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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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魔族との繋がり



「アンジェさん!」


「アンジェリーナ様!」



 ポタポタと、血が流れている。


 アンジェリーナの腹部を突き刺したのは、対峙する校長の手刀。その手は、赤く染まりながらも深々と刺さっていた。


 かろうじて、貫通まではしていないようだが……深手であることに、変わりはない。


 とっさのことに、さすがのノアリもミライヤも、反応することが……



「はぁああ!」


「!」



 瞬間、その場に響くのはヤネッサの声。いつの間にか、上空からアンジェリーナと校長の間に飛び降りていたのだ。


 もちろん、その際に手にしていた矢で、校長を斬りつけようとしたが……気づいた校長はとっさにアンジェリーナと距離を取るように、後ろへと下がった。


 結果、アンジェリーナに残されたのは手刀の痕のみ……



「や、ネッ……がっ……」


「喋らないで、今治すから」



 ヤネッサはアンジェリーナを座らせ、その腹に手を当てる。無論、校長や周囲への警戒は怠らずに。


 温かな光が、アンジェリーナの腹部を包み込んでいく……同時に、アンジェリーナは情けなく、目に涙を溜めた。


 あれだけの大見得を切り、いざ張り切ってみればこれだ。足手まとい……まさに、だ。



「おぉ、素晴らしい。竜人や鬼族を差し置いてその反応……それに、先ほど彼女の怪我を直してなお、まだそれほどの魔力を残しているとは。若いのに優秀なようだ」


「……どうも」


「ふむ、私の記憶にはない顔ですねぇ、この学園の生徒ではないのでしょうか。どうです、あなたも我が校の生徒に」


「断る」



 警戒は続けたまま、ヤネッサはきっぱりと、その誘いを断る。当然だ……この状況で、褒められても、誘われても、全然嬉しくない。


 焦りは魔力を乱れさせる。こうしたやり取りの間にも、心を乱せば魔力による治療も遅れる。


 ヤネッサは、極めて冷静だった。



「それは残念。今や貴重なエルフ族、丁重に扱いたいのですがね」


「……!」



 何気ない、その一言……しかし、それはノアリの中の、なにかを刺激する。


 先ほどから感じていた、違和感……のようなもの。ヤネッサを襲った、弾丸……それの、材料を聞いてから、引っかかっていた。


 さらに、ヤネッサも、眉をひそめる。



「……貴重な、って、どういう……?」



 エルフ族は、人間族に比べれば数が少ない。さらに、残っていたエルフもルオールの森林と共に、そのほとんどが燃えてしまった。


 ヤネッサやアンジー、騎士学園に在籍している教師など、森から出ていたエルフ以外は、きっと……


 そういう意味でも、エルフ族が貴重だというのは間違ってはいないたろう。


 いないだろう、が……



「疑問、だった……なんで、あなたたちの使っている弾丸に、エルフ族の血肉が使われているのか」


「……」


「ほとんどのエルフ族は、魔族に焼き払われた……のに。これって、どういう、こと?」



 先ほどヤネッサを襲った弾丸には、エルフの血肉が使われていた……それは、ヤネッサ自身も気づいていること。


 エルフ族の血肉……聞くだけでも恐ろしい言葉だが、その材料となるエルフはどこから調達してきたのか。


 学園に在籍しているエルフ教師らのものを使う? 可能性はなくはないが、もっと手っ取り早い方法がある。


 ……しかし、その方法を使うには、避けては通れない考えがある。



「あなたたち……まさか、魔族と繋がってたり、しない……よね?」



 それは、恐ろしい事柄に触れようとする、確認作業。あってほしくはないと思いながらも、他に有力な考えが浮かばない。


 エルフの血肉を使った弾丸……それを大量に調達するには、大量のエルフが必要だ。大量のエルフ……ちょうど、ルオールの森林で暮らしていたエルフが、先日大量に死に絶えた。


 もしも、彼らの血肉を使ったならば……だ。だが、ルオールの森を焼いたのは魔族。


 考えたくはないが……この学園の教師たちは、魔族と繋がっていて、その経由でエルフを手に入れた……そういう考えが、浮かんでしまう。



「……っ」



 それは、ノアリも考えはしたものだ。だが、考えこそしても……それはありえない、いやあってほしくないと、強く願っていた。


 自分たちの通う学園の、教師たち。それが、魔族と繋がっていて……しかも、その魔族にエルフ族の森を焼き払わせ、殺したエルフの血肉を武器に変えていた、などと。


 そんな、おぞましい想像……外れて、ほしいと思うのが人情だ。



「我々が魔族と? いやまさか、そんなはずがないでしょう」


「なら、なんであんな……エルフを、弄ぶような。あなたたちが指示して、やらせたんじゃないの?」


「言いがかりですねぇ」



 おそらく、両者の意見は平行線だろう。ヤネッサの言葉は状況証拠からの推測で、しかし校長もそれを肯定しない。


 ……肯定だけでなく、否定もしていないのだが。



「なら……あなたは、魔族が襲ってきたとき、なにをしてたの!?」


「……」



 畳み掛けるヤネッサの言葉に、校長は押し黙る。


 ノアリとヤネッサ、両者を遊ぶようにかわすこの男であれば、魔族に対してもかなり有利に動けたはずだ。だが、この男は現れなかった。


 魔族が人質を集めていたのが、他ならぬ騎士学園であったにも関わらず。



「ふむ……あなたはヤークワード・フォン・ライオスを奪いに来たのでは? ここでそれを聞くことに、なんのメリットがありますかね」


「答えろ!」



 話をそらされるのを拒否し、ヤネッサが叫ぶ。彼女にとっては、目の前の男が仲間殺しに加担しているのか……外せない、問題だった。


 その、鋭い視線を受け……校長ゼルジアル・フランケルトは、ニヤリと笑みを、浮かべた。

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