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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第7章 人魔戦争

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これからのことを考えて



「戦争……」



 その言葉の意味するものに、俺は喉の奥が渇いていくのを感じた。あまりにも穏やかではない単語だからだ。


 戦いと言うなら、これまでにも経験してきた。それに、勇者パーティーにいた頃は、ある意味魔族との戦争に参加していた当事者でもあった。


 だが……



「人間同士の戦争なんて……そんなこと、本当に?」


「可能性の話だけど、なくはない話だと思うわ」



 ミライヤとノアリも、大きく取り乱さないが動揺は隠しきれていない。


 人同士の争い、とは訳が違う。個人的な、あるいは複数人程度のものではないのだ。


 国という、ひとつの巨大な地が、そこに住まう人たちが、武器を取って戦う。それが、戦争……軽く考えられるものでは、ない。



「じゃあ、一度去った魔族は……他の国に、この国の現状を話していると?」


「ふむ……世界征服に、可能性として戦争の発端を作る、か。狙いが見えんな」


「確認しようがないからな……今は、それを考えても仕方ないだろう」


「魔族に対抗するための戦力、が優先よね」



 魔族が戦争を引き起こそうとしている俺たちの考えは、全部予想に過ぎない。それに意識を取られすぎて、本来警戒すべきことに注意できなくなるのはだめだ。


 なにがどうあれ、魔族は再び攻めてくる。結局は、その対策をするしかないのだ。



「あのぉ、クルドさん」


「む、どうした?」



 そこへ、ゆっくりとミライヤが手を上げる。彼女が呼びかけるのは、クルドだ。



「戦力……ということなら、クルドさんのお仲間のお力、借りられませんか?」


「……竜族を?」



 ミライヤの提案、それはクルドの仲間……すなわち他の竜族にも協力してもらえないかというものだ。


 確かに、竜族が他にもいてくれれば、心強い。クルドと同等に近い実力ならば、願ってもない戦力だ。



「……それは、難しいな」



 しかし、クルドは首を横に振った。



「それは、どうして……?」


「そもそも竜族は、他の種族の争い事には関与しない。基本的にはな」



 竜族の協力を得られないだろうことを話しつつ、クルドは俺へと視線を移す。



「今回は、消滅したはずの魔族、突如として現れた竜族の気配、なにより……そこにヤークの気配もあったからな」


「じゃあ、クルドが来てくれたのは竜族としてってよりは……」


「ヤークの友人として、だな」



 クルドが来てくれたのは、俺のため……か。なんか、そうやって真っ向から言われると照れるな。


 それから、クルドは続ける。



「ヤークやジャネビア、いい人間がいることは皆わかっている。だが、自ら進んで危険を犯そうとする者は、いない」



 ……まあ、クルドが特別、なんだろうな。竜族のみんなとはそれなりに仲良くなったとはいえ、その程度だ。


 そんな程度で、わざわざ駆けつけようとは思わないか。それに、竜族はこの時代にはもう居ないとされていた種族。


 自分たちの存在を明かしたくないのも、あるのだろう。クルドだけならまだ、竜族は一体しか残っていない……といった風に思わせられるだろうし。



「すまんな」


「い、いえそんな! 無茶なことを言ったのは私ですし……」


「クルドが来てくれただけでも心強いんだから、謝る必要なんてないわ」



 他の竜族に救援を頼めないことを謝罪するクルドだが、慌てたようにミライヤが首を振る。それをフォローするように、ノアリも言葉を付け加える。


 クルドが来てくれなかったら、どうなっていたか……暴走したノアリに俺は殺され、そのまま惨劇が起こっていたかもしれない。そう考えれば、クルドが来てくれただけでもありがたい。



「……もう、夜も近い。今後は見張りを交代しつつ、休んだほうがいいだろうな」



 話も一段落したところで、ガラドが言う。気づけば、空はすっかりオレンジ色……少し、黒みがかっている。


 どれほど、魔族と対峙していたのか。どれほど、話し込んでいたのか。いつの間にか外は暗くなりつつあった。同時に、急激に腹が減っているのに気づいた。



「なんか、落ち着いたら腹減ったな」


「もう、ヤークったら……ぁ」



 次の瞬間、きゅうぅ〜……と妙な音がなった。ハッとしたノアリが腹に手を当て、顔を真っ赤にしている。


 わかりやすい。



「ヤークったら……なんだって?」


「う、うるさいうるさい! 仕方ないじゃない! なんかお腹がすごく減ったのよ!」


「無理もないだろう。強大な力に振り回されたんだからな」



 ノアリをフォローするように、クルドは言う。まあ、あれだけの力が発現すれば体力も消耗するか。


 それに、捕まった人たちも、あれからなにも口にしてないだろうしな。



「とにかく、なにか探そう」


「食堂なら、たくさん食べ物があると思います」



 ここは騎士学園、結構広い食堂がある。そこならば、食べ物もあるだろう。


 動ける人たちで食堂に移動し、食材を調達。思ったとおり、たくさん食材があったな。それに、料理をできる人もチラホラと。


 ただ、数の問題がある……と、思われたが、幸か不幸か、大半の人間が眠っていたおかげで、ここにいる人たちの食事問題はかなり楽にはなった。


 もっとも、眠っている人たちはこのまま放置して大丈夫なのか……という心配が、あるが。



「見張りは我がやろう。ヤークたちは休むといい」


「あ、私もやります! そんなに疲れてないですから!」



 クルドとミライヤの好意により、俺とノアリは休憩することに。ガラドは、相変わらず人々を安心させる役目だ。


 任せてばかりなのは気が引けるが……正直、体は限界だ。お言葉に、甘えさせてもらうことにしよう。

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