表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第7章 人魔戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

197/308

朝日昇る頃に



「……んぁ?」



 閉じていた目を、開く……落ちていた意識が、徐々に覚醒していくのを感じる。ここは……教室か。朝日が、差し込んできている。


 そうだった、俺は学園内の一室を休憩場所に選んで……壁を背にした状態で、いつの間にか寝てしまったのだ。


 肩に、重みを感じた。そちらを見ると、そこには無防備な寝顔をさらした、ノアリの顔があった。並んで寝て、もたれかかってきたのか。


 周囲に、人の気配は……ないな。寝る前は、少なからず人はいたはずだが……夜のうちに、どこかに移動したのか。こんな状況で、深くは眠れなかったのか、場所を移したってとこか。



「すぅ……」


「気持ちよさそうに寝ちゃって、まぁ」



 こんな状況でなければ、その寝顔を目に焼き付けた後、起きたノアリをしばらくからかってやるつもりだが……さすがに、この状況でそんな気は起きない。


 せめて、目を覚ますまでおとなしく肩を貸してやろう。そう思っていたところへ……



「ん……ん?」



 規則的な寝息が途切れ、うっすらとノアリの目が開いた。その瞳はぼんやりとしており、正面を虚ろな視線で見つめている。


 寝起きで、頭がぼーっとしているのだろう。



「よぅ、起きたか」


「……」



 呼びかけても、返答はない。そのまま数秒が経ち……ノアリの首が動き、視線が俺を捉えた。


 なんだろう……俺は寝起きのノアリの表情を知っているわけではないが、それでも、その瞳はどこか虚ろげで、俺を見ているようで見ていない……



「っ!?」



 それは、突然のことだった。背中を、打ち付けたような衝撃。いや、実際に打ち付けたのだ。


 背もたれにしていた、壁に……ではない。床にだ。床に……押し倒された。


 誰に……? そんなの、考えるまでもなく……今、俺の上に、いる人物だ。



「ノ、アリ……?」



 そこに、ノアリがいた。俺の両肩を、それぞれの手で掴み、俺を床に押し倒した。それは、強い力ではない……思わぬノアリの行動に、すっかり反応ができなかった。


 ノアリは俺を押し倒したまま、相変わらず虚ろな瞳で俺を見下ろしている。しかも、もぞもぞと動いて……俺の腹の上に、乗っかるように、体を移動させる。



「の、ノアリ、さん……?」


「……」



 その、あまりにも突拍子もない行動に、完全に反応が遅れる。なんとか呼んだ名前にも、反応はない。


 これは、ただ寝ぼけている……だけじゃ……?



「って、おい!?」



 あまり正気とは言えないノアリの姿。その原因を考えていたが、思わず思考が途切れてしまう。目の前の光景が、一変したからだ。


 俺を押し倒した状態のノアリは、あろうことか自らの服に手をかけていた。そして、そのままなんの抵抗もなく、脱ぎ始めた。



「うぉあぁああ!?」



 その、突拍子もないどころの話じゃない光景に、俺は大声で叫びそうになった……が、なんとか声を押し殺す。大声を上げて、それに驚いた誰かが来て、もしこの姿を見られたら……


 それだけは、なんとしても避けなければ! とはいえ、このままというわけにもいかない。


 カッターシャツのボタンを外し、桃色の下着がチラチラと露になる。シャツのボタンをすべて外したところで、再び俺の両肩を掴む。


 しまった、黙って見てないで抵抗していれば……いや、こうして乗られているだけなのに、体が動かせないほどの重量感が襲ってくる。ノアリの体重がこれほど重いはずもないのに!


 そのままノアリは、俺の顔に自らの顔を近づけてくる。改めて見ると、整った顔立ちは大人としての魅力も見て取れる。



「って、そうじゃない! 離れろノアリー!」



 普段ならばともかく、今のノアリは明らかにおかしい。なんとかやめさせようとするが、身も動かせない状態ではたいした抵抗にもならない。


 その、整った顔が眼前に迫り、お互いの鼻先が触れ合った瞬間……



「ななな、なにしてるんですかぁ!?」


「!」



 その場に、悲鳴のような声が響き渡った。ふと、ノアリの動きも止まる。


 同時に、声の方角……教室の入り口へ目を向けると……



「み、ミライヤ……!」



 そこには、ミライヤがいた。助けが来てくれた、という気持ちと、見られた、という気持ちとが交錯する。


 今の状況は、俺がノアリに押し倒されている……しかも、ノアリはシャツのボタンを外した上で、肩まではだけてしまっている。綺麗な金髪は艶めかに光り、なにより俺に迫っていた。


 それだけで、言い訳のしようもない状態だ。



「いや、ミライヤ、これはちが……わない、というか、俺もよくわかっていないと、いうか……!」


「む……おぉ」



 固まるミライヤの後ろから、クルドが顔を覗かせる。クルドにまで見られた!


 驚きに固まるミライヤ、そしてなぜか感心した様子で顎を撫でているクルド。やっぱりこれ勘違いされていないか!?



「ふむ、なるほど……おそらくこれは、竜族の本能が自我を上回って……」


「なにをのんきに解説しているんですか! ノアリ様だめです!」



 クルドはなぜかこの状況に一定の納得を得ているようだ。そんなことより、とりあえずこの状況をどうにかしてほしいんだが!


 ミライヤはミライヤで、顔を真っ赤にしたまま、俺たちに……ノアリに、突っ込んでいく。俺の上からノアリを退かせようと、両手を前に突き出して。


 しかし、俺でもどうしてかノアリを退かせられない。体重云々の話ではなく、まるで岩のようだ。


 そんな状態のノアリを、ミライヤの細腕で弾き飛ばせるはずもなく……



「っ!?」



 ……しかし、その想定とは裏腹に、俺の上から重みがなくなった。それは、ミライヤがノアリを突き飛ばしたからだ……そう、突き飛ばしたのだ。


 どれほどの力で……いや、ミライヤならば本気でどついたところで、今のノアリを弾き飛ばせはしないだろう。だが、現実としてミライヤはノアリを突き飛ばした。


 油断していたのか、それとも予想だにもしていなかったのか……ノアリは弾き飛ばされ、近くの机に衝突して散らかす。



「ノアリ……は、無事みたいだな」



 あの程度なら、ノアリは怪我をしてはいないだろう。


 なんにせよ、助かった……



「ミライヤ、助かっ……」


「不潔です!」


「ぶへーい!?」



 ミライヤに礼を告げようとしたところ、その勢いのままにミライヤに頬を叩かれた。鋭い一撃だった。


 頬が、ヒリヒリ……いやビリビリ?する。俺、なにもしていないのに……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ