表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第4章 騎士学園での騒動

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/308

王族



「なんかあっという間だったな」



 入学試験の日から、時間が経ち今日は入学日。その間、なんだかんだであっという間だった気がする。


 俺とノアリ、そしてミライヤは合格し、今日から学園に通うことになる。試験では好成績を納めたし、その他も入学に問題ないとのことだ。


 結局、学園に通うにあたって寮生活をすることに。せっかくの学園生活なのだから、少しでも馴染んでこいという結論になった。なので、この家とはしばらくお別れだ。



「うぅ、寂しくなるわねぇ……」


「なにかあったらすぐ帰ってきてくださいね?」



 心配して涙ぐんでいる母上と、思いの外心配の様子を見せてくれたアンジー。思い返せば、アンジーとは本当にずっと一緒にいたもんな。日々の生活はもちろん、『呪病』の一件でも一緒に旅をしていた。


 その期間があるから、両親やキャーシュよりもアンジーと一緒にいた時間が濃いのかもしれない。父上は家を空けることが多かったし。


 そしてキャーシュは……



「兄様……頑張ってください!」



 寂しそうな顔を見せながらも、気丈に振る舞っている。あぁ、まったくキャーシュはかわいいなぁ。


 キャーシュと離れるのは苦渋の決断だが、なにもずっと会えなくなるわけじゃない。距離が近いのだから、休みの日なんかにちょくちょく帰ってくればいい。



「ヤーク、励めよ」


「父上……」



 そう言って俺の頭に手を置いてくるのは、父上……大きく温かな手は、普通であれば安心するものなのだろう。だが、俺は今すぐにでも払いのけてしまいたかった。


 騎士学園に入学し、剣の腕を磨く。それは最終的な目標として、父上……ガラド・フォン・ライオスを殺すことにある。然るべき場所で然るべき訓練を。そうすれば、今以上に強くなれるだろうとはロイ先生の言葉だ。


 俺は『呪病』の一件の旅から戻り、自分の実力を再確認した。子供のゴブリンに、ギリギリ勝つことができた。ゴブリンなんて、ある程度の実力があれば苦労なく勝つことができる。


 そんなのに苦戦するようじゃ、ガラドを殺すなんて夢のまた夢。だから俺は、より鍛練に励んだ。ちなみに先生は、予定が入っているので来れなかったようだ。残念がっていた。


 俺が転生してから16年……俺が死んでからだと、19年か。あの頃と比べれば、ガラドも年を取った。とはいえ、まだまだ現役だ。そんな人物に、勝つにはさらに実力をつける必要がある。



「じゃ、行ってくる!」



 さて、別れの挨拶もそこそこに……俺は家を出る。外ではノアリが待っていたので、一緒に登校する形だ。


 こうして隣り合ってあるくことに、初めの頃は少し抵抗はあった。幼なじみびいきを除いても、ノアリは美人だ。成長した今はよくわかる。そのノアリと並んで歩いていれば、当然注目はされる。


 今となっては、まあ慣れたしな。



「ふふーん♪ 楽しみね!」


「そんなに楽しみなのか、なんか意外だな」



 ノアリは当初からこの学園を受けるつもりはなかったようだが……俺がこの学園を受けると話して、急にここを受けるように努力を始めた。


 それで本当に合格するんだから、すごい奴だよな。



「せっかくの学園だもの、楽しまないと!」


「ま、それもそうだな」



 それには俺も同意見だ。せっかくの学園生活なんだから、楽しまないとな。


 転生した俺の目的は、ガラドを殺すこと。だが、それを俺の人生の終わりにするつもりはない。いかにして秘密裏にあの男を殺すか。そしてせっかくの第二の人生を、どう謳歌するかだ。


 どうして、もしくは誰がなぜ、俺を転生させたのかは知らない。だが、わからないならわからないで楽しむだけだ。



「人が多いわね……あれ、あそこ人だかりができてるわ」



 学園に近づくにつれ、人は多くなってくる……そして、入り口の付近で、人だかりができているのを発見。


 一瞬、入学試験日のミライヤの件を思い出したが……さすがに平民だからって、朝からこんな堂々とした場所であんなことは起こらないだろう。


 それに、人だかりの感じはあの時のような、悪意を感じるものではなくて……



「……おや」


「ん?」



 この人だかりが邪魔でなかなか前に進めない。いっそ払いのけてしまおうかと考えていたところへ、人だかりの中心にいた人物と目があった。


 誰だろう……なんか、見覚えがあるような。あ、こっち来た。その際、人だかりはその人物の道を作るように、避けていく。



「やあ、キミはヤークワード・フォン・ライオスくんだね?」


「え? はぁ、そうだけど」



 その人物は、人のいい笑みを浮かべ、俺の手を取る。肩まで伸びた金髪に、吸い込まれそうなほどに澄んだ水色の瞳。さらに頭の先からアホ毛が伸びている。


 なんという美形だろう。キャーシュもなかなかの美形だが、悔しいことに負けていない。


 とはいえ、いきなり手を握られるほどに面識などないはずだが……気のせいか、周囲がざわついている。俺の隣にいるノアリなんて、見たことがない顔をして固まっている。



「ノアリ? どうした?」


「どどっ、どうしたって……あんたこそ、なんでそそ、そんなに、冷静なわけ!?」


「なにが」



 ノアリがなにをそんなに慌てているのか。俺の返答を、まるで信じられないとでも言いたそうだ。


 身ぶり手振りでなにかを伝えようとしているが、やがて諦めたように……



「そ、その方がどなたかは、知ってるわよね?」


「いや」



 直球に問いかけてきたが、俺が首を横に振るとさらに衝撃を受けた顔に。おいおい、そんな顔するもんじゃないぞ。


 しかし、知ってて当然の人物ってことか。それも、ノアリが……貴族が、敬語を使うほどの……



「はは、申し遅れたね。ボクはシュベルト・フラ・ゲルド、以後お見知りおきを」


「あぁこれはどうもご丁寧に。……ん、ゲルド?」


「こ、この国の、王族よ! 第一王子の、シュベルト様よ!」



 聞き覚えのある名前、というか単語に首をかしげる。引っ掛かる。その引っ掛かりに答えをくれたのが、痺れを切らしたようなノアリの言葉だった。


 あぁ、ゲルド……この国の名前ゲルド王国か。それに、王子ということはなるほど……道理で見覚えがあるはずだ。王子ならば、どこかで見る機会もあったということで……



「……王子?」


「とりあえず、そういう肩書きってことかな」



 ……つまり、今……俺は王子に、手を握られて、いるのか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ