第11話:俺らしさ
今回はかなり短いです。
パーティーから帰ってきた俺は、次の日、サクラ、クリュエル、カエデ、そして2ヶ月前に新しく仲間にしたモミジとスイレンを交えて、作戦会議的なモノをお決まりの地下室で開いていた。
「・・・革命って・・・」
昨日あった事を俺なりに要約して説明したら、真っ先に反応したのは、この中での最年長であるカエデ。
綺麗な金髪が似合うクールな美少女。
この中では一番の常識人。というかまともなのがこいつしかいない。俺も含めて。
「やっぱりマスターは発想が違いますねっ!」
最近無駄に元気になってきているピンク髪の異常者、サクラ。
何故そんなにテンションが高い?
アレか?人を沢山殺せるからか?
「僕はご主人様に従うよ?」
赤い髪のショートヘアーで、一人称が僕の僕っ娘であるモミジが可愛らしくそう言ってきた。
ご主人様と呼ばれるのも悪くはないと思う今日この頃である。
「わたくしもご主人様に従いますわ」
青髪ロングのクセっ毛で、お嬢様では無いくせに何故かお嬢様口調に拘る、この中では随一のバカであるスイレンも、無駄に優雅にそう言ってくれた。
ちなみにこいつ、自分では気づいてないが、人を殺す時に、心底楽しそうに微笑んでいるマジキチである。
「僕はカイスに従おう」
クールに端的にそれだけ言う黒髪ハンサムのクリュエル。
一応全員は賛成のようだ。
カエデが微妙なような気がしないでもないが、あいつは最終的に俺に従うので、っていうかこいつ等最終的に俺の決定には絶対に逆らわないので、この会議はぶっちゃけ意味はない。
だが、こいつ等は俺の大切な仲間であり家族である。
なればこそ家族会議は必須だろう。
「この国を変えると一口に言っても何をするのかしら?」
カエデが俺に尋ねる。
「今の所考えているのは、堕落した貴族の粛清。そして完全な王権主義にする事」
この国の政治体制は、貴族と王による議会政治。
王自体に最終的な決定権はあると言っても、貴族の力は決して無視できない。そもそも政治に関われるのは、軍部に携わっていない侯爵以上の貴族達だけ。
その9割が富と権力に妄執しているクソ共。
更には王もそいつらと同類だとキアラが言っていた。
とは言っても九歳児の主観だ。簡単に鵜呑みにするわけにもいかんだろうが。
「まあ、カイスの考えは分かったわ。それで?私達は何をすればいいのかしら?」
カエデがそう言ってきた。
「お前らは今の所何もしなくていい。というか当分なにもする事がない」
「どういうことかしら?」
「そのままの意味だ。そもそも俺らみたいなガキが革命なんて起こせるわけがない。ガキのおふざけと一蹴されるのがオチだ。なら革命を行うのは俺達がデカくなった時しかない。・・・そうだな、俺が十八になるまでか?」
「随分と長く時間を取るわね?」
確かに、俺もカエデの意見に同意する。
「だがこれぐらいの時間を掛けなくてはいけないのもまた事実だ。何故なら粛清する奴らの中には“騎士王”や“聖騎士”達も入っているからな」
そう言った瞬間、全員の雰囲気が一変する。
この国の“聖騎士”や、“騎士王”は並外れた戦闘能力ではない。今の俺達が挑んでも確実にぶち殺される。
「だから時間を掛ける必要がある。あらゆる敵を粉砕できるだけの力を得るまではな」
ここまで言えば、流石に俺が何を言いたいか分かるだろう。
・・・いや、唯一スイレンだけが、「どういう事ですの?」という顔をしているが、こいつは例外なのでシカトする。
「お前たちがやる事はただ一つだけ。―――ひたすらに強くなれ。お前らはいずれ革命の切り札になるんだからな」
現段階でもこいつ等の戦闘能力はとんでもない事になっている。
恐らく王国の下級騎士とだってまともに戦える筈だ。まあそれは単に俺がこいつらの身体に限界魔法を刻んだおかげともいえるが。
「強くなるには賛成だけど、まだ人員が足りないんじゃないかしら?」
確かにカエデの言う事ももっともだ。
現在この場にいるのは俺を含め六人。
「サクラ、カエデ、モミジ、スイレンが聖騎士を一人あたり三人ぶっ殺して、クリュエルが聖騎士六人、俺が騎士王と聖騎士五人だと勘定しても全然足りない」
しかしこれ以上は人員を増やし難い。というか、仲間に入れるだけの才能を秘めているガキが見つからない。
少なくてもあと一人くらいは欲し――――。
「ちょっと待ちなさい」
「なんだカエデ?」
「不思議そうな顔でこちらを向かないでくれるかしら。何故私達・・・いえ、私が聖騎士を三人も相手にしなければいけないのかしら?」
「は?どこに問題がある?」
「大有りよ!いくらなんでも聖騎士三人なんて相手取れる訳ないでしょう!?一瞬で殺されるわ!」
「だからその為に長い準備期間を設けてあるんだろうが」
「そ、それは・・・・・・そうでしょうけど・・・」
こいつの言いたい事は分かる。
例え十年近い年月修行したとしても、聖騎士達や、騎士王には勝てないと思っているのだろう。
当然ながら殺し合いの世界に100%勝てる時など存在しない。いや、そもそも、物事に100%など有り得ない。
だからこその準備期間・・・もとい、修行期間だ。
それでも勝てるとは、カエデの奴は思っていないみたいだが。
「カエデ。確かに死ぬ気で修行しても負ける時は負けるし、死ぬ時は死ぬ。だけどもう決めた事だ。悪いがお前に抜けられるわけに――――」
「―――分かってるわ。そんな念を押すように言わなくても大丈夫よ」
俺の言葉を遮り、カエデはしかっりとその瞳に光を灯し、俺を見据えた。不安と覚悟と恐怖が混じった実に人間らしい瞳。
しかしその身に内包するチカラは既に化け物と呼ぶに相応しいものとなっている。
そんなカエデの瞳を見つめながら、俺は一言、「そうか」とだけ言った。もう少し気の効いた言葉が言えればいいのだろうが、そういうのはガラじゃないし、そんな事は前世にいた頃からも一度も言った事はない。
やった事が無い事を、人は一発で出来るようには出来ていないのだ。と、言い訳をしてみる。
その事に辟易しながらも、俺のような異常者が、こんな感情を抱いている事が、少しだけ嬉しかった。
っと、これも俺のキャラじゃない。
「じゃあお前ら、各自それぞれ修行を行うように。死ぬ気でやれよ?死にたくなければな」
俺はそれだけ言って、その場からすぐさま立ち去った。
少し変な考えをしたせいで、俺が俺らしくなくなっているように感じる。俺らしさってなんだ?なんていう哲学的な事を考える気はない。
「はあ・・・。ダル・・・」
俺はそれだけ言って、屋敷にある俺の部屋に入った。




