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勝ち気令嬢、年下の第二王子を育て上げます  作者: 松原水仙


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20.シャーロットでいっぱいの頭

モリーナとマローの婚約パーティーに招待され、オーウェンとともに彼女の屋敷へとやって来た。総勢百名程の貴族が集まっている。


「ベアトリス王太子妃!オーウェン殿下!ありがとうございます」


 会場での挨拶を終えたモリーナは婚約者を連れて、すぐにベアトリスの元へとやってきた。しっかり者のモリーナと穏やかそうなマローは相性が良さそうだ。


「モリーナ様、マロー様!この度はご婚約おめでとうございます」

「おめでとうございます。とてもお似合いのお二人ですね」


 二人揃って寿ぐと、照れたようにモリーナがマローと目を合わせた。一言、二言交わしている間に他の貴族が主役の二人の周りに集まってくる。


「楽しんでいってくださいね」


 モリーナたちは忙しそうに会場中を歩き回り、今は教会の責任者フランクリンと話をしている。


 あの狸爺も来ていたのね。


 相変わらず胡散臭い笑みを顔に貼り付けたフランクリンを目に入れる。それを遮るように透き通った声が響いた。


「ベアトリス王太子妃!オーウェン殿下!」

「シャーロット様!ごきげんよう」


 口角をいっぱいに上げて瞳を細めるシャーロットは、相変わらず愛嬌がある。


「モリーナに先を越されてしまいました」


 そうは言いつつ幸せそうな友人を見て嬉しそうだ。シャーロットはベアトリスたちに向き直り、空いている席を手のひらで示した。


「お恥ずかしい限りですが兄が席を外しており、一人では心細くて…。良ければあちらでご一緒していただけませんか?」

「ええ。いいわよ」

「オーウェン殿下もよろしいでしょうか?」

「…少しなら」


 主催ではないパーティーは気楽でいい。ベアトリスはオーウェンの腕を取り、一緒に席に着いた。

 すぐにドリンクを持った使用人が現れ、シャンパンを置いてそっと姿を消す。


「モリーナの幸せを祈って。乾杯」


 ベアトリスの合図で、全員がシャンパンを口に含んだ。


「すっきりと爽やかで、繊細なお味ね。幾らでも飲めるわ」


 ベアトリスは、シャンパンの小さな泡が上へと上がっていくのを目で追う。金色に輝くそれの美しいこと。


「お二人の白で統一された衣装がとっても素敵ですね!」

「ありがとう。モリーナは青が好きだから、きっと青いドレスだろうなって、青が引き立つ白にしたの」

「スノー公爵家の色だし、ちょうど良かったね」


 ふふ、と微笑み合う二人にシャーロットの瞳が切なげに細められるも、すぐにいつもの明るい表情に戻る。


「羨ましいです。私もオーウェン殿下のような方を探して、ベアトリス様のようになりたいな!」

「私のようになる必要はないわ。シャーロット様はシャーロット様でいいの。今日のピンクのドレスもとても似合っているわ」

「ありがとうございます!父が用意してくれたんです」

「まあ素敵なお父様ね」

「ええ。とても優しくて大好きなんです。あっ」


 父の話に身を乗り出したシャーロットの手がシャンパンのグラスに当たり、テーブルの上に中身が零れた。その先にいたオーウェンのスーツにかかり、染みを作る。


「使用人を呼んでくるわ」

「いいよ、ベアトリス。このくらい大丈夫」


 オーウェンが言い終わる前にベアトリスは歩き出していた。仕方なく座って待つ。


「ごめんなさいっ!私ったら。染みになったら大変!」

「いいから」


 すぐ隣に立ったシャーロットを手で制した。その手を突然シャーロットが両手で包み込む。


「おい、気安く…!」


 ドクン、と高く胸が鳴った。手は握られたままだが、振りほどけない。全身が痺れたようになり、シャーロットの顔から目が離せなくなった。


「オーウェン殿下、大丈夫ですか?」


 何だ、これは…。


 ドクッ、ドクッ、ドクッと心臓が早鐘を打ち、体中が熱い。脳がぼおっとしてきた。


「オーウェン殿下?」


 耳障りだったはずの高い声が心地良い。それに何て美しい瞳なんだ。触れられた手ももっちりと柔らかく滑々している。ずっとこうしていたい。


「うっ…!」


 急に頭痛に襲われ、オーウェンは意識を失って椅子から倒れ落ちた。





「オーウェン、大丈夫?」


 ベッドで眠るオーウェンの顔をベアトリスが覗き込んでいる。医務室へと運ばれたオーウェンは三時間ほど目覚めなかった。


 誰だっけ?


 ぼんやりとする頭で考えた。その間にも彼女は、はきはきとした声で何かを伝えてくる。


「お医者様の診断では異常はないって。疲れが出たんじゃないかって話よ。気分はどう?」


 ああ、そうだ。彼女はベアトリスで俺の妻だったな。


 徐々に記憶が戻ってくる。


「オーウェン?やっぱりどこか悪いの?」


 心配するベアトリスをよそに、オーウェンの頭はシャーロットでいっぱいだった。


「シャーロット嬢は?」

「ああ、シャーロット様なら先にお帰りいただいたわ。三時間も眠っていたんですもの。謝っていたわよ」


 帰ってしまったのか…。すぐに彼女に会いたい。今すぐ抱きしめたい。



 オーウェンは手に残ったシャーロットの感触を思い出し、手のひらを握りしめた。


現代とは常識などが異なるところがございます。お酒は二十歳になってから。

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