表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第4章 騎士学園での騒動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/308

注目の的



「ミライヤ、起きろー」


「ふみゅう……」



 ダメだ、完全に魂抜けてしまっている。貴族に緊張するミライヤが、王族を前にして意識を保てるはずもないのだ。


 とはいえ、このままここに放置していくわけにもいかない。平民である彼女をひとり残してはなにが起こるかわからないし、そうでなくてもここに置いていくのは気が引ける。


 なので……



「よっ、と」



 勝手ながら、背負わせてもらう。このままここに寝かせるわけにはいかないとなれば、中へ運ぶしかない。もうじき入学式も始まるし、起きるまで待っているわけにもいかないだろう。


 ミライヤの体は結構軽い。女の子の体はこんなもんなんだろうか、それとも満足に食事を取っていないのか。少し心配だ。


 それと、背中に押し付けられる柔らかい感触が、どうにも気になって……



「……」


「な、なんだノアリ」


「別に。腑抜けた顔してるなと思っただけ」


「いや、嘘だろ!?」


「嘘よ」



 な、なぜかノアリの視線が痛い。なぜだ、俺は親切心からミライヤを背負っただけだ。いくら女の子とはいえノアリに背負わせるわけにもいかないし、他に任せられる人もいないし。


 これは仕方ない、仕方ないことだ。背中に感じる柔らかい感触は、狙ったわけではない。意図せずこうなってしまったに過ぎない。



「おぉ、力持ちだな。女の子とはいえ、意識のない人ひとり軽々と背負うなんて」


「ど、どうも」



 そんで、こっちの王子様はなぜか目をキラキラと輝かせているし。うーん……言ってはなんだが、この王子様はそこまで腕力があるとは思えない。


 それも服に隠れているし、こうして入学の場にいる時点で剣の腕も確かなのだろうが。多分、攻撃的な功竜派(こうりゅうは)ではなく、防御特化の防竜派(ぼうりゅうは)か技術面を磨いた技竜派(ぎりゅうは)だろう。


 ま、それも今後わかることだ。ずっとここにいても仕方ないし、そろそろ中に入ろう。



「……なんかめっちゃ見られてるわね」


「だろうな」



 校門を潜り、校舎へ向けて進む。その間周囲からの視線をすごく感じた。


 それはそうだろう。俺とノアリが歩くだけでも貴族からの注目を集める……そこに、王族の人間まで一緒に歩いているのだ。


 王族の顔は、平民であるミライヤでもすぐにわかるほどに有名だ。俺はすぐにはピンとこなかったが……ともかく、それほどまでの有名人。さっき校門前で人が集まっていたことといい、この人は注目の的だ。


 俺も『フォン・ライオス』の人間としての視線を向けられたことは多々あるが、今回のはそれとは別格だな。あまり慣れない。



「さっさと建物の中に入ってしまおう」


「それがいいわ」



 上位貴族に勇者の家系、王族の組み合わせは視線を集めるには充分すぎる。他の連中もぞろぞろと中に入ってはいるし、それに紛れて俺たちも……



「あ、あれ……?」


「お、起きたか?」



 ふと、背中から声が。背負っていたミライヤが目を覚ましたようだ。立場上を引いても、この体勢は視線を集めてしまうために起きたなら、下りて自分の足で歩いてもらいたいものなのだが……



「あ、あれ、私……え、え! や、ヤーク様のせな、背中……はぅ……!」


「おおい!?」



 自分が背負われている事実、それが俺の背中であることに気づき、またも気絶してしまった。おいおい……


 結局その後、建物に入り式が始まるまでの間、ミライヤが起きることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミライヤが事あるごとに気絶するのが微笑ましくて良いですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ