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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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即席のチームワーク



 魔族と真っ向打ち合うヤネッサ。手に持つ矢を剣のように振り回し、魔族へと斬りつけていく。


 『魔導書』事件の一件で、右腕を失ったヤネッサは当初は慣れない動きに苦労したものの、今では左腕のみでも生活に支障はない程度にはなっている。


 それはあくまで生活には支障がないレベルだ。こうした極限の戦いに、しかも魔族を相手にしてそう長い時間耐えられるかというと……



「動きが乱れていますよ」


「っ!」



 何度か打ち合ったその後、腹に蹴りを入れられる。その場に踏ん張り数歩後退りした後、その場に膝をついてしまう。


 片腕がない、それだけでも重心のブレや、単純に体力の低下がある。もはや左腕のみの生活に慣れたとはいえ、舞台が戦いの場ともなると話は別だ。


 ヤネッサ自身、それはこれまでの経験で、痛いほどわかっている。



「あなたは……あぁ、以前あの森を焼き払ったときの、生き残りでしたか」


「!」


「その後、どうです? お仲間の弔いなどは……あぁ、そんな暇はありませんでしたね。これは失敬……」


「お前……!」



 ヤネッサを見下し、魔族は煽るように口を開く。それが挑発だとわかっていても、ヤネッサは反応せずにはいられない。


 怒りに目を見開き、顔を上げる……そこには、憎き魔族の姿があって。


 ……その背後に、飛びかかるアンジェリーナとリィの姿があった。



「やぁあ!」


「せぇい!」


「む……」



 声が上がる前から気配には気づいていたのだろう、剣を振るわれる位置に、先んじて防御するように魔族は腕を動かす。


 横薙ぎに払われた刃は、魔族の鉄のような腕に受け止められて……



「っ、また……!」



 苦悶の声を漏らす魔族。その理由は、アンジェリーナとリィの剣を受け止めたことによるものだ。


 竜族の攻撃さえも軽くいなす魔族にとって、人間の小娘が放つ攻撃などたかが知れているだろう。


 だが、今放たれたのはただの、人間の小娘が放った刃ではない。魔術により強化された、刃だ。



「ぬっ……!」



 魔族は、力を込めて刃を押し返す。人間の攻撃が、こうもダメージになるとは……つくづく、あのエルフの魔力は厄介だ。


 彼を先に始末したいが、そのためには立ちふさがる相手が多い。


 そもそも、魔族にとってエルフ族を相手にするのは前回の襲撃が初めてだ。ルオールの森林ではエルフを結界内に閉じ込めた上で燃やし、対峙したアンジーやヤネッサは結界内で魔力が使えなかった。


 これがエルフ族の、本来の戦い方なのだろうか。


 数の差は承知の上で姿を現したが……



「少しばかり、早計でしたか」



 軽く舌を打つようにして、魔族は己の行動が逸ったか後悔する。だがその一方で、あのタイミングしかなかったとも思うのだ。


 あのまま彼らが結界の外に出てしまえば、戦力はさらに増す。その上、今正門で暴れているが、用がなくなればさっさと撤退するであろうシン・セイメイの存在もある。


 さすがにアレを相手にはできない。



「もっと早ければ、よかったのですがね」



 迫る無数の刃をなんとかかわしながら、魔族はタイミングの悪さを呪う。


 そもそも、あの男……騎士学園の校長であるゼルジアル・フランケルトにあの薬を渡したときから、全ては始まっていた。


 あれは魔力を感じられるようになる一方で、だんだんと魔物に変化してしまうものだ。そして、最終的に魔物になってしまえばもはや人間とは呼べなくなる。


 さらに、ゼルジアルが変化した魔物は、魔族にとって自分が死んだときのための保険。魔を通じて、死んだ己を復活させる。転生とは、また違った方法だ。


 あれは、ゼルジアルを依り代とし、自分が復活するための布石。それが、この魔族とあの薬が揃えば可能だった。



「せめて学園の中なら……」



 ゼルジアルが倒され、その後魔族が復活するには時間がかかる。魔族が復活したタイミングが、せめてヤークワードたちが学園の外に出る前であったなら。


 魔族が目を覚ましたときには、すでにヤークワードたちは学園を出る寸前。だから、せめて先回りをして待ち伏せていたが……


 学園の中のような狭い空間であればともかく、このような開けた空間では、数の差はより大きなものとなる。



「ぬん!」



 刃をかわす中で、魔族は行動を変える。己の中の魔力を手先に集中させ、魔力による剣を作り出す。


 ただでさえ鉄のように硬い魔族の体、しかしそれはもはや、エルフの魔術の前では意味をなさない。


 だから、こうして武器を手に打ち合うことで、形勢の逆転を目論む。


 だが……



「はぁあああ!」


「せぇい!」



 子供とはいえ、騎士学園で剣術を学んできた生徒たち。対して魔族は、全身が武器ゆえにその一芸には長けているわけではない。


 そもそも強力な魔力は、震えばそれだけで圧倒的な力となる。


 それを知ってか知らずか、よりによって竜族の娘と鬼族の娘がコンビネーションを交えて、魔族の反撃の手を摘んでいく。



「前は、悔しいけど一対一だったから負けた! でも……」



 力押しに刃を振るう竜族は、以前の雪辱を悔しがるように唇を噛む。


 悔しいが、ひとりでは勝てない。けれど、こうして誰かと……友達と一緒ならば。どんな敵にだって、打ち勝てる。


 ノアリをサポートするように、あらゆる角度から攻めるミライヤ。一方に気を取られれば、一方に押し切られる……そんな、ギリギリの状態に、魔族は……



「鬱陶しい、ですね……!」



 自身の魔力を高め、反撃を試みる。左手側にもう一本、魔力による剣を作り出し、二刀として剣を振るう。


 これにより、なんとか2人の攻撃を捌くことはできる。が……



「っ」



 そんな2人の間をすり抜けて、遠距離からの攻撃が放たれる。


 ヤネッサの魔法と、エルフの魔術。それを避けても、人間の娘による攻撃が再び入り込む。


 即席のチームワークではあるが、確実に魔族は、追い詰められていった。

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