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第5話:拉致



 俺は今日、早速昨日幼女から貰ったギフトを使ってみる事にした。


「確か能力は“改造”だったな・・・」


 あの幼女の説明では、「あらゆるものを改造出来る能力」だった筈。


 “改造”・・・。


 ふむ。まずはそこら辺にある椅子でも改造するか。


 そう思った俺は、自室にある椅子を改造する事にした。


 使い方は頭の中に入っているので問題はない。


「さて、一体どんな風に改造するか・・・」


 まずは車椅子のような形に改造するか。


 でも足りない部品とかはどうするんだ?とか思っていたら、何か普通に出来た。部品とか一切いらなかった。


 ・・・流石神様印のギフトだな。


 よし。この調子でどんどん改造していこう。


 そして俺は1ヶ月、暇なときがあれば、色んな物を手当たり次第に改造していったのであった。



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@



 改造を初めて1ヶ月。


 俺はこの能力を大体把握出来てきた。


 まず、この能力は、概念内でしか改造出来ないという事だ。


 分かりやすく説明するならば、最初に俺が改造した椅子。椅子を改造する時は、椅子という概念から飛び出たら改造は不可能だと言う事だ。


 つまり椅子を戦車に改造する事は出来ない。


 もう一つは、この改造には、材料が必要ないという事。何かを何かに改造する時、必要な材料を集める必要がない。


 最後の一つは、物質を変化させる事が出来るという事だ。


 簡単に言えば、石があったとする。その石をこの能力を使えば、黄金に“改造”出来るというわけだ。


 木の椅子を改造し、黄金の椅子にする事も出来る。


 これがこの1ヶ月で分かったこの能力の全てだ。


 そして今日、俺は一段階能力の訓練を引き上げる。


「サクラ、準備はいいか?」


 俺は、後ろでジッと待機しているサクラに尋ねる。


「はい。問題ありません」


 一ヶ月で俺に対しても慣れたのか、サクラはの口調は随分と穏やかになっている。


「そうか。目標は三十人だ。行くぞ」


 そう言って、俺とサクラは同時に駆け出す。


 現在俺とサクラが来ているのは、一ヶ月前に来た奴隷市場だ。俺は今日ここで、三十人の人間を拉致ってくる。


 対象は、犯罪を犯して奴隷になった者や、奴隷商人やその取り巻きだ。


 あと、仲間にする奴隷も何人か欲しい。まあ、これに関しては出来れば、だがな。


「さて、まずは混乱を引き起こしますか」


 俺は、腰にぶら下げていた袋を外し、その口を締める紐を持ってブンブンと振り回す。そして、それを空中に放り投げる。


 横を見ると、サクラも同じ事をやっている。


 そして、空高く飛んだ袋から、大量の石が出てくる。


「よし。落ちろ」


 その言葉を合図に、空中に撒き散らされた石が、音速を遥かに超える速度で落下し始めた。



 ―――ドドドドドドドドドドドドドッ!!!



 凄まじい音を立てて落ちる石の衝撃で、辺りには土煙が立ち上り、衝撃が大地を揺らし、石に当たった人間はその命を散らす。


 これは、俺のもう一つのギフト、“銃神”の能力だ。


 このギフトは、俺が触ったモノを最高で音速の三十倍の速度で射出させる能力だ。一度触れば、一時間以内なら任意のタイミング、任意の方向に射出出来るという優れものだ。


 そしてこのギフト最大の長所は、自信の魔法にも使用出来る所にある。


 つまり、俺は魔法を音速の三十倍で撃ち出す事が出来るという事になる。


 いやー。改めて良いギフト貰ったわ。


 と、ボロボロになっている市場を見ながら、俺はしみじみと頷く。


「さてサクラ、ここからが重要だ。とりあえず高そうな服を着ている男を片っ端から気絶させ、お前の魔法で市場の外れに止めてある馬車に運べ。後石の攻撃は適度に続けろ」


「お任せください!」


 そう言って、サクラは自身の周りに黒い魔力を纏わせる。


 そしていきなり、、近くにいた一人の男の腹を殴りつけた。


「ごぶぅ!」


 鈍い声を漏らしその場で気絶する男。


「では運びますね」


 そう言うと、男の身体がフワフワと浮き始めた。


 相変わらず特殊な魔法だな。


 俺はサクラの魔法を見てそう思った。


 サクラが使用している魔法は、失われた属性だと言われているものの一つである、闇属性だ。


 闇属性魔法は、言うなれば重力魔法だ。つまり重力を自在に操る。


 属性魔法は基本的に、その属性と同じものの近くにあった方が、その威力を増すし、魔力消費を抑えられる。


 その考え方で行くと、六属性の中で最も強いのは風という事になるが、風は目に見えないのでコントロールが難しく、風が最強だと言えるレベルまでに極められる魔導師は基本的に存在しない。


 燃費だけは最強だが。


 そして、重力魔法だが、重力はこの世界に等しく存在している。風魔法みたいに、空気が薄いやら何やらの影響を受ける事はない。


 まあ、そう考えたら闇属性が強いのも納得は出来るな。


「と、今はやるべきことだけを考えるか」


 俺は近くにいた男の首筋に手刀を叩き込む。


 倒れた男を縛り、そこら辺に放置する。この騒ぎだ、今更倒れている奴を気に掛ける奴などいやしないだろう。


 そして俺は同じように近くにいた奴らを気絶させていく。


「マスター!十人程運び終わりました!」


 途中サクラが俺に合流し、現状の報告を行う。


 ふむ。流石だな。もう十人も運び終えたのか。


「よし。ではここに二十人程気絶させている。これを馬車に運んでくれ。俺はあと一人だけ使えそうな奴隷を探してくる」


「わかりました!」


 元気よく返事したサクラは、気絶した人間(全員男)を運んでいく。


「さて、俺も早い所目当ての奴でも見つけるか」


 そう呟き、市場を走る。


 俺が探しているのは、サクラと同様に、俺の仲間になる奴だ。


 出来れば男と女、二人欲しい。最低条件として、若くて、俺に従順である事。まあこれさえ満たしていれば、どんな奴だろうと問題はない。


 最悪人間でなくてもな。


 暫く走り回り探していたが、目当ての奴は一人のいなかった。


「いても良さそうなんだけどな・・・」


 別に俺は優秀な奴を探しているわけじゃない。若くて従順な奴を探しているだけだ。しかしそれが中々見つからない。


「・・・仕方ない。そろそろ諦めるか」


 下手に長居しても、問題がある。


 これだけの騒ぎだ。そろそろ王宮から兵士や騎士が送られてくるかもしれない。その前に立ち去らんねば厄介な事になる。


 と、思った瞬間、路地裏に二つの気配を感じた。


 もしかしてと思った俺は、その路地裏に行くと、そこには二人の子供がいた。一人は俺と同い年くらいの黒髪の少年で、もう一人は、俺より二つ程上の金髪の少女だ。


 ちなみに二人とも「奴隷の首輪」をしている。


「よお、こんなところで何してんだ?」


 俺はそう尋ねる。


 しかし二人は一切の反応を示さない。


 俺は二人に近づき、二人の様子を見ると、二人とも身体中がボロボロだ。これは恐らく俺が落とした石のせいでなったわけじゃないな。


 これはだれかに長期間暴力を振るわれた跡だろう。


「なあ、今のこの惨劇。これを引き起こしたのは俺だ」


「「――――ッッ!!??」」


 俺の言葉に二人は驚き、眼を見開く。


「・・・あなたが?」


 金髪に少女が俺にそう尋ねる。


「そうだ。俺がやった」


「・・・・そう、なんだ。・・・ありがとう」


「何故俺に礼を言う?」


「あなたは私達をあの地獄から解放してくれたわ。それに私達にヒドイ事をしていた人達も殺してくれた。これを感謝しなくて一体なにを感謝するというの?」


 興奮しているのか饒舌に喋る少女。


 ふむ、中々良い性格をしているみたいだな。


「成る程な。じゃあ、俺に仕えてみるか?」


「え?」


「どうせ行く当てなんてないんだろう?それに俺もお前らを助けてハイさようならでは余りにも無責任だろ?どうだ?悪くない話しだとは思うが」


 適当な言葉を並べて俺は二人を勧誘する。


 俺はかなり適当に棒読みかよというくらいワザとらしく話しているので、俺の言っている事が嘘だとはこの二人も気付いている筈だ。


 それを分かってなお付いてくるかくるか。


「・・・分かったわ。あなたの所が少しでもマシな所である事を願うわね」


「そうか。なら決まりだな。で?お前はどうする?」


 俺は一人の少年に尋ねた。


 髪が黒なので、この二人は兄弟という訳ではないだろう。おそらく同じ場所に閉じ込められていた者同士か?


 そう思いながら俺は、少年の瞳を見た。


「―――――っ」


 その瞳は、底なしの沼の様に光の無い漆黒だった。


 何もかもがどうでもいいと思えるようなその瞳。そして、たしかに内包されている狂気。


 ・・・素晴らしい。


 これは、最高の拾い物だ!


「おい。お前も来い。これは命令だ。いいな?」


 こんな逸材を手放すわけにはいかない。


 少年は俺の言葉に、コクリと頷いた。



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@



 二人を連れて、俺はサクラが待っている馬車にまで戻った。


 サクラは俺を見つけると、嬉しそうに俺に駆け寄ってきた。


「おかえりなさいマスター!そこのお二人はどなたです?」


 サクラが後ろの二人を見て疑問の声をだす。


「ああ、この二人は俺達の新しい仲間だ」


 サクラはその言葉だけで納得し、二人に挨拶をしていた。


 あと、俺は二人の“奴隷の首輪”を、サクラにしたように外した。その時、二人はかなり驚いていたので、“剣帝”の説明を簡単にだがしておいた。


 そして俺は、二人を連れて急いで屋敷へ帰った。


 馬車の荷台に、縛り上げた男共三十人を連れて。


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