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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第7章 人魔戦争

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圧倒的な力の差



「クルド……?」



 破壊力を重視するなら、今の竜の姿のままがいいはずだ。だが、戦場となっているのは町中……竜の巨体では、周囲への被害も甚大だ。


 俺は別に周囲への被害は気にしなくてもいいと思う。逃げ遅れた人もいないだろうし。だが、真面目なクルドはそもそも被害自体を良しとしない。


 ならば、周囲への被害を抑えるためにも、機動力を重視して人の姿になるべきだ。その方が、クルドも動きやすいだろう。


 なのに……



「くっ……」


「ふははっ、困りましたねぇ。今のあなたでは、私の速さにはついてこれない。しかし、人の姿になったあなたでは、私の力には太刀打ちできない」


「っ……」



 俺の疑問に答えるかのように、魔族が高らかと笑う。冗談だろ……と言いたくなる内容だが、歯を食いしばるクルドの表情を見ると、冗談とは言えなくなる。


 だが……嘘だろ? 竜の姿では魔族の速さに追いつけない。速さに追いつこうと人の姿になれば、今度は力では敵わなくなる?



「クルドの力でも、あの魔族の方が力が上ってことなのかよ……」



 暴走していたノアリを止めたのは、人の姿の状態のクルドだった。手加減をした状態で、大気が震えるほどのパンチを放っていた……


 それでも、魔族には通用しないっていうのか?



「ぅ……ん……」


「! ヤネッサ!?」



 気を失ったままだったヤネッサが、ゆっくりと目を開ける。傷は塞がっていたが、意識も戻ったようで良かった。


 とはいえ、あんな深手……死んでいてもおかしくない傷を負った直後だ。まだ安静にしておいた方が、いい。


 ヤネッサは、周囲を見回す。その視線の先には、クルドと魔族の姿……



「あれ……クルド……?」


「あぁ、そうだ。クルドが、ヤネッサの出血を止めてくれて……」



 最終的に、ヤネッサの傷は俺から流れ出た魔力……と思われる力で塞がった。だが、それよりも前に傷口からの出血を止めてくれたのは、クルドだ。


 クルドがいなければ、ヤネッサは……そう思うと、震えが止まらない。



「……行って、ヤーク」


「え……けど……」


「私なら、大丈夫、だから……クルドを、助けて、あげて……」



 この状態のヤネッサを、放っておくのは抵抗がある。とはいえ、このままクルドひとりに戦わせているわけにも、いかない。


 意識が戻れば、先ほどより危険はない……だろうか。



「わかった。ここで、休んでてくれ」



 俺はヤネッサを、近くの建物の壁に座らせる。寝転がっているよりは、この体勢の方が楽とのことだ。



「……ヤーク……その、目……」


「へ? ……あぁ、これ……なんだろうな」



 俺の顔へ、手を伸ばすヤネッサ。その言葉が、俺の目がまだ元に戻っていないことを示していた。


 この、まるで燃えているかのような右目。そうなってしまった原因は分からないが、今はさっきまでの、体の中がぐちゃぐちゃになるような感覚はない。


 代わりに、力はまだある、というような感覚は残っている。



「この力がなにか、わからないが……これなら……」



 さっきまで、魔族を押していた。この力であれば、クルドの足を引っ張ってしまうことは、ないはず。


 今のところ、力がみなぎってくる以外に、異変はない。



「ヤーク……」


「大丈夫だ、あいつ倒して、すぐに戻ってくるから」



 まだなにか言いたそうなヤネッサだが、もう喋るのもつらそうだ。


 漆黒の剣に突き刺されたこと以前に、ヤネッサは目の前で故郷を、同胞を、燃やされたんだ……すでに、精神的につらいはず。少しでも、休んでいてほしい。


 俺はヤネッサに背を向け、戦いを続けるクルドに加勢するため、駆け出す。



「クルド……!」



 クルドと魔族の戦い。クルドは竜の姿のままだ……魔族の速度に翻弄されているのか、その体には無数の切り傷が刻まれている。


 いくら、力では魔族に対抗できなくなるとはいえ……今のままでは、その力さえも魔族には当たらない。それに、ただなぶられるだけだ。



「クルド!」


「! ヤーク……」



 駆け飛び、クルドの眼前に迫る魔族の剣を、間一髪防ぐ。相変わらず思い一撃だ……油断したら剣ごと、体を斬られてしまうだろう。



「ふん……ぬ、らぁ!」



 俺は、力任せに魔族を振り払う。よし、なんとかくらいついていける……!


 地面に着地し、魔族を牽制するように剣を構える。



「クルド、無事か!?」



 まさか俺が、クルドにこんなセリフを言う時が来るなんてな。



「あ、あぁ、なんとかな……ヤークこそ、その手は……」


「手? ……動いてる」



 クルドに指摘されて気付いたが、折れていた手が……なんともなかったように、動いている。どうなってるんだ?


 さっきヤネッサが回復したのと、なにか関係があるのだろうか。



「なんか知らないけど、大丈夫みたいだ」


「……そうか。すまんな、我の力では、せいぜいが血を止めることしかできん」



 ……なるほど、だからクルドは、ヤネッサの出血は止められたのに、俺の折れた手は治せなかったわけか。


 思い返してみれば、竜族の村でクルドに打ち合いをしてもらっていた時。俺の治療をしてくれていたのは、いつもアンジーだったな。



「ヤネッサは、とりあえず隠れてもらってる」


「そうか、その方がいいな」



 俺とクルドと、並び立って魔族と対峙する。数の上では、こっちが有利だ。


 それでも、油断できない相手だ。かといって、このままにらみ合いを続けるわけにもいかない。


 なにせ、相手は魔力が使えるのだ……時間を与えれば、それだけこっちが与えたダメージを回復させてしまうだろうから。



「ふぅ……行くぞ!」

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