った。
爆発するような歓声が気にならないくらい、フェンはその威圧感に気圧された。
真紅の長髪、宝石のような碧色の瞳、彼女の全てに意識を集中させられ、気を引き締めさせられる。
澱みないオーラ、肌に突き刺さるかのような魔力の奔流。
まだ戦っていないにも関わらず、魔力の格の違いを見せつけられていた。
これが、生きる伝説————セラフィリア・アストラ。
フェンは生唾を飲み込み、拳を握りしめる。
覚悟を決めるしかなかった。
目の前の相手は、この学校最強————いや、世界最強かもしれない存在だ。
こんな相手と決闘だなんて、自分でもとんでもないことをやっていると自覚していた。
だが————『ロード・オブ・ウィザード』を目指すということは、こういうことなのだ。
この強大な存在を打ち倒して、自分自身が世界最強の魔法使いにならなければならないのだ。
フェンは決意を込めてつぶやく。
「カナを救うため————僕はこの伝説を越える……!」
額に浮かぶ汗を拭い、フェンは杖を構えた。
観客たちがざわめき、闘技場の空気が張り詰める中、審判の教師が壇上に上がる。
「魔法無制限、どちらかが戦闘不能になれば勝敗を決する」
フェン、そしてセラフィリアの両名が頷き、決闘が正式に承認される。
審判はそれを確認した後————右手を天高く掲げた。
「それでは————始め!」
審判の号令により、戦いの火蓋が切って落とされた直後————
『ファントム・フィールド』
フェンはいきなり切り札を放った。
思い切った行動に、実況席から興奮の声が上がる。
「出たあ! ニルヴァータの必殺技『ファントム・フィールド』!」
高等幻惑魔法————『ファントム・フィールド』
前回のサルヴァドール戦でも見せた魔法だが、その時とは魔法の規模が違っていた。
魔法によって出現した固有結界はフェンとセラフィリアの中間地点に出現し、壇上のほとんどを飲み込むかのように広範囲に広がった。
十分に間合いを取っていたセラフィリアすらも、この結界の範囲に巻き込まれる。
「はあ……はあ……うまくいったか」
ぶっつけ本番の試みだったが、成功した。
大きく魔力を消費した反動で息が上がっているが、まだまだ問題ない。
この数日間、魔法煙草の量を増やしたのが確実に効いている。
僕の魔法は確実に、成長している。
サルヴァトールに圧勝したあの日よりも、今の自分はさらに強くなっている。
フェンは自信に満ち溢れていた。
「さあ! これに対しアストラは、どう動くのでしょうか!?」
実況の声が熱を帯びていく。
観客の生徒達のボルテージも、徐々に上がっていき、会場が揺れるほどの歓声が湧き上がっていた。
「————相手がどう動くかだって? そんなこと、させるわけがないだろう……!」
フェンは、セラフィリアが行動する前に、一気に攻勢に出る。
『シャドウズ・ファントム』
魔法名を詠唱した瞬間、セラフィリアが少し驚いたような表情をした気がした。
更なる高等幻惑魔法であり、影の分身を作り出す魔法。
『ファントム・フィールド』の特性を最大限に活かした、フェンの正真正銘の奥の手だった。
影の分身達は、セラフィリアを囲むように展開する。
そして、一斉に攻撃魔法を発動した。
「これはあああ! ニルヴァータによる魔法の波状攻撃だああ!」
雨のように降り注ぐフェンの魔法が、セラフィリアに降り注ぐ。
一斉に魔法が放たれる中、セラフィリアは魔法防御を駆使してこれを防いでいた。
観客達は興奮の渦に巻き込まれ、とんでもない魔法のラッシュに歓声を上げる。
今回の作戦は————相手に何かをされる前に押し切るというもの。
正直に言って、伝説の魔女の最強の魔法を、正面から受けとめられる自信はない。
だから、ひたすら攻め続ける。
隙を与えずにこのまま倒し切ってやる。
フェンは、大技がどちらも成功したことで、確かな手応えを感じていた。
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