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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第1章 復讐者の誕生

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本の真意、目指す場所



「アンジー……」


「おひとりで大丈夫かと、心配になり……」



 アンジー、わざわざ心配してくれたのか……あるいは、両親の代わりに来てくれたのか。どちらにせよ、心配をかけてしまったことに変わりはない。


 それは、まあいいが……アンジーに、見られたか? どこから? どこまで? なにを聞かれた?



「ヤーク様……先ほど、見ていらしたのは……?」


「あー……なんていうか、その」



 やっぱり見られていたか。なにを見ていたかまではわかっていないようだが、それでもなにかの本、というのはわかっているだろう。


 そして、賢いアンジーならわかる……いや賢くなくてもわかるか。この状況に、呑気に本を読むやつなんかいない。なにもわかっていない子供ならともかく、さっきまで頑なにあの場を離れようとしなかった俺がそんなことをしない奴なのはわかっているだろう。


 ならば、今俺が読んでいたのはなんの本か……この状況に、関係のあるものだというのは、すでにアンジーに判断がついているはずだ。


 問題は……これを、アンジーにどう説明するか。下手な説明をしても、アンジーならごまかされてはくれるだろうが……根本的な解決にはならない。というか、俺がいなくなったところで俺が読んでいた本を見つけ出すだろう。アンジーならそうするしできる。


 どのみち遅かれ早かれ俺がなにを読んで、そして考えていたかはバレる。ならば……



「実は、ね……」



 自分から、話すか。その方が余計な詮索をされないで済むし。


 それに、なにも言わずに出ていくことは躊躇われる、母上や父上に話すのはもっと躊躇われる、置き手紙も……となると、結局誰かひとりには事情を話しておいた方がいいと考えた。


 そして、それにはアンジーが適任だろうとも。アンジーならば俺の話を信じなくても、言いふらしたりはしないだろうし。



「……てなわけで、北に行こうかと、思ってるんだけど」



 大まかに、説明する。ノアリの呪病を解決する方法がないこと、俺に出来ることを考えたこと、ノアリのお気に入りの本に似たようなものがあること、どんなに小さくても可能性があるならば賭けてみたいと思ったこと。


 もちろん、俺だってノアリの側にいたい。が、ただ手を握っているだけでノアリの命の終わりが近づいているのを黙って見てはいられない。だから……



「……事情は、わかりました」



 アンジーの反応を待つ時間が嫌に長く感じていたが、アンジーはため息を漏らすとともに口を動かす。俺の、あきれるような馬鹿げた話。おとぎ話の物語を信じ、それを実行しようとしている。


 まさしく子供だ。子供の体こそ、これを信じても違和感はないだろうと思いはするが。



「えっと、アンジー……」


「しかし、認めるわけにはいきません。ヤーク様のような子供を、それもひとりでなんて」



 やはり、認めてはくれないか……しかし、それは俺の話を信じていないというものではなく、あくまでひとりで行かせるわけにはいかないと、言うもので。



「アンジー……俺から話しといてなんだけど、信じるの?」



 物語の中の話。それは鼻で笑われても仕方のないものだ。だがアンジーは、笑うどころか頷いて見せて……



「……その本の著者、ご覧になりましたか?」



 予想外の台詞を吐く。



「え、著者……いや、見てなかったな。ええと……著者、アルバラン・モンダン……」


「その人、私の祖父なんです」


「…………はい?」



 さらに予想外すぎる台詞が、飛んできた。


 いや、え……祖父、だと? この、アルバラン・モンダンって人が? アンジーの?


 ここでアンジーが嘘をつく必要はない。だとすれば、これは本当のことなんだろう。ノアリお気に入りの本の著者が、アンジーの祖父……世間って、狭い……



「アルバラン・モンダン……じゃあ、アンジーって、アンジー・モンダンなの?」


「いえ、名前は適当につけたものです。わざわざ真名(しんめい)を書くわけにもいきませんし……ですが、その名前は、本は、幼い頃祖父に読み聞かせられたものに違いありません」


「ほ、ほぉ、なるほど」


「その本の中身すべてが本当とは言えませんが、祖父は嘘が嫌いでした。物書きだった祖父は、物語には嘘も混ぜた方が面白いと言っていましたが、そのすべてが嘘であるとは考えられません」



「! この話も、病を治す方法が本当にあるかもしれないってこと?」



 はい、とアンジーはうなずく。この本の著者がアンジーの祖父だとかいろいろと驚きはあるが、それは一旦置いておこう。


 この本の内容、そのすべてがでたらめではない。可能性は、やはり残っている!



「でも……なんで、アンジーのおじいちゃんが書いたものが王都に? エルフ、なんだよね」


「エルフ族は長命の生き物、ゆえに祖父は、日々退屈を感じていたようです。そこで思い立ったのです、昔の武勇伝を本にしようと。そして、こっそり人間社会に紛れ込ませてもバレないだろうと」


「そんなもんか」


「そんなもんです」



 アンジーのおじいちゃんが本を出した経緯はともかくとして……昔の武勇伝か。これは本当に、期待が持てるのではないか?


 『竜王』の存在、病を治す方法……どちらでもいい。存在するなら……



「その本に信憑性の一端があるとして……北の北、どこともわからぬ果てを目指すより、祖父に話を聞くのがまずは一番かと」


「……ん? それって……」


「エルフの森……そこを、目指す方がよろしいかと。私も、その旅に同行します」



 ……アンジーの予想だにしない申し出に、俺はしばらくの間、固まってしまっていた。

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