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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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今後の身の振り方



 ライオス家にたどり着き、これまで行動を共にしていたエルフは離脱。


 ミーロが皆を促し、家の中に入っていく。ちなみに、家の周りにはアンジーが結界を張っているため、滅多なことでは人は来ない。


 そして現在、広間にはヤークワード、ミーロ、キャーシュ、アンジー、ヤネッサ、ロイ、ノアリ、ミライヤ、リィ、アンジェリーナ、さらに目を覚ましたリエナが、それぞれ座っている。


 これだけの人数がいても、部屋にはだいぶスペースの余裕がある。



「こ、ここがヤークワード様のご実家……ふぁあ……」



 と、みんなが座ってもひとり最後までオロオロしていたリィが、感激しているかのように目を輝かせている。


 確かミライヤが初めてこの家に来たときも、こういう反応だったなぁ……と、ヤークワードはぼんやりと思った。



「申し訳ありません……私は、なんの役にも立てず……」


「いつまでも気にしてちゃダメよ、大丈夫だから」



 落ち込んだ様子で謝罪を口にするのは、リエナだ。


 彼女は、騎士学園での攻防の中で、校長ゼルジアルに一撃をもらい、つい先ほどまで気絶していたのだ。


 怪我こそ、ヤネッサの治療のおかげで治ったが、役に立てなかったことは変わりない。



「しかし……」


「あ、私は、その……」



 アンジェリーナに宥められても、やはりすぐに気を持ち直すには至らない。


 それに、自分と同じく攻撃を受けたミライヤが、こうしてぴんぴんしているのだ。先ほども戦いに身を投じていたというし、どうしても比較してしまう。


 しかし当のミライヤは、自分は純粋な人間族の体ではないことをわかっている。言ってしまえば常人より頑丈なのだ。


 なので、そこまで悲観することでも、ないとは思うが。本人的には、そういうわけにもいかないらしい。



「まあ、各々の反省は一旦置いておきましょう」



 と、軽く手を叩いてロイが口を開く。


 今話し合うことは、自分たちの行動を振り返っての反省ではない。今後の、動き方についてだ。



「話を整理すると……ヤークはガラド様殺しの罪で騎士学園へと連行された。

 そこで、我々は彼を学園から連れ出した」


「ヤークがいなくなったのも、私たちが連れ出したっていうのも、もう話が広まっていると思う」



 今日一日……というよりたった数時間の出来事であるが、ずいぶんと濃い内容のような気がする。


 一同は、起こった出来事の情報交換と移る。途中ローブを被った謎のエルフが助けてくれたこと、彼曰く"王"が結界を張っていたこと、それによりアンジーたちは弾き出されてしまったこと、校長ゼルジアルが魔物と成り死闘を繰り広げたこと、この国に宣戦布告してきた魔族が再び現れたこと……


 そして……



「え……王って、セイメイのことだったのか!?」


「えぇ」



 ヤークワード始め、ミーロたちも気になっていた存在。あのエルフが王と慕う人物の正体に、驚きを見せるのはやはりヤークワードだ。とはいえ、薄々勘付いていたのも事実だ。


 彼、シン・セイメイとの因縁は決して浅くない。一度対峙したことに加え、彼もまた、ヤークワードと同じ転生者だと言うのだから。


 もっとも、彼の場合は他者の力でなく自らの力と意志で、転生したようだが。



「セイメイが……どうやって……」


「それは、わからなかったわ」



 あのとき、ヤークワードたちは死力を尽くして、セイメイを倒した。とはいっても、最後は魔力封じの拘束具を持って現れたリーダ・フラ・ゲルドによって拘束されたのだが。


 ……そして、その後どこかへ、連行されたはずだ。



「逃げ出した? それとも……」



 あの凄まじい力なら、並大抵の拘束はセイメイにとって意味のないもの。


 しかし、あれは魔力封じの拘束具。いくらセイメイと言えども、簡単に抜け出せはしまい。彼自身の力でないとするならば……



「それに、どうしてヤーク様を助ける手助けをしてくれたのか、不思議です」



 ふと、思案しているところにミライヤの声。その疑問は、当然ながら誰もが持つものだ。


 ヤークワードたちによって拘束されたセイメイ。ヤークワードたちに恨みこそあっても、助ける義理などないはずだ。


 それも、騎士学園でも屈指の魔力使いクロードを足止めし、別にエルフを差し向けるサービスっぷりだ。



「その、エルフの王とやらが考えていることは今、考えてもわからないでしょう」



 うんうんと唸る中で、ロイがバッサリと切り捨てた。それは、その通りだ。


 いくら理由を考えても、結局は、本人の胸の内のことは誰にもわからないのだから。


 ただ、完全なる善意からではない……それは、ヤークワードはなんとなく思っていた。



「そうね、今考えるのは……」


「ヤーク様の、今後の身の振り方……」


「学園に侵入した私たちも、言っちゃえば犯罪者を逃がした扱いだから、どうなることか」



 今後避けては通れない問題。それが、他ならぬヤークワードの扱いだ。もはや国中に犯罪者として広められた形になり、無罪を証明しようにもその方法がない。


 それに、彼を助けに学園に侵入したノアリ、ミライヤ、アンジェリーナ、リィ、リエナ……彼女らの身の振り方も、考えなければならないだろう。なにせ、学園在籍の生徒なのだ、顔は割れている。


 ヤネッサだけはまだバレていない可能性もあるが、時間の問題だろう。



「みんな……」


「おっと、謝るのはなしよ。それを承知で、助けに行ったんだから」



 みんなを巻き込んでしまったことをヤークワードは謝罪しようとするが、ノアリが手を出し制止する。これは、覚悟の上だと。


 他のみんなも、同じ気持ちだ。



「ただ、ひとつはっきりさせておかなきゃ、いけない」



 コホン、と咳払いをひとつ。ノアリは、ヤークワードを見据える。


 その視線の鋭さに、思わず背筋を伸ばしてしまうほどだ。


 そして、ノアリは口を開く。彼の口から、真実を聞くために。



「ヤーク……あんたは、ガラドさんを殺したの?」



 全員の視線が、ヤークワードに……集まっていた。

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