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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第7章 人魔戦争

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異常な力



 なん、だろう……体の奥から、力がみなぎってくる、感じがする。


 意識は、ちゃんと、はっきりしている……



「なんダカ、わかラないけド……これ、ナラ……!」


「……ふふふ」



 魔族は、意味深に笑っている。余裕の表れか、それとも余裕がないゆえのものか……


 とにかく、この力が……消えてしまわないうちに、さっさと……



「カタを、ツけル!」


「来なさい!」



 俺と魔族の剣とが、ぶつかり合う。ガギンッ……と、激しい音を立てて。


 不思議だ、もちろん全力のつもりだが……先ほどよりも、楽に押し返せる。渾身の力を入れようと踏ん張っていたのが、嘘のように。


 それに……体の、動きも……



「おぉおおお!」



 体が、軽い……? あの魔族が、俺の剣撃を捌くので精一杯じゃないか。


 この調子なら……! 刻んでいく切り傷も、魔族にちゃんと通用している。もしかして、俺もノアリやミライヤのように、未知の力にでも目覚めたのだろうか?


 あまり考えたくはないが、『勇者』として力を付けたガラドの息子だから、俺にもそういった力が受け継がれているとか。それとも、『癒しの巫女』であるミーロの方か?


 ……ま、なんでもいいか。これなら……



「お前ヲ……殺シて……!」


「あぁ、いい、いいですね! なるほど……あはははは!」



 だんだんと、魔族の方が押されていく。なのに、魔族は楽し気に笑うばかり。


 とはいえ、俺の攻撃だけが魔族を刻むわけではない。魔族の斬撃も、俺に確かに、掠って傷を与えていく。


 ……その度に、力が増していく。そんな、気がして。



「るぅあぁアあァああ」


「っ……!」



 突き出した剣先が、魔族の胸元に突き刺さる。深く刺さったわけではないが、そのまま押し込み……建物に背中を押し付けて、剣先を押し込んでいく。



「ぬ、ぐ……」


「これデ……!?」



 そして、俺は見た……魔族を追い込んでいる建物、その窓に映った自分自身の姿を。


 窓に映り込んだ、俺の右目は……なぜだか、黒く、燃えるように揺らめいていた。



「なん……これ……」


「ふっ」


「!?」



 自分の身に起こった異変。それに驚いて出来てしまった隙を突かれて、魔族に蹴り飛ばされる。剣を離すことはなかったが、魔族の胸元に突き刺さっていた剣先も抜けてしまった。



「あれでも、まだ、動く力あるのかよ……」


「言ったでしょう。人間とは体の作りが違うと」



 手応えは、確かにあった。なのに……血さえも、流れていないのか。


 魔族でも、傷つけば血は流す。だが、この魔族は確かに切り傷を与えていっても、そこから血は流さない。こちらの攻撃がちゃんと届いているのか、不安になる。



「ちっ……」


「ふむ……今の自分の姿を見て、少し冷静さを取り戻した……と言ったところでしょうか」


「……?」



 構える俺の姿を見て、なにかを考え込むように唸り……そして、言う。分析が完了した、とでも言わんばかりに。


 魔族には、今の俺の状態がどういった状態なのか、わかっているというのか? 片目が燃えているような、この状態を……



「考え事をしていても、いいのですか?」


「!」



 少し、意識を別の方向に傾けた……その隙を見逃さないとでもいうように、魔族の剣が眼前に迫っていた。


 振り下ろされる漆黒を、寸前で横に避けてかわす。少し、反応に遅れた髪の毛が、千切られた……!



「先ほどの勢いは、どうしました……!?」


「っ……」



 迫る漆黒が、俺の視界をギリギリに掠めていく。まずいまずいまずい、さっきとは立場が逆転した!


 しかも、魔族の放つ剣圧が、俺に微かながらダメージを与えていく。下手をしたら、吹き飛ばされてしまいそうだ。



「ぐっ……!」



 ドゴッ……と、腹部に強烈な衝撃が走る。漆黒の、刃ではない部分……平たい部分が、俺の腹部を打ち付けた。


 鈍器のように重たい一撃、たまらず膝を付いてしまう。



「げほっ……!」



 いけない、こんな無防備な姿を晒しては……すぐに、立ち上がって、それから……



「ぁ……」



 動く首を、動かす。顔を上げ、そこには……漆黒の剣を振り上げる、魔族の姿。そこには、ただ殺意があるのみ。


 あ、だめだこれ……死……



 ヒュッ……カンッ!



「っ?」



 振り下ろされた漆黒の刃……それは俺の脳天目掛けて振り下ろされていたが、狙いがブレたかのように、すぐ真横に振り下ろされた。


 地面を、抉る。



「む……今のは」



 俺には、見えた……魔族も、気づいたようだ。俺を狙っていた刃、その刀身に、なにかが衝突し……わずかに軌道がズレたのだ。その結果、俺の脳天を狙っていた剣撃は、横にブレた。


 いったい、なにが……? 視線をずらすと、剣撃をブレさせたそれが、落ちていた。


 ……矢だった。



「これ、は?」



 なぜ、矢がこんなところに? これが、俺を助けてくれたのか。


 方向的に、矢が放たれたのは……あっちか。首を、動かす。


 建物の上に、人の影があった。



「……ヤネッサ!?」



 そこにいたのは……いくら探しても見つけることのできなかった、ヤネッサがいた。矢を構えた状態で……


 ……その目から、涙を流していて。



「え……?」



 涙を流すヤネッサは、2発目の矢を構え……それを、魔族に放つ。しかし、不意をついていないそれは簡単に弾かれてしまう。


 それを見た、ヤネッサは……



「見つけた……魔族……! うぅ、殺す……殺してやる!」



 3発目の矢を取り出し、それを構えるでなく、握りしめて……魔族に対しての憎悪を叫びながら、一気に飛び出してくる。


 助走をつけて飛び出してきたヤネッサ、その手に持った矢の先端を魔族へと突き放ち……魔族は漆黒の剣で、迎え撃った。

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