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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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その思惑は



 ノアリたちと同じ目的を持つという、シン・セイメイ。ノアリたちの目的はもちろん、ヤークワード救出。


 それと、目的が同じだというのなら……味方ではないにしろ、互いに協力は、できるはずだ。


 だが、素直に受け入れられない……セイメイが、ヤークワードを救出しようとしている、理由がわからない。



「なんで、ヤークを……」



 気づけばノアリの口からは、自然と疑問が漏れていた。それも、当然のことだろう。


 ヤークワードは、セイメイに深手を負わせたひとり……その隙をついて、リーダが魔力封じの道具でセイメイを封じたのだ。


 恨みこそあれど、助ける理由などないはず。なのに……



「カカッ、ノーコメントじゃ」



 セイメイは、愉快げに笑うだけで、ノアリの質問には答えてくれない。


 目的は同じだというが、理由がわからないのでは、信用していいのかどうか……



「なるほど……つまり、命王は単独で彼を、助けに来たと?」


「ま、そういうことになるの」


「学園内の爆発も、貴方の仕業?」


「全て答えてやる義理はないぞ?」



 セイメイとクロードの間に流れる空気は、穏やかなようで、一触即発だ。


 ヤークワードを助けに来たというセイメイ、ヤークワードを捕らえている場所を守っているクロード……その立場の違いが、この空気の原因だ。



「先生……ヤークを、返して!」



 そんな状況であっても、ノアリは、叫ぶ。先ほどと、同じ言葉を。


 彼は、教師だ。生徒にはとても優しかった。こうして頼み込めば、きっと返してくれる……そんな気持ちが、あったのかもしれない。


 だが……



「……申し訳ありませんが、それは無理です」



 バッサリと、切り捨てられた。


 その表情は、なにを思っているのか……読み取れない。アンジェリーナも、同じように言ってくれているが、聞く耳を持たない。


 どうして……ノアリは、歯を食いしばる。



「なんで……なんで、ですか! どうして、ヤークが……」


「放送を聞いていなかったのですか? 彼は、『勇者』を……自分の父親を、手にかけた。だから、拘束した。それだけの……」


「本当に、ヤークがやったんですか!?」


「……そう、だとして、あなたたちは素直に帰るのですか?」



 本当に、ヤークワードがガラドを殺したのか……その問いかけに、クロードが返す言葉はひどく冷たい。


 とても、これまで接していた、温かな声を出していた人と同じとは、思えない。



「それ、は……」


「カカッ、無用な問答じゃ」



 しかし、そのやり取りをあっさりと切り捨てるのは、ヤークワードを助けに来たというエルフ族の王。



「儂は、ただあの混じりの小僧をここから連れ出す。それだけのこと」


「……!」



 セイメイの言葉に、ノアリは弾かれたように顔を上げた。もちろん、ノアリだってなにがあっても、ヤークワードを助けるつもりだ。


 だが、敵か味方かもわからないこの男が、こうも堂々宣言するとは、思わなかった。



「あんた、本当に……」


「どうやら貴方には、情に訴えかけるなどといったやり方は通用しないようですね」



 もはや、クロードにとってこの場に集まった者が、どのような思惑を秘めているのか関係ない。


 ただ、ヤークワード・フォン・ライオスを助けに来た。それだけのこと。


 もっとも、3人の少女とエルフの王とでは、目的こそ同じであってもその先に見ている景色は、違うようだが。



「……主、名をなんと言う?」


「クロード、と」


「ふむ、そうか……クロード、主が……」



 リーダ・フラ・ゲルドに魔力封じの道具を持たせた人物か……と、セイメイは口の中で小さく呟いた。この自分の魔力を封じる道具を作るなど、大した男だ。


 この人物の人柄は知らない。だが、リーダに道具を持たせたり、同じ学園に所属している以上に彼と繋がりがあるのは、明白だ。


 そして……このシン・セイメイを、囚われの状態から解放したのも、リーダ・フラ・ゲルド。


 互いの背後に、同じ男がいる。その上で、片やヤークワードを奪い返されまいとする立場におり、片やヤークワードを奪い返しに来た。



「やれやれ、なんとも……複雑に絡みよるわ」



 この場で口に出すことはしないが、セイメイがこの場に現れたのはリーダの頼みによるものだ。


 つまり、リーダと関係を持つクロードはヤークワードを捕らえ、リーダと関係を持つセイメイはヤークワードを助けに来た。


 同じ人物と関わりを持つ自分たちが、正反対のことをしている。



「あやつめ、腹になにを抱えておるのか……」


「さっきから、なにをぶつぶつと……」


「いや、こっちの話じゃ」



 クロードは、セイメイとリーダに繋がりがあることは、知らないだろう。自分と、敵対する相手が同じ相手と協力していると知れば、あの男はどんな顔をするだろう。


 こほん、と、セイメイは咳払いをひとつ。



「さて……本来ならば儂だけで事を為すつもりじゃったが。せっかく人数がいるのじゃ、娘ら、主らは混じりの小僧を助けに行くが良い」


「え……」


「まああれじゃ、ここは儂に任せて先に行け、というやつじゃな」



 意気揚々と、セイメイは言い放つ。まさか、セイメイ本人からそのようなことを言われるとは、思っていなかった。


 ノアリは、ヤネッサは、アンジェリーナは。不安げな表情を浮かべ、互いを見つめる。


 ちなみに、不安というのは、セイメイの身を案じて、ということでは断じてない。



「……いいの?」


「おう」



 その理由はともかく、この男はヤークワードを助けに来た、のだ。なのに、自分はクロードの足止めに徹し、ノアリたちを行かせてくれるという。


 重要なのは、自分がヤークワードを助けることではなく、あくまでヤークワードが助け出されること……というわけだ。

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