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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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結界の外



 ノアリ、ヤネッサとアンジェリーナ。ミライヤとリエナ……それぞれが、それぞれのやるべきことのために、動きを再開した頃……



「ど、どうなってるの……?」


「これは……」



 先ほどまで、共に足を揃えて走っていたはずのミライヤ。彼女の姿が、こつ然と消えたのだ。


 その、謎の現象にミーロもロイも、混乱を露にする。


 しかし……その中で、アンジーだけが冷静だった。



「これは……結界?」



 手を、正面に伸ばす。その先には、なにもない……なにも、掴むことはない。


 だが、感じるこの気配は。魔力……おそらくは、人払いの系統だろう。



「結界? アンジー、本当?」


「えぇ」



 アンジーの言葉を聞きつけたミーロが、問う。それにアンジーは、小さくうなずいた。


 エルフ族であれば、その場に残る魔力の気配を感じることができる。人によっては鈍感な者もいるが、アンジーはその類いではない。


 さて、なぜここに人払いの結界があるのか。問題はそこだ。魔力の結界がある以上、そこにはエルフ族かそれとも魔族が関わっていると考えるのが自然。


 ならば、学園内のエルフ族の仕業だろうか。ノアリの話では、学園にもエルフ族の教師はいるらしいし……



「いや……」



 もしそうならば、初めから結界を張っていればいい。その方が、合理的だ。


 そもそも、これは単なる人払いの結界とは違う。単純な結界ならば、対象が自然と人に認識されなくなる。


 だが、これは違う。認識されなくなるのもそうだが、自分たちが弾き出された。それも、人族エルフ族関係なしに。



「こんな結界、いったい誰が……」



 そんじょそこらのエルフでは、このような結界は張れないだろう。いったい、何者の仕業か。


 結界の外側に、自分たちは弾き出された……つまり、この場にいないノアリは、結界の内側に残された、ということだ。



「どうしましょう、アンジーさん」



 今後の動きを、ロイは聞く。結界のことを唯一わかったアンジーに、方針を委ねようというのだ。


 もしも圧倒的な力があれば、結界を破ることは可能だ。だが、そうなると……結界の内側でなにが起こっているかわからないのに、結界を壊せば、周囲の人間にも被害が及ぶ。


 それに、このような高度な結界を、自分の力で壊せるとは、思えない。



「結界の中には、おそらくもう入れません」


「そんな……じゃあ……」


「かといって、このまま帰るわけにももちろんいかない。……正門に行きましょう。まずはキャーシュ様、ノアリ様、ヤネッサと合流して……」



 結界を壊すことはできないし、中に入ることもできないだろう。かといって、このままおめおめと帰るわけにもいかない。


 この結界が学園全体を覆っているものならば、正門も同じことになっているはず。


 二手に分かれた、もう一組。キャーシュ、ノアリ、ヤネッサと合流し、それからこの先どうするかを考えて……



「おーい……!」


「ん?」



 ふと、声が聞こえた。聞き馴染んだ……というより、先ほどまで聞いていたはずの声。


 全員が、同じ方向に顔を向ける。どうやら聞き間違いではなかったらしい。


 声の主は、こちらに向かって走ってきていた……



「キャーシュ!?」


「キャーシュ様?」



 そこにいたのは、たった今合流しようと考えていた人物……キャーシュだ。ただ、考えていたのは3人で、今走ってきているのはひとり。


 同じチームにいたはずの、ノアリとヤネッサの姿が見当たらない。まさか彼に限って、2人を置いて来たわけでもあるまい。それに、それほど2人より足が速いとも考えにくい。


 つまり……



「もしかして、キャーシュ様も……」


「はぁ、はぁ、母様、それにアンジーもロイ先生も、いる……じ、実は……」



 よほど急いでいたのだろう、止まるや膝に手を付き、ぜぇぜぇと呼吸している。


 まずは落ち着いてと、ミーロがキャーシュの背中を擦り……状況を、整理した。



「ノアリ様と、ヤネッサが……」


「うん、突然消えちゃって……そっちは、ミライヤさんが?」


「えぇ」



 実に半数近くが、消えた……否、結界の内側に取り残された。この3人には、なにか共通点があるのだろうか。


 騎士学園の生徒……ヤネッサは違う。女性……ならばアンジーとミーロが弾かれた理由がわからない。


 考えても、答えは出ない。ただひとつ、わかることがあるとすれば……



「あの子たちに、任せるしかない、ということでしょうか」


「そんな……」



 今なにかできるのは、結界の中にいるあの子たちだけだ。


 情けない話だが……任せるしか、ない。無論、ただ指を加えて見ているわけにもいかないが。



「あの子たちがヤーク様を奪い返してきたとき、逃げ道を確保するのも重要です」


「確かに……それに、どこに逃げ込むかもだよね」



 アンジーの言葉に、キャーシュがうなずく。逃走経路は元より、逃げ込む場所もだ。


 学園に潜入する前に、いくつか候補を絞ってはいたが……ここで、決めてしまおう。



「私は、結界を解く方法がないか、調べます」


「任せました」



 結界のことは、エルフ族のアンジーに一任。もしかしたら、どこかに抜け穴があるかもしれない。


 今も、結界の中で頑張っているあの子たちに報いるためにも……手をこまねいているわけには、いかないのだ。

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