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第7話:閃き

内容を大幅に書き換えました。


1話から読み直してくださると幸いです。


 実験開始から今日で半年が経った。


 “改造”にも随分と慣れ、今では一人の人間を見た目完全な化け物にする事も可能なレベルになった。


 普通に考え、余りにも非人道的な行いだが、俺は自他共に認める異常者だ。どうでもいい人間がどうなろうと知った事ではない。


 そして、当初、余りにもショッキングな光景に気絶や嘔吐を繰り返していたカエデも、今では普通に改造に加わっている。


 もしかして壊れたのか?と思ったが、単に慣れただけらしいと本人は言っていた。しかし、「改造って思ったより楽しいわね」と気味の悪い笑みを浮かべていたので、もしかしたら狂ったのかもしれない。


 サクラは現在進行形で、もう使えなくなった検体を、闇魔法で処分している。


 本人曰く、「闇魔法の扱いの練習になりますから一石二鳥です!」と元気よく言っていたが、それならまあそれでいい。


 俺は何も言わない。


 そして、俺の親友でもあるクリュエルは、今は外に出ている。


 え?いつ俺がクリュエルと親友になったのかだって?そんなもん、半年も一緒の部屋で生活してたらそりゃ友達にもなるもんだろ。


 あと、何故クリュエルが外に出ているかと言うと――――。


「帰ったぞ」


「お、クリュエル。今日はどうだった?」


「今日は十五人だ」


 そう言って、クリュエルが己の身体をずらすと、そこには気絶して、縛られた男共がいた。


「そうか。ご苦労だったな」


 そう。俺はクリュエルに、実験体を捕まえてくる事を命じている。


 もちろん俺やサクラ、カエデも行っている。


 クリュエル一人にやらせるわけにはいかないからな。


 まあこんな事をさせている時点で俺はクソ野郎なんだが。


 ちなみに、この半年でクリュエルの戦闘能力はかなりのレベルにまで上がっている。俺の見込んだ通り、クリュエルには天才的な戦闘の才能があった。


「カイス」


 クリュエルが俺を呼ぶ。


「ん?なんだ?」


「ジジイがたまには顔を出せと言っていたぞ」


「ああー、今度会ったら了解と言っておいてくれ」


 そう告げると、クリュエルは、無言でその場を立ち去り、サクラと共に壊れて使い物にならなくなった検体の処分に入った。



 ジジイというのは、俺達(俺、クリュエル)に戦い方を教えてくれている老いぼれの事だ。


 出会ったのは、クリュエルとカエデを仲間にした三日後、俺とクリュエルが二人で歩いていたらいきなり声を掛けられ、そして弟子にさせられた。


 最初はやる気がなかったが、ジジイの使う、〈ユルティム流魔刀術〉や、〈特殊殺傷武術〉はかなり実践に使える事もあり、俺とクリュエルはジジイからそれを教わり、そして今に至る。


 修行の結果分かったことだが、クリュエルは〈特殊殺傷武術〉に、俺は〈ユルティム流魔刀術〉に対して、ジジイでも驚愕する程の才能があるらしい。


 この半年で、ジジイに、「既に一等騎士と同等の戦闘力がある」と言われたくらいだ。


 まあ、今俺は“改造”に忙しいから修行は自主練だけに留めているが、クリュエルの方は暇さえあれば行っているらしい。


 もちろん俺達がこんな狂った事をしているなんてジジイは知らない。


 バレたら破門だろう。


 正直あの老いぼれには、技の全てを伝授してもらわなければならないので、破門になるわけにはいかないのだ。


「にしても、そろそろ実験も煮詰まってきたんだよなあ・・・」


 俺は一人、改造で作ったパイプ椅子に座り、ギコギコと音を鳴らす。


 その音と混じって、俺の改造により精神が破壊され、「あー、うー」などという声にもならない声しかだせない検体共を眺めながら、俺はどうしようかと思案する。


 未だ適当な奴隷市場に行って、適当な混乱を引き起こし、そこにいる男共を拉致ってくるという事を続けているが、もうあまりする事が無い。


 あらかた改造を人間に使う事には慣れたし、これは最終的に俺やサクラ達を改造するための練習という名目が強い。


 しかも、いまの成果では、それを行うわけにはいかないのだ。


 適当に身体を弄っても、そこまでの戦闘力アップは見込めないというのが俺の本音だ。


 出来る事なら亜人を捕まえれば一番いいんだが。


 ちなみに亜人というのは、知力を持った人型生物の総称で、様々は種類が存在している。一般的なものだと獣人や翼人。レアなものでいうと、吸血鬼や龍人といったところか。


 まあ、人と亜人は仲がかなり悪いから見つけるだけでも一苦労なんだよな。あいつら一目に付かない山奥とかでひっそりと生活してるから。


 じゃあどうするか・・・。


 しかし、いくら考えてもまともな、というか、実用化出来る案が浮かばない。


「はあ、仕方ない。ジジイの所に行って訓練でもしてくるか」


 俺はそう呟き、椅子から降り、歩き出した。



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@



 現在、俺はジジイと訓練している。


 ジジイはしきりに修行と言いたがるが、ダサいので俺は訓練と呼んでいる。


 今俺がやっているのは、〈特殊殺傷武術〉だ。俺はクリュエルに比べて、コレが余り得意ではない。しかし、苦手は作ると、後から厄介な事になるので、キチンと訓練しているというわけだ。


 俺はジジイに拳打や脚打を連続で浴びせるが、ジジイはそれを全て捌く。


 っち、分かってはいるが流石の腕前だな。だが―――。


 俺は顔面目掛けて回し蹴りを放つ。しかし当然それをジジイの手によって防がれる。しかし、今回はそれが狙いだ。


 俺はその蹴りを防がれた腕を支えに、地に着いている足を使って、飛び上がる。そして、ジジイの背後に回り込む。


 が―――。


「甘いわい」


 ジジイはそれを見越していたのか、俺の脚を掴み、そのまま地面に叩き伏せた。


「グフゥっ!」


 かなりの衝撃に肺から空気が吐きだされる。


 ヤバい。ゲロ吐きそう。


「ふむ。発想自体は悪くないんじゃがのう。如何せん速さが足りんのう」


 と小馬鹿にしたように言ってくるジジイはかなりウザい。


 つか死ねよ。


「うるせえよカスジジイ。俺はまだ八歳のガキだぞ。そんなガキ相手に勝ったからって威張んな」


「アホか。お主とクリュエルをガキ扱いしとったら儂が殺されかねん。お主ら修行の時は儂を殺しにかかりおるんじゃからのう」


 当たり前だろ。


 お前みたいなウザいジジイは即刻ぶっ殺すに限る。つかいずれ強くなったら殺すつもりだしな。


「ところでジジイ。俺に魔具か魔装具はくれねえのか?」


 魔具・魔装具とは、魔法を発動するのに必要な媒体の事だ。杖や、指輪等、物理的な殺傷能力を持たないものを魔具。剣や槍等、それだけで武器となるものを魔装具と呼ぶ。


 そして、魔導師は、魔具や魔装具に魔導刻印を刻み、それに魔力を込め、魔法を発動させる。


 その為、一つの魔具に入れれる魔導刻印の数は決まっている。


「ふん。お主のようなヒヨッコにはまだ魔具は早いわい」


 ジジイは俺の提案を素っ気なく切り捨てた。


 まあ魔具に関しては俺も早いと思っていたから別段腹は立たない。


 ・・・しかし魔具ねえ。


 ぶっちゃけ魔法を使うのに魔具が必要ってどうなの?実際魔具って所有者に最適化されたものだから、一つ一つがオーダーメイドになる。


 そして、その魔具がなくなれば、魔法は発動できなくなる。


 現在のサクラのように、ただ重力を拳に纏わせたり、他者を重力で包んで浮かせるなど、魔具なしで簡単な事は出来るだけの才能を持っているなら話しは別だが、そもそも闇魔法は特殊だ。


 固定かされた形の魔法が存在しないので、ぶっちゃけ型に当てはめる意味はない。


 じゃあ、何か都合の良い武器はないものか・・・。


 そもそも“魔導刻印を刻まれたものを魔具・魔装具と呼称する”というのはおおざっぱすぎだろう。


 そんなもんそこら辺の木の枝に魔導刻印を刻めばそれだけで魔具になっ・・・ち、ま・・・う。


 ―――そうか!それだ!


 やはり俺は天才だな!


 じゃあ後は肝心要のアレだが、アレは確か屋敷の家宝が使える筈だ。


 俺はさっそく思いついた考えを確かめようと、起き上がった。


「ジジイ!今日の訓練はここまでだ!またいつか来るよ!」


「なっ!おい!ちょっと待つのじゃ!」


 ジジイが引き留めるも、そんなものは気にしていられない。


 俺は意気揚々と屋敷に向かって駆け出した。


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