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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第3章 『竜王』への道

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目覚め



 ノアリが目を覚まし、『竜王』の血の効果が表れたことでほっと胸を撫で下ろす。ノアリの意識も、徐々にはっきりしてきたようだ。


 まだ体を動かすのは怖いから、ベッドに寝かせたままだが……それでも、会話ができるまでには、回復したようだ。



「よかった、ノアリ……!」



 ノアリの両親、特に母親は泣いて喜んでいた。その気持ちも、わかるつもりだ……なんせ、これまで会話もできなければ、触れあうのもためらわれていたのだから。


 弱々しくもしっかりと手を握り、娘の体温を、感触を確かめているようだ。ノアリは、そんな母親の姿に苦笑いを浮かべている。



「よかったな、ヤーク」


「! クルド……」



 俺の肩を叩き、優しく話しかけてくれるクルド。クルドには状況を口でしか説明してなかったから、さっきまでの状況を見てさぞ驚いたことだろう。なんせ俺も驚いたんだし。



「うん、ありがとう。クルドのおかげだよ」


「我はなにもしていない。さっきも言ったが、お前が必死だから協力しただけだ」



 なにもしていない……なんてことはないんだけどな。けど、それを蒸し返しても謙遜するだけだろう。


 ……家を出てから、結構時間が経った気がする。けど、こうして命の期限に間に合ってよかった。


 アンジーも俺について家を出ていったわけだし、父上も1日中側についていたわけではない。今だって姿が見えないし。だから、母上にはずいぶんと苦労をかけただろう。ノアリのことはもちろん、キャーシュのことだって……



「……ん?」



 そういえば、キャーシュはどこにいるのだろう。夜も遅いし、寝ているのではと思ったが、外も含め結構騒がしくなっているのに、まだ寝ているのだろうか。


 キャーシュの居所を母上に聞くと、どうやらキャーシュはロイ先生が引き取って預かっているらしい。母上はノアリの面倒や他の『呪病』患者にかかりっきりだったし、ならばとキャーシュを預かってもらったのだという。


 キャーシュには寂しい思いをさせているから、早く会いたかったが……そういうことなら、仕方ない。



「さて……ヤネッサもクルドも、ついてきてくれてありがとう」



 この問題には関係ないはずの2人……けれど、最後までついてきてくれた。改めて、お礼を言う。


 ヤネッサはエルフの森に、クルドは竜族の村に帰らなければならない。2人と過ごした時間は短くはない。ヤネッサには、会いに行こうと思えば行けるだろう。だが、クルドはそうもいかない。


 竜族の村なんて、転移石で到達した『王家の崖』、その結界を抜けなければいけない。そう簡単な話ではない。



「何度も頭を下げるな、笑っていろ」


「そうだよー。大事な子を救えて、よかったね!」


「……うん!」



 ノアリを助けられたのは、2人がいてくれたおかげだ。ヤネッサはなんだかんだで、気分が下がりそうなときに盛り上げてくれたり、励ましてくれた。クルドだって力になってくれた。


 2人には、感謝してもしたりない。改めてなにかできないかな……そうだ、エルフの森に転移石を返しに行くから、ジャネビアさんにもお礼を言わないと。


 ……転移石を渡してくれたエーネにも……うーん……一応、感謝は、している……



「……」



 母上に、エーネに会ったと言ったらどんな反応をするだろう。いや、どうも思わないか……少なくとも、俺の正体を知らないうちは、なんとも思うまい。


 エーネは、俺の正体を内緒にしてくれると約束はしてくれた。それを俺が100%信じられるかはともかくとして、本人は嘘を言っているようでは、なかった。


 だがまあ……今は、いいだろう。今は……



「ヤーク……」



 小さく、しかし確かに俺の名前を呼ぶ声。それは未だベッドに眠るノアリのもので、俺はゆっくり近づいていく。


 ノアリが、俺に手を伸ばしている。俺は、そっとその手を取る。



「なに、どうした?」


「あの……ありがと、うね」



 まだ体調は完全には戻っていないのか、弱々しい様子でそれでも笑顔を向けてくれる。その笑顔を見ただけで、声を聞けただけで、今までの疲れや考え事が、全部吹っ飛んでいく気がした。

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