いざ入学へ
ミライヤと仲良くなったことで、彼女もちょくちょくウチに来るようになった。本人はまだ恐縮していたが、俺たちは一向に構わない。
逆にミライヤの家にも行ってみたいと言ってみたが、俺たちを招けるほどきれいなところではない……と全力で拒否されてしまった。
まあ、貴族が自分の家に、なんて考えたら、恐縮する気持ちもわからんでもない。転生前の俺だって、きっと同じ思いを抱いていただろう。
……さて、騎士学園の入学試験日から数日後。合否の連絡があった。それは見事合格というもので、ノアリも同様だ。飛んで合格通知の紙を見せに来た。
「やったわねヤーク!」
「うお!」
合格したことを知った母上は、自分のことのように俺を抱き締めた。
転生した俺にとって、母上……ミーロは、幼なじみだ。俺があのまま、転生しなければ……いや、殺されなければ、今ミーロと同じ年になっていた。ミーロは美人だ、当時俺は特別な感情を抱いていたりもした。今ならはっきりわかる。
そんな幼なじみに対して、転生した直後は混乱したものだ。転生した事実はもちろん、想いを寄せていた幼なじみが母親になっていたのだから。
だが転生してから16年も経った今となっては、もう慣れたというか……そういう感情はもちろん持っていないし、普通の息子として接することができている。はずだ。
「おめでとうございます、ヤーク様」
アンジーも素直に祝福してくれたが、思いの外冷静だった。まあアンジーは、先生との鍛練の日々をいつも見ていたし、俺の実力ならば入学に問題ないと思っていたのかもしれない。
「おめでとうございます、やりましたねヤーク」
対して、実際に修行をつけてくれた先生は大いに喜び、俺の頭を撫でてくれた。先生は先生で、俺の入学を信じてくれてはいても実際に教えた身として、また別の喜びがあるのだろう。
今のところ、家から近いし、学園の寮ではなく家から通うつもりだ。同じ理由でノアリも。
だが、両親曰く、せっかく寮があるのだからそこで経験を積んだほうがいいとのこと。その方が、より早く学園で仲の良い人も作れるしな。
さて、そういろいろなことを考えて日々を過ごし……入学の日が、やってきた。




