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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第3章 『竜王』への道

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揺れる気持ちと固める決意



 目の前に広がる景色に、俺はなにも言えなかった。


 寝台に寝かされた、ひとりの女性……少女と見間違うくらいに小さく、しかし全身に刻まれたしわは相応の年月を生きてきたと教えてくれる。


 クルドが祖母と呼び、同時に『竜王』と呼ばれる存在。『竜王』と呼ばれるからには、竜族の中でもかなり高位な存在で、村の長老、みたいに考えてはいたが……


 それは間違っていなかったが、同時にこれほど衰弱しているとも思っていなかった。腕には、一本や二本ではないほどに針が刺され、点滴のチューブが繋がっている。それも、両腕だ。見ているだけでも痛ましい。



「これが、今の『竜王』の姿だ。病に苦しむ人間全てを救えない……その意味が、わかるだろう?」


「……」


「でも……竜族は、怪我も病もなく、すぐに治ると……」



 クルドの言うように、この状態の『竜王』から血なんて取れない。正直ひとりを救うだけの血さえもためらわれるのに、それ以上なんて無理だ。


 答えられない俺の代わりに口を開いたのは、アンジーだ。それは、クルド本人が言っていたこと……竜族は怪我もしないし病もかからない、仮に負ったとしても、すぐに治ると。



「だがこれは、病じゃあない。単純な話だ」


「……寿命が、近いんですか?」


「そう。竜族、『竜王』なんて聞いて大層なイメージを持っているところ悪いが、俺たちだって血を抜かれすぎれば死ぬし、寿命だってある。他種族より存命なだけで、不死なわけじゃない。祖母は、もう何千年生きている」



 何千年……あまりにスケールが違いすぎて、言葉も出ない。エルフが長寿だ、ジャネビアさんが何百年生きてるだと言ってきたが、それどころではない。ケタが違う。


 それだけの年月を生きていれば、寿命が近づくのも当然だ。



「衰弱した祖母には、今はこいつを使って体内に栄養を入れる他ない。意識だって、常にあるわけじゃないんだ」


「……こんな、状態で……」


「ヤーク様」



 決意が、鈍りそうになる。こんな状態の、衰弱しきった(りゅう)から果たして血を取れるのかと。額に生えている角を除けば、人となんら変わりはない。


 その俺に、声をかけてくるのはやはりアンジーだ。ここまで来て、自分の目的を見失うなと。そう、言っているようだった。


 そうだ、俺はノアリを助けるために、ここまで来た。そのために、なんだってやるつもりだったじゃないか。いや、つもりじゃない。なんだってやる。



「クルド……こんな、状態だけど……血を分けて、ほしい」


「……」



 俺の言葉が、クルドにとってどれだけひどいことか……それは、わかっているつもりだ。衰弱している祖母から、血をわけろと言っているのだ。相手が竜だとか、そんなことは関係ない……ひとりの家族に、そんな酷なことを強いろうとしている。


 ノアリを助けるためになんだってする……俺の問題なら、なんだってする。俺の血が必要ならいくらだって抜いてやる。だが、これは俺の問題ではない……だから、気持ちが揺らぐのだろうか。


 そんな、俺の言葉に、クルドは……



「……祖母が目覚めるまで、待ってくれ。出来る限り協力は、したいが……この状態の祖母から無許可で血を抜くことは出来ん」


「それは、もちろん」



 嫌な顔ひとつせず、こう言ってくれた。祖母が目覚めるまで……それは、いつになるかわからない。だが、ここに来るまで偶然にもテンポよく来ることができた。


 時間が惜しい。だが時間なら、まだあるんだ。

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