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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第7章 人魔戦争

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伝えておくべき話



「魔力封じの結界が切れているのなら、この状況も時期に解消されるということだな」



 ヤネッサの言葉を受けて、貴族のひとりが嬉しそうに話す。


 俺たち人間には、結界の有無を確認することは出来ない。だから、ヤネッサの言葉を信じるしかない。


 もちろん俺は、ヤネッサが嘘を言っているとは思っていない。だが、誰もヤネッサの言葉を疑っていない……あの、エルフを軽視しているおっさんでさえだ。


 ……やはり、こんなひっ迫した状況が続いている今、少しでもいい報告に酔っていたいのだろうか。



「ヤネッサさん、いろいろと聞きたいこともあります。お付き合い願えますか?」


「あ、うん……じゃなくて、はい」



 リーダ様は、ヤネッサにさらなる話を聞くようだ。今自由に動けるエルフ族はヤネッサだけ、そりゃ聞きたいこともあるよな。


 俺は、どうしようか……ヤネッサについておくか、それともノアリを捜しに行くか。



「……ん?」



 自分の行動を決めかねていたところで……ふと視界の端に、動くものがあった。


 クルドが、部屋を出ていく姿。みんな、自分のことに集中していて、気がついていないようだ。



「ミライヤ、ここは任せた」


「え……えぇ……!?」



 ミライヤを部屋に残し、俺はクルドを追いかける。ミライヤの、ひとり残して行くなんてあんまりだ、といった声が聞こえたが……すまん。


 廊下に出て、曲がり角を曲がる。すると、クルドはそこに立っていた。


 まるで、俺が来るのをわかっていたように。俺を待ち構えていたかのように。



「クルド? どうかした……」


「少し、2人で話せるか?」


「?」



 意味深なクルドの言葉……それに視線を受け、俺は頷く。2人で、なんて……あの場では、話しにくいということか。


 俺たちは、屋上に向かう。ほとんどの人間は学園内にこもっている……屋外には、人っ子ひとりの姿もなかった。



「それでクルド、話って……」


「我は、そろそろ村に戻ろうと思う」


「え……」



 俺がなにを言うよりも先に、クルドは切り出す。それは、予想もしていなかったもの。


 その衝撃に、俺は言葉に詰まってしまう。



「あの魔族は消えた。ここからは、お前たちで解決すべきことだ」


「……そう、だな。いや、こうして手助けに来てくれたこと自体、ありがたいことなんだもんな」



 本当なら、あの魔族との関係だって、俺たちだけで解決しなければならなかった。それを、助けてくれたのはクルドだ。本来、竜族にはまったく関係のないことなのに。


 これ以上クルドに頼るのは、お門違いってもんだ。



「クルド、改めてありがとう。クルドがいてくれなかったら、きっと俺たちは、今ここに生きていない」



 それどころか、暴走したノアリを止めることもできなかっただろう。『呪病』事件の件といい、クルドには、頭が上がらない。


 いつか恩返しをしたいが、クルドに俺なんかの力は役立たないだろうな。



「礼はいい、我がやりたくてやったことだ。それより……」



 クルドは、俺をしっかりと見つめ……



「話しておかなければならないことがある」


「? なにを……」


「あの魔族の言葉だ。お前が学園に戻った後、の言葉。ただの戯言……と聞き逃すには、そうもいかん内容だったのでな」



 いやに神妙な顔だな、クルド……というか、あの魔族、まだ生きていたのか。


 クルドがここにいるってことは、その死を確認したんだろうが……魔族の言葉が、気になるって?



「それは、2人にならないと話せないと……?」


「……これを聞いた後どうするかは、お前の自由だ」



 てことは、俺に関するなにか、か。それを真っ先に俺に話してくれるのは、ありがたい。


 そしてクルドは、話し始める……魔族の、最期の言葉を。


 この国を襲った真相……そして、エルフの森であるルオールの森林を、たくさんのエルフ族を、燃やした理由を。



「…………は?」



 それを聞いた俺の頭は、真っ白だった……なにも、考えられなかった。うまく、その内容を纏められない。


 だって、意味が、わからないから……



「俺を……怒らせる、ため?」


「奴は、そう言っていた」



 クルドの言葉に嘘はない。ならば、その内容は真実で……でも、意味は全然わからなくて。


 俺を、怒らせる? そのためだけに、この国を襲って……たくさんの人に、迷惑をかけたのか?


 俺を、怒らせる? そのためだけに、ルオールの森林を燃やして、数多くのエルフを、殺したのか?



「……このこと、ヤネッサには……」


「言っていない」



 そうか、ヤネッサは知らない……か。俺に身に覚えがないとはいえ、俺のせいでルオールの森林が燃やされたと知ったら、ヤネッサは、アンジーは……



「伝えるべきか迷ったのだがな。やはりお前には、伝えるべきと判断した」


「……あぁ、ありがとう、クルド」



 混乱、しないはずがない。魔族の目的が、これでまた、わからなくなった。


 俺が、なんだっていうんだ。俺が……



「奴はこうも、言っていた。すべてはひとつに繋がっている、と」


「ひとつに……」



 ゲルド王国を襲い、ルオールの森林を燃やし、人々を傷つけ、俺を怒らせ……それが、ひとつの目的に繋がっているだと?


 奴の目的は世界征服だろう? それと俺と、どう関係が……



「それと、ヤーク……気づいているか?」


「なにを……?」


「……今お前の体には、魔力が帯びている」


「……魔力?」



 クルドは、俺の体を見る。言われても、自覚なんてない……この体が魔力を、帯びている?


 魔力は、エルフ族を魔族だけが体内に持っているものだろう? それを、なんで俺が。


 ……だが、どこか納得できるものもあった。セイメイに、魔族に、なぜ俺が致命傷を与えられたのか。竜族(ノアリ)とも鬼族(ミライヤ)とも違う、俺が……致命傷を、与えられたのは……



「魔力が、あったから……?」


「怒りにより己の中に眠る力を呼び覚ました……あの魔族の言葉が正しいとするなら……」


「眠る力が……魔力……」



 まったく、実感が湧かない。魔力なんて、感じようと思っても感じられるものでは……



「でも、ヤネッサは俺に魔力があるなんて、言わなかったぞ?」


「故郷や仲間を殺されたんだ、混乱していてもおかしくはない。そうでなくても、あの場で迂闊なことは言わんだろう」


「それも、そうか……」



 けれど……それって、落ち着いたらヤネッサやアンジーにも、俺に魔力があるとわかるってことだよな。他の、人間族は誤魔化せるにしても、魔力を感じ取れるエルフ族は誤魔化せない。


 ……そういえば、エーネは俺の中に魔法の痕跡を感じると言っていた。当時は転生魔術のことだと考えていたが、もしかしたら……


 それに、クルドは俺の中にもうひとつ生命体があるようだとも、初めて会った時に言っていた。


 それも、関係があるのか?

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