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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第7章 人魔戦争

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問題は山積み



「見えた……!」



 走る俺の視界の先には、大きな学園の姿。騎士学園だ。


 走っている間、町中は静かなものだった。昨日、魔族たちに破壊された箇所は多い。それが、直すこともなくそのままになっている。仕方のないこととはいえ。


 人々の多くは、騎士学園に避難している。なので、人気がないのも納得だ。避難しているほとんどが、騎士学園に集結している。


 ……一箇所に固まっているからこそ、影魔族が現れた場合……集団で襲いかかられ、とても厄介なことになる。それを考えないわけじゃなかった、だがこんなに早く、襲撃があるとは……!



「みんなは、無事か……!?」



 逸る気持ちを抑える術も知らず、俺は学園の正面門を通る。


 そこに広がっていたのは……



「……!」



 ……多くの、怪我人。力なく地面に横たわっている者、手当てに駆け走る者、あれだこれだと怒号を交わらせる者……


 これだけでも、かなりの被害があったことをうかがわせる。



「や、ヤーク様!」



 ゆっくりと足を進める俺の、名前を呼ぶ声。聞き馴染んだこの声は、正面から聞こえてきた。


 視線を凝らすと、そこにはこっちに向かって走ってくる、ミライヤの姿。よく俺を見つけられたものだ。



「ミラ……うおぉ!?」



 とにかく、無事で良かった……それを伝えようとしたが、その前にミライヤが俺に抱きつくように、飛び込んでくる。油断していたが、なんとか倒れないように踏ん張る。


 おいおいどうしたんだいったい。そんないきなり飛び込んできて……



「……ミライヤ?」



 俺に、しがみつくようなミライヤは……震えていた。それだけでも、なにかあったと察するには充分だ。


 見たところ、ミライヤに外傷は見当たらない。今、怪我人を除けば変わったところはない……が、十中八九影魔族がみんなを襲っていたはずだ。


 それが怖かったのか? それとも……



「なにか、あったのか?」



 できるだけ、ミライヤに優しく聞く。なにかあったのは間違いない……ミライヤが自分のこと以外で気にすると言えば、ノアリやリィになにかあったのか?


 ミライヤは、自身を落ち着かせるように深呼吸を繰り返して……小さく、うなずいた。



「ち、ちが、うんです……ヤーク様が、心配、で……」


「俺が、心配?」


「学園に、あの、影の魔族が、現れて……ヤーク様の所にもまた、もしかしたら、魔族が……って、考えたら。わ、私なんかが心配なんて、おこがましいと思っているのですが……」



 ……俺は、素直に驚いていた。ミライヤが気にしていたのは、ノアリでもリィでもない……俺の、ことか。


 そうか……学園に影魔族が出て、それで見回りに外に出ている俺のことを心配してくれたのか。



「俺は大丈夫だよ、クルドもいたしさ」


「……なら、よかったですが」



 それにしても……心配だってだけで、ここまで感情を露わにするとは。嬉しいような、小っ恥ずかしいような。


 ともかく、第一に俺の心配をしたってことは、ノアリやリィは無事と考えてよさそうだな。



「……大変、だったみたいだな」



 周囲を、見回す。避難していた場所がこの現状とは、笑えないな。



「歩きながら、起こったことを話します。ガラド様の所に案内しますね?」


「……あぁ、うん」



 当然のように、ガラドの所に向かうつもりだったと思われてるんだなぁ。それで正解なんだけど。


 俺とミライヤは並んで歩き、学園内へと入る。中でも外と同様に、凄惨な現場が広がっていた。学園内にある薬や治療具だけでは足りないほどに。


 ミライヤから、詳しい話を聞いた。影魔族が現れたこと、抵抗してもほとんどの者は返り討ちにあったこと、死んだ者は今のところいないが重傷者が多いこと……



「ミライヤは、無事だったんだな」


「はい。……この、力のおかげです」



 そっと、胸元に手を当てるミライヤ。この力とは……ミライヤの中に眠る、鬼族の力のことだろう。


 セイメイと戦ったときに、覚醒した力。もっとも、俺はその時見ていないわけだが……目の前の状況にいっぱいいっぱいで、ミライヤとノアリの力のことなど注目する余裕がなかったし。


 鬼族の力というやつは、影魔族に溢れた状況をも切り崩す、とてつもない力のようだ。



「ミライヤの戦いぶり、見てみたかったな」


「わ、私だって必死で、なにがなんだか……でも、やっぱり相手の数が多くて。囲まれてしまって、もうおしまいだって思ったとき……突然、影の魔族が消えたんです」



 ……突然消えた、か。おそらくそのタイミングだったのだろう、俺があの魔族の首を斬り落としたのは。


 結果として、あの魔族が生み出した影魔族は消え、学園から危機は去った……ということか。



「そっか……」


「あの、ところで……クルドさんは?」


「あぁ、クルドは、ヤネッサを見てくれてる」


「え、ヤネッサさん、見つかったんですか!?」


「……まあ、後でまとめて話すけど。とりあえず、ヤネッサは生きてるよ……今動けない状況にあるから、クルドに側についてもらってるんだ」



 魔族は消え、危機は去った……そのはずだが、まだ問題が解決したわけではない。むしろ山積みだ。


 怪我人の手当て、町の復興、エルフの森の現状の確認……まだまだ、問題点は多い。結局、魔族の目的も……いや、死んだのだからもう関係ないか。


 ……死んだのなら、魔族が張った結界は、もう解けている、はずだよな。今、どうなってるんだ……しまったな、魔力を感じ取れるクルドに、聞いておくんだった。


 それに、気絶している人たち……彼らも、起きたのか? 魔族のなんらかの影響で眠らされていたなら、魔族が死ねば起きるはずだが……



「あ、こちらですよ」



 考え事が多い。そんな中で、いつの間にかガラドのいる場所へとついていたらしい。


 とある部屋の一室。その中へ、足を踏み入れる。

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