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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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笑い合える未来へ



「ねえ、ノアリさん」


「なんでしょう、アンジェさん」



 騎士学園内の侵入者、3人の少女が走る。


 といっても、音を立てずに忍び足で。それでも、急ぎ足で。先頭は、ヤネッサだ。


 そんな中で、アンジェリーナが声を押し殺して、ノアリに話しかける。



「この結界は、あのセイメイというエルフが張ったもの。セイメイとかかわりを持たない者は弾かれる……そうでしたよね」


「えぇ」



 先ほどセイメイと対面したことで、確信を得た情報だ。


 そのおかげで、自分たちは今、こうして行動することが出来ている。


 できればもう二度と会いたくない相手だったが、まさかこのような形でかかわることになるとは。



「でしたら、元々この学園の中にいた教員も、弾き出されている……というのは、考えられませんか?」


「うぅん……」



 物陰に身を潜め、周囲を警戒しながら、会話を続ける。


 セイメイの口からそういった核心的なことは聞けなかったが、アンジェリーナの疑問は充分に考えられることだ。


 人払いの結界。関係のない人間を結界の中に入らせないようにする。だけでなく、結界内にいる人間をも結果以外に弾き出す。


 キャーシュが、その例であったように。



「それも、考えられますが……あいつに、もっと聞いておくんだった」



 あまり話したくない存在であるとはいえ、この結界を張った張本人だ。聞くべきことは山ほどあった。


 あのとき、まさかセイメイがいるなんて思わず、衝撃に潰されてしまった自分の落ち度だ。



「ヤネッサ、誰かいる気配は?」


「うーん……こっちからは、誰のにおいもしないかな」



 これまで、学園内で人には会っていない。それはもちろん、いいことだ……なのだが……


 それが、結界によりほとんどの人間が結界外に弾き出されてしまったのか。それとも、ヤネッサの道案内のおかげなのか、判断がつかないのだ。


 ただ、ヤネッサ曰く結界の中では、鼻の効きが悪いらしい。



「まあ、普通に考えたら、結界の効果は効いていると思いますけど……」


「だったら、どうしてクロード先生は、結界の中にいたんでしょう」


「それは……セイメイが捕らえられていたときに、クロード先生が面会に来ていた、とか?」


「なるほど、それならあのおっさんと関わったことになるから、結界の中に居ても不思議じゃないね!」


「おっさん……こほん。ただ、そう考えるなら、面会に来た教員はかかわりを持ったことになりますから……」


「あ……そっかぁ。じゃあ、結局結界の効果が効いても、何人残ってるかわからないのか」



 うんうんと唸るが、結論は出ない。まあ、考えていても仕方のないことだ。


 こうして、今のところは誰にも遭遇していない。このまま進められれば、一番だ。



「ごめんねヤネッサ、頼りきりになっちゃって」


「ううん、どうってことないよ! 頼ってくれて嬉しい!」



 彼女には、ヤネッサには頼りきりだ。それを、申し訳なく思ってしまう。ヤネッサ本人は、気にした様子はないが。


 思えばノアリは、ヤネッサに助けられてばかりだ。まだ幼かった、あの『呪病』事件……あのときだって、ヤークワードとアンジーと共に、危険な旅に同行してくれたという。


 それに……『魔導書』事件のときは、手の届く距離にいたにも関わらず、彼女の右腕が斬られるのを、許してしまった。あのときの悔しさは、時間が経っても忘れることは出来ない。


 ヤネッサには特殊な能力がある。それに、頼りきりで……ヤークワードと同じくらい、恩がある彼女に、なにも、返せていない。


 それを、果たして友達と呼べるのだろか……



「ノアリー?」


「む……ふぁにを……」



 ふと、声をかけられ……直後、頬を引っ張られる。両側に、びよーんと。


 それをやっているのは、今話しかけてきたヤネッサだ。



「なんだか、難しいこと考えてる顔してる。リラックスリラーックス」


「うにゅ……」


「わ、やわらかーい」



 リラックスと言いながら、右へ左へとヤネッサは、頬を伸ばし、遊ぶ。そんなことをされるもんだから、満足に喋れない。


 手をバタバタやって、ようやく、ヤネッサは手を離してくれた。



「も、もう……頬が赤くなっちゃったらどうするのよ」


「あはは、ごめんねー。でも、赤くてもかわいいよ」


「赤いの!?」



 けらけらと笑うヤネッサは、しかしやわらかな表情で……



「大丈夫、きっとヤークは無事だから」


「!」



 ノアリが、ヤークワードのことを考えているのだと思い、安心させるように言葉をかけた。


 そこでノアリは、ハッとする。自分は、なにを考えているのだ……今は、なにをおいてもヤークワードを助けることを考えないと。


 それに、ノアリだってヤークワードのことが、心配なはずなのに。



「うん……ごめん、少しぼーっとしてた」


「いひひ、いい顔になった」



 自分と同じくらいの年に見えて、きっと自分よりもずっと長生きの……少女のような笑顔に、ノアリはほっと一息。こんな状況で……いや、こんな状況だからこそ、気を張り過ぎないようにリラックスさせて、くれるのだ。


 ノアリは、今一度気を引き締める。まずは、ヤークワードの救出……目的を見失っては、いけない。



「さ、今のうちに。ヤネッサさん、こちらは?」


「うん、誰もいない。けど、慎重に」



 ヤネッサの案内に、アンジェリーナが、そしてノアリが続く。


 この救出劇が終わったら、まずヤークワードに心配をかけたことを誤ってもらおう。それから、お疲れ会とこれまでのお礼も兼ねて、ヤネッサにとびきり甘いものをごちそうしよう。


 ヤネッサがこの国に暮らし始めて、時間は経つが……まだ言ったことのない所も、あるはずだ。


 この一件が終われば、自分たちの扱いはどうなるか、わからない。それでも、おいしいものを、食べに行こう。


 みんなで、笑って過ごせる、未来を掴むために。その足を、一歩踏み出した。






「…………あれ?」



 がくんと、膝が曲がる。どうしたのだろう……力が、入らない。


 ノアリは、そっと、自然と……胸元に、手を当てた。



「あ……」



 手のひらには……生温かく、血がべっとりと、

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