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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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進む異形化



 ……ヤネッサたちが、ヤークワードたちと合流したのと同時刻。



「はぁ、はぁ……」


「くぅ、ふぅ……」


「おやおや、どうしましたか」



 そこには、3つの影があった。


 ひとつは、騎士学園校長であるゼルジアル・フランケルトのもの。そして、彼の前で息も荒く、疲労困憊なのが……



「まだいける……? ミライヤ」


「と、当然です……ノアリ様」



 2人の少女、ノアリ・カタピルとミライヤの姿。


 ヤークワードを救出するため、ヤネッサたちを先に行かせるためにここに残り、ゼルジアルの足止めを買って出た2人であったが……


 それほどの時間が経っていないにも関わらず、彼女らの姿は痛々しいものへと変わっていた。



「くっ……それにしても、ぜんっぜん当たんない」



 衝撃にボロボロになってしまった服、そこから覗く竜の鱗を持つノアリは、忌々し気に舌を打つ。


 竜族の力のおかげで、耐久力も攻撃力もかなり上昇している。それでも、このざまだ。



「速過ぎ、です……」



 それに同意するように、迸る電撃をその身に纏うミライヤは、小さくうなずく。彼女の額から生えている白い角は、鬼族の証だ。


 鬼族の最大の武器は、電撃を使った超高速移動。ミライヤはその力をまだ完全に使いこなせてはいない。


 とはいえ、並大抵の者では目で追うことも不可能だ。



「どうなってんのよ、あれ……」



 不可能であるはずのミライヤの速度に追いついてくるどころか、対応しカウンターを仕掛けてくる。


 果たしてそれは人間技なのか。彼が人間であっても、疑いたくなってしまう。そもそも、彼は人間なのか。


 そんな疑問が湧いてしまうほどに、今のゼルジアルの姿は異常だった。



「ふふフふ……力が、湧き上がっテくるヨうですヨ」



 そう、笑うゼルジアルの姿は……体の右半分が、おかしなことになっていた。


 一言で表せば、溶けている、というのだろうか。肌が溶け、その上でその部分が異様に盛り上がっている。


 盛り上がっているそれは、体の内側から岩でも生えてきたのかと言いたくなるほど、異様なものだった。


 それに、体も、一回り大きくなっているような。



「! 来る!」



 咄嗟に反応したのは、ノアリ……直後、2人は後方へと飛び、同時に今いた場所が陥没する。


 ばかでかい体のわりに、一瞬でノアリたちのいるところまで移動し、地面を殴りつけたのだ。ゼルジアルは、楽し気に笑っている。


 そこに、先ほどまで敵対しながらも紳士的に笑っていた男の姿は、なかった。



「ねえ、変なこと言っていい?」


「なんですか?」


「なんか、校長から魔力……みたいなもの、感じるんだけど」


「……実は私もです」



 それぞれ、竜族と鬼族の力が覚醒したノアリとミライヤは、魔力を感じ取ることが出来るようになっていた。


 純粋な人間族ならば不可能だが、2人の体に流れる他種族の血が、それを可能にしたのだ。



「そういえば、ヤネッサさんも同じことを……っと」



 迫り来る攻撃を避けながら、ミライヤは思い出す。ノアリも、校長から微弱な魔力を感じると。


 今感じるのは、もはや微弱なものではないが。



「っつ……」


「ミライヤ!」



 巨大な拳を避けたはずだが、破壊された壁の破片がミライヤの体を襲う。


 その破壊力は、すさまじいものだ。



「大丈夫です……せや!」



 確かに速いが、大振りな攻撃には必ず隙ができる。ミライヤは、その隙を見逃さない。


 バリバリッ……と迸る電撃に集中し、まるで自分が電撃を一体化したような感覚に陥る。まばたきの一瞬の直後、ミライヤは校長の懐に潜り込んでいた。


 飛び、雷纏いし剣を、振り抜き……



「……っ」



 その直前、ミライヤの速度に反応した校長がミライヤを睨みつける。


 驚くことに、その体から岩のようなものが生え、ミライヤを串刺しにしようとする。



「ぅううぅ……!」



 迫るそれを認め、ミライヤは必死に身を動かす。


 迸る電撃を足場とし、空中で急転換。雷の足場を蹴り、飛ぶ。それから逃れる。


 さらに複数の足場を経由し、校長のうなじへと狙いを定めて……



「てやぁ!」



 振り抜いた一太刀は……首を守るように生えてきた岩に、阻まれた。


 ガギンッ、と剣が弾かれる。



「くっ、なにこれ……!」



 校長の体を覆うように生えてくるそれは、硬い。鬼族の力を持ってしても、砕けることはない。


 ……鬼族でだめならば。



「これなら、どうだぁ!」



 振るわれるのは、竜族の力を持つノアリの剣。


 古来、速さでは鬼族、力では竜族にそれぞれ分がある。もちろん、2人がそれを知っているもないが。



「っ、しび……でも、斬れた!」



 ミライヤに意識が行っているため、ノアリの剣はあっさりと通った。


 力任せに振り抜いたためか痺れこそしたが、岩を砕くことに成功した。


 成功は、したが……



「ま、また生えてきた……」



 折っても砕いても、その箇所からまた生えてくるのだ。ただでさえ硬いのに、これではじり貧だ。


 第一、こんなことをしても本体には届かない。岩を斬ってところで、本体にダメージがあるとは思えない。



「……なんか、どんどん人間離れしていくわね……」



 こうしている間にも、校長ゼルジアルの異形化は止まらない。もやは、体の3分の1は岩のようなものに支配されてしまっている。


 ……いや、あれは岩というより……



「鎧……?」



 最近、ノアリはあれと同じようなものを、どこかで見た気がする。どこだったか……


 その時だ。



「見つけたぞ、侵入した生徒だ!」



 背後から聞こえた声に、警戒を続けながらも振り向く。


 そこにいたのは、複数の学園の教師たち。見知った顔も、いる。



「あらら、すっかり忘れてた……」


「キミたち、今すぐ抵抗をやめてこちらに来なさい」


「悪いようにはしな……って、なんだあれは?」


「! 皆さん、逃げ……」



 彼らが、異形のそれを認めるのと、ミライヤが叫ぶのは、同時だった……


 その直後、ノアリの横をすり抜け伸びた岩が、ひとりの教師の腹部を、容赦なく突き刺した。

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