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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第8章 奪還の戦い

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いざ潜入へ



 ……突如として鳴り響いた、爆音。そして、建物の一部から火の手が、上がる。


 誰もが、その光景に目を奪われていた。心臓に響くような、音が響いたのだ。無理もない。


 …………まずい。



「みんな、注目しちゃってる……」



 この状況は、まずい。ノアリは、小さく舌打ち。


 これから騎士学園に潜入しようというのだ。人目を掻い潜らなければいけない。なのに、人目が集めってしまっているという事態。


 なにが起きたのだ。砲弾でも撃ち込まれたか、それとも部屋の内部で料理でも大失敗したか。


 ともあれ、ただ事ではないことだけは、確かだ。



「ど、ど、どうしたんでしょう!?」


「落ち着きなさいミライヤ」



 わかりやすく、うろたえる少女を見て、ノアリは一呼吸。自分よりも取り乱した人間がいると、返って自分は冷静になるものだ。


 このタイミング、ヤークワードが囚われている場所で謎の爆発……偶然とは、思えない。



「逆に、チャンスかもしれないわ」


「え?」



 そうだ、発想を変えよう。


 人々の目が集まった、のではなく……



「これで、中の人間は爆発の原因究明のために、警備が手薄になるはずよ」


「なるほど」


「それに、爆発に驚き、逃げ出している人たちもいます。彼らに混ざれば……」



 ノアリの言葉を、アンジーが引き継ぐ。


 謎の爆発、その原因を突き止めるため、内部では騒ぎが起こっているはずだ。それに、爆発に興味見たさに群がってくる野次馬の処理。


 野次馬と、そして逃げ出している人々。これらに混じって移動すれば、バレる可能性は格段に低くなるはずだ。



「なら、急いだほうがいい」


「はい。後は……」



 ロイの言葉にうなずくノアリは、先ほど爆音にかき消されてしまった、キャーシュへの質問をし直すべく……彼に、向き直る。


 しかし、なにを言われるかわかっているのか……キャーシュに、迷った様子はない。



「僕も、行きます」


「……」


「僕になにができるかは、わかりません。でも……兄様は、世界でただひとりの、兄様ですから」



 戦力的な意味で考えるなら、キャーシュは外したほうがいい。キャーシュは頭がいいとはいえ、騎士学園という場所は彼にとって、地の利はない。


 それでも……キャーシュの、覚悟は本物だ。できることがないからと、投げ出すことは、できなかった。



「……わかった」


「キャーシュ、いいのね?」


「はい」



 自ら危険な地に飛び込む息子に、母は思うところがないわけではない。


 だが、彼女は待つつらさを知っている。勇者パーティーにいたとはいえ、そのほとんどが後衛……戦闘能力など、ないに等しかった。


 戦えない悔しさも、待つつらさも知っている。それでも、引けない戦いがあることを、彼女は知っていた。



「うん、じゃあ行こう」



 キャーシュ自身、自分が戦力になれないのはわかっている。なればこそ、彼には頭脳面で頼らせてもらうことにしよう。


 分けるチームは、先ほどと同じ。正門からノアリ、ヤネッサ、キャーシュ。裏門からアンジー、ロイ、ミライヤ、ミーロ。



「……いいのですか、ノアリ。私たちが裏門からで」


「えぇ」



 ロイの疑念に、ノアリは首を縦に振ることで応える。



「あくまで、私たちはヤークを取り返すことが目的。どっちから潜入したほうが安全かなんて、わかりませんが……それでも、裏からの方が確実性は高い」


「……つまり、本命は私たちだと?」


「そう。でも、危険を感じたら逃げる。誰かが犠牲になって、なんてヤークは望まないもの。……逃げるのも、ヤネッサがいれば、それもやりやすい」



 ノアリは、本当は自分の手でヤークワードを助けてやりたい。


 でも、ヤークワードを助ける確実性の高い方法は……今、ここにある。



「ヤネッサの鼻、キャーシュの頭脳、私の竜の力……今、中では騒ぎが起きてるだろうけど、それをさらに撹乱させるにはうってつけだわ」



 とはいえ、積極的に中で暴れてやるわけではない。あくまで、潜入がバレた場合にだ。


 隠密は、アンジーたちの方が向いているだろう。そういった意味でも、ノアリはこっち側だ。



「……ノアリ様、こっそり潜入するつもり、あります?」


「あ、あるわよ失礼ね!」



 ノアリの案に、ミライヤが突っ込む。どうも、こっそりと暴れてやろうの比率がおかしな気がする。


 ともあれ、時間がないだけに計画に穴があるのも、仕方ないとも言える。今更、あーだこーだと決めている時間などないのだ。


 謎の爆発、それにより周囲の騒ぎが大きくなってしまう前に、潜入する。



「では、お気をつけて」


「お互いにね!」



 言って、ノアリチームとミライヤチームはわかれる。


 ノアリチームは正面から。まだ距離はあるとはいえ、走ればすぐの距離にある。このまま突っ切って、敷地内に入ってしまうか。


 この場所に立つと、あの魔族と戦ったことをノアリは思い出すが……



「ふぅ……行くわよ!」



 一呼吸して、意識を切り替える。今はヤークワードを奪い返すことに、全集中。


 そう思い、歩みを進めた時だった……



「……あれ?」


「どうしたの、ヤネッサ」


「人が……いない」



 唐突に、足を止めたヤネッサ。彼女の言葉に、ノアリは周囲を見回すと……


 ……あれほど騒がしく、行き来していた人たちが……忽然と、姿を消していた。


 それだけではない。



「き、キャーシュ……?」



 3人で、並んで歩いていた……しかし、そこにキャーシュの姿が、なかった。


 どこを見回しても、人々と共に、彼の姿も消えてしまっている。



「なに、これ……」


「この気配……魔力?」



 ぼそっと、ヤネッサが呟いた。魔力の気配……と。


 景色は、なにも変わっていない。暗くなりつつある空、立派に建つ騎士学園、見慣れた建物……その中に、人の姿だけが、ない。


 ノアリとヤネッサの姿だけを、残して。

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