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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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再会と衝撃



 ……ほんの数分前の出来事。



「こっちだよ!」


「あぁ!」



 ヤネッサの案内に従い、ヤークワードたちは走っていた。


 向かう先は、校長を足止めしているというノアリ、ミライヤのいる場所。先頭をヤネッサ、その後ろをヤークワードとアンジェリーナ、リィ。


 そして最後尾を、ローブを被ったエルフが走っている。



「ノアリとミライヤもだけど、リエナも心配!」



 この場にいない少女のことを思い、ヤネッサは呟く。


 共に来ていたリエナは、ゼルジアルにやられ、未だ意識不明だ。ヤネッサの魔法で傷こそ治ったが、気絶したままであるため、残してきた。


 気絶したリエナを背負ってヤークワードを探すのはキツい。かといって、戦場の渦中に置いていくのも心配だった。


 苦渋の決断の末、ノアリとミライヤにこちらも任せることになったのだ。



「きっと、大丈夫よ。あの子は強いから」



 そう言葉を返すのは、アンジェリーナ。婚約者であったシュベルトの、侍女。その関係で、彼女と過ごした時間は長い。


 彼女が強いことを、アンジェリーナは知っていた。


 それはそれとして、気絶していたら強いもなにもないのだが……みんなは、口をつぐんだ。



「……血のにおいがするな」


「こ、怖いこと言わないでくださいよ……」



 これまでだんまりだったエルフ、その言葉にリィが怯えたような声を漏らす。


 鼻がいいのはヤネッサの専売特許かと思ったが、エルフ族は鼻がいいのだろうか。


 ……いや。



「確かに……」



 その異変は、ヤークワードにも感じられた。


 人がいないのもそう、血のにおいがするのもそう……いつも見慣れたはずの学園が、まるで異世界のようだ。


 人がいないだけではない、血のにおいがするだけではない……この、異様な空気は……



 ドォ……!



「この音……!」



 騒ぎの場所に近づいてきた証拠だろう、先ほどからうっすらと聞こえていた音が、徐々に大きくなっている。


 なにかを破壊するような、音。それだけではない……聞きたくもないような、悲鳴のようなものまで、聞こえてくる。



「ここ先だよ!」


「ノアリ、ミライヤ……!」



 あの2人なら大丈夫だと思いたい。だが、相手は騎士学園校長、ゼルジアル・フランケルトだ。


 どこか得体のしれない人物。さすがに生徒を殺そうとまではしないと思うが……ヤークワードは例外としても。


 とはいえ、安心はできない。急ぐことに越したことはないのだ。現に、悲鳴が聞こえている。



「いた、あそこ!」



 まだはるか先、しかしヤネッサが指さした先には、確かになにかがいた。……なにかが、いた。


 後ろからだから誰だかわからない、とかそんな問題ではない。あれは、人なのか?


 体半分以上から、なにかが生えてきている。岩……のようなものだ。体も、人にしてはいくらか大きい。


 だが、その正体などどうでもいい。ヤークワードが目にしたのは、その向こう側……見知った少女たちが、いた。



「ノアリ、ミライヤ!」



 その姿を見つけると、ヤークワードは走る速度を上げる。先頭を走っていたヤネッサを引き抜いて、向かう先は一直線。


 アレがなにかはわからない。だが、ノアリやミライヤが、それに他の教師までもが襲われている。


 それだけで、敵と判断するには充分だ。



「ちょっ、ヤーク!」



 彼は、自分が助けられに来たことを理解しているのだろうか。伸ばしたヤネッサの手は、しかし届かない。


 まあ、ここで仲間のために我先に駆けつけられるのが、ヤークのいいところだけど……とも、ヤネッサは思うのだ。



「お、らぁ!」


「っぎぃい!?」


「ヤーク!」


「ヤーク様!」



 直後、気合いの入った雄叫びとともに、斬撃が繰り出され……それは、あの変な姿をした奴にダメージを与えたようだ。


 ちなみに今ヤークワードが持っている剣は、騎士学園に侵入したヤネッサがその辺で見つけて、パクって収納しておいたものだ。



「ノアリ、ミライヤ……」


「って、感動の再会はあとだよ!」


「お、おう」



 今のヤークワードの一太刀は、確かにダメージを与えたようだが……それだけで、倒すには至らなかったようだ。


 即座にヤネッサは、意識を切り替えるように言う。



「ところで、これ……なんなの? 別れたときは、確か校長先生を足止めしてたはずだけど……」


「……これが、その校長よ」


「……え?」



 今なにと戦っているのか、それを問うヤネッサに、なんとも複雑そうに眉にしわを寄せながら答えるノアリ。その正体に、唖然とするヤークワード。


 さっきまで、校長とは一緒にいたのだ。さっきまで一緒にいた人間が、こんな……化け物のように、なっている。


 いや、化け物というよりも、これは……



「魔物……」



 小さく、ヤークワードは口の中で呟いた。


 魔族と言えば、つい先日この国に現れた魔族を思い浮かべるだろう。だが、ヤークワードが思うのはもっと別のもの。


 転生前……彼が、ライヤという人物であった頃。勇者パーティーの一員として行動していた彼は、数多くの魔物を見てきた。


 魔族ではあるが、それは魔のものを一緒くたに呼んでいるだけで、正確にはそれらとはまた違う……知性のない獣。それを、魔物と呼んでいた。


 目の前にいる、校長ゼルジアルだったというそれは……まさに、魔物のそれと特徴が一致していた。

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