寮生
その後、用意された席に座り入学式なるものが始まった。とはいっても、なにやら偉そうな教師や先輩の代表挨拶があったくらいだが。
席の指定はなかったので、両側にノアリとミライヤ、後ろにシュベルト様と侍女さんが座っていた。式は退屈だった……これから、木刀でも振っていた方がいくらかマシだ。
目覚めたミライヤは、真剣に話を聞いていたが。やはり真面目というか、なんというか。
「んー、終わったぁ」
式が終われば、次は軽く校内の案内。さすがに広く、教室だけでなく食堂、実習場などを見て回った。
その後、寮生活になる者は別れて寮の案内。男子寮と女子寮に分かれており、基本は2人一組で一部屋を割り当てられているようだ。
正直、俺のことをあまり色眼鏡で見ない奴がいい。変にへりくだられたり、距離を空けられるとこっちが気を遣うし。とはいえ、入学前ならともかく、試験で顔も名前も結構広まっちゃったし『勇者』の家系であることは隠せないよなぁ。
せっかくの寮生活、気楽に過ごしたい。そう考えていた俺と同じ部屋の寮生は……
「おー、ヤークと同じ部屋か! なんて偶然!」
「……」
まさかの、シュベルト・フラ・ゲルド様だった。おぉ、こうきたか。
もし貴族や平民が同室なら、位が上である俺は敬われる立場にあっただろう。それは勘弁願いたかったが……これでは、俺が敬う方ではないか。
「まさか友達になった相手と、部屋まで同じとは! これはもう運命的なものを感じるな!」
「そうですね」
「だから砕けた口調でいいのに!」
大きく口を開けて、シュベルト様は俺の背中をバンバン叩く。これは別の意味で気を遣うわ!
後で聞いた話だが、ミライヤは同じく入学した平民の子と同室になったらしい。ちなみに平民の入学者はミライヤを除けばひとり、その子だけらしい。入学者は何人か知らないが、3組に分けた約20人構成とのこと。その中で、平民はたった2人だ。
それを考えると、他の貴族と同室になったら考えるだけでも恐ろしい。ミライヤはその子と同室になり、ノアリは貴族の子と同室になった。
つまり、だ。貴族は貴族と、平民は平民と、それぞれの位で部屋分けをしている可能性が高い。部屋での上下関係をなくそうという、学園側の計らいなのか。それがいいのか悪いのかはともかくとして。
となると、王族に一番位が近いのは……称号持ちのフォン・ライオス、つまり俺だ。そういった理由で、俺とシュベルト様とが同室になった可能性は、高いと思える。
「ま、まあそれは追々……」
「そうか?」
本人がいいと言っているのだから、呼び捨てやタメ口でも全然問題はないのだろうが……だからといって、はい今からフレンドリーに接します、というのもなかなか難しい。
一応こんな俺でも、王族相手に軽々しく接するのにはそれ相応の準備がいるわけで。まして相手は、今日会ったばかりの相手なのだから。
「ま、とにかくだ! 同室なんだ、改めてよろしく!」
「よ、よろしく……お願いします」
「だから固いって~」
ともあれ、こうして俺の学園生活が始まることになったわけだ。




