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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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脱出に向けて



「……よし、外には誰もいませんね」



 ヤークワードの拘束を解いたリィは、忍び足で部屋の外を確認する。


 外には見張りなどはおらず、比較的簡単に脱出することが出来た。



「今なら、見つからずに行けるはずです。行きましょう」


「う、うん」



 先導するリィに、ヤークワードはおとなしく着いていく。


 正直、彼女をこんなに頼もしいと思う日が来るなんて、思わなかった。というか、なぜだか逆らおうという気持ちにならない。


 そんな、おとなしいヤークワードに、リィは振り向き……



「さ、先ほどはすみません……」



 と、先ほどの威勢が嘘であるかのように、謝ってきた。


 冷静になれば、とんでもないことだ。平民が貴族に、それも王族に近しい位の人間に手を上げ、あまつさえ説教まで。


 この場で処刑されても、おかしくないどころの話ではない。一族皆殺しだ。



「いや、リィが謝ることじゃないよ。俺がうじうじしてたのが悪いんだから」



 だが、ヤークワードはそのことを気にしていない。むしろ感謝している。


 リィの叱咤がなければ、今も部屋の中で落ち込んでいたことだろう。


 自分が何者であるのか……それを考えるのは、後だ。今はなにより、自分のために身を危険にさらしている、彼女たちと無事に逃げることだ。



「それで……リィは、どうやってここに?」



 このままではリィが罪悪感に押しつぶされてしまいそうだ。なのでヤークワードは、話題を変える。


 周囲に気を配り移動しながらも、リィがここに……ヤークワードが捕まっていた部屋まで来れた経緯を、聞く。



「それは……あの、エルフ族の王様のおかげです」


「エルフの王……って、まさかシン・セイメイ!?」



 思わぬ名前に、ヤークワードは思わず声を上げてしまう。


 すぐに口を塞ぎ、周囲を確認。


 ……誰も、いないようだ。



「なんで、あいつが……そもそも、あいつって捕まってたんじゃ?」


「詳しい話は、後で……というより、私もよくは知らないんですけどね。ヤークワード様が逮捕されたと放送を聞いて、私はどうしたらいいのかおろおろしてたんですけど……」



 そこに、あの男が現れたのだ、と……リィは、言葉を続ける。


 以前とは姿こそ変わっていたが、間違いなくあの男であったと。



「彼は、私にある話を持ち掛けてきたんです……っと、ヤークワード様ストップ」


「ん」



 壁伝いに、曲がった先を確認……忙しなく、教師たちが動いている。


 あの部屋から、ヤークワードがいなくなったことがバレるのも、時間の問題だろう。



「行きましょう。……彼は、私にこう言ってきたんです」



『あの混じりの小僧……あぁ、ヤークワード・フォン・ライオスじゃったか。奴を救い出したいか?』



「ならば、力を貸そう……と」


「力を……あいつが?」



 シン・セイメイとは、何度か対面し、一度は対峙した仲だ。同じ転生者とはいえ、あまり良好な関係ではなかった。


 向こうがどう思っているかは、わからないが……わざわざ、捕まっているのを助けようとするほどの関係では、なかったはずだ。



「力って……」


「魔力です。それを使って、ヤークワード様のいる部屋を見つけたり、部屋まで一気に飛んだり……あ、あと学園内の注意を散乱させるために、適当な部屋を爆発させたり」


「お、おう」



 魔力って貸したりできるのか……そう思ったが、リィが行ったあまりに過激な行為に、言葉を失う。


 ともあれ、シン・セイメイの助力のおかげで、ここまで来れたと……



「あれ、魔力があるなら、さっき窓から飛び降りれば逃げられたんじゃ?」


「……実は、もらった魔力は底を尽きかけています。残っている魔力を全部使っても、あの高さから飛び降りたら、多分間違いなく死にます」


「多分なのに間違いないのか……ちなみに、俺がいたあの部屋って何階だったんだ?」


「最上階です」



 ということは、地上から六階の位置にあるということだ。そこから飛び降りるとなれば、確かに怪我では済まないことはうなずける。


 騎士学園とはとにかくでかい。こうして、下への階段を探すのだけでも、一苦労だ。



「それに、すでに中に侵入しているミーちゃんたちと、どう連絡を取るか……ミーちゃんたちは、どうやら二手に分かれているみたいです」


「二手……」



 ヤークワードだけをかっさらって逃げたとしても、彼を助けに来たミライヤたちは残されたままだ。なんとかして、彼女たちと連絡をとらないと。


 とはいえ、ただでさえ広いこの学園内で、身を隠しながら、どこにいるともわからない相手を見つけるのは不可能に近い。


 連絡用の魔石があればいいのだが、ミライヤたちはアンジーとヤネッサ間での連絡を考えていただろうから、持っていないだろう。


 加えて、おそらくはアンジーは、結界外に弾かれてしまっている。



「こうして移動している間に、運良く会えればいいんですけど……」


「それはさすがに、希望的観測だよ」



 たまたま会うなんて、そんな偶然起こりはしないだろう。


 そこに、ヤークワードの頭にひとつの考えが浮かぶ。



「そういや、ノアリやミライヤ以外に……ヤネッサは、いるって言ってたか?」


「ヤネッサさん? はい、いましたよ」


「ヤネッサなら、俺を見つけてくれるかも」



 そう、ヤネッサの能力は、鼻が利く。対象のにおいを忘れず、その能力にヤークワードは幾度も助けられたものだ。


 彼女ならば、ヤークワードを見つけ出してくれる。そして、合流できれば、残るメンバーを見つけることも可能だ。


 また、彼女頼みになってしまうが……それだけが、残された突破口かもしれない。

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