表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第7章 人魔戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/308

暴走する力



 その場に響く……いや、轟くと表現してもいいほどの、激しい声。胸の奥底まで、届くような重々しい声……


 それを発しているのは、今魔族に背中を突き刺され続けていた、ノアリだ。彼女は、これまでに聞いたことのないような声を、上げている。


 それどころか、およそ人が出せるとは、思えないほどの声で……



「ノア……」


「うぁアァあぁああ!」



 次の瞬間、目を疑うような光景が映った。これまで、ただ無抵抗に魔族の攻撃を受けるしかなかったノアリが……


 魔族の顔面に、拳を打ち付けたのだ。それだけならば、驚きこそすれ目を疑うような光景ではない。ただ、反撃したのだから。


 問題は……俺からも見えるほど、その威力が桁外れだということだ。顔面を捉えた拳は、地面をも陥没させていく。ドシィ……と、地が割れる音が響く。



「っ……」


「ウぁアァあア!」



 その後もノアリは、右の拳で、左の拳で……交互に、拳を打ち付けていく。いつの間にか魔族の腹に跨がり、殴りやすい位置へと移動していた。


 それは、あまりに一方的な……暴力。襲われたのはこっちなのに、なんだか素直に喜べないほどに。



「……っ」



 ガンッ……!



 しかし、魔族もやられてばかりではいなかった。拳の連撃、その隙をつき、魔族は勢いよく上半身を起こし、ノアリの額へと頭突きをぶつける。


 その衝撃にノアリの動きは止まり、さらに魔族はノアリの顔の前に手のひらをかざすと、ノアリが後ろに吹っ飛ぶ。あれは、魔力の衝撃でふっ飛ばしたのか……?



「あ……」



 後ろにふっ飛んだノアリは地面を転がり、うつ伏せに倒れるが、すぐに起き上がる。その顔は、やはりいつものノアリとは別人のように、激しく歪んでいた。


 いつもの、ノアリを知っているのに……思わず、鳥肌が、立ってしまうほど。



「ガァああァアア!」



 なおもノアリは、雄叫びを上げながら魔族へと向かう。魔族は落ち着いた様子で立ち上がり、剣を手にしていた。


 ノアリに殴られた顔は、仮面のような顔はひび割れ、かすかに割れていた。その奥に、なにがあるのか……



「……なにも、ない?」



 しかし、そこにあったのは闇……空洞のような、闇だ。あの、骸骨のような仮面を被っていると思っていた。ならば、その中に本当の顔があるはずだとも。


 だと言うのに、そこにはなにもなく……不気味な、感じがした。



「ハハッ」


「ゥウ!」



 ガンッ!



 ノアリが腕を振るい、魔族は漆黒の剣を振るう。二つがぶつかり、鈍い音を響かせた。


 漆黒の剣、あれはかなりの切れ味のはず……だが、ノアリの腕は斬れていない。先ほども肩から先を落とせないようであったが、まるでノアリの腕は剣と同等の硬さを持っているよう。


 それは、あり得ない光景でもあった。



「いい、いいですよ! これです私が求めていたのは……互いに緊張の張り詰めた命のやり取り! 一歩間違えば死に繋がる、高揚!」


「ガァあ!」



 剣と腕とか、ぶつかり合う。何度も、何度も。金属同士がぶつかり合うような音が響き、その度に火花が散る。


 相変わらず、魔族の表情は読めない。それでも、どこか楽しげにしているというのは、わかった。


 こんな状況で……笑って、いる。



「惜しむらくは、あなた、意識が飛んでいるようだ。まことに残念ですよ」


「!」



 魔族は漆黒の剣、ノアリは両腕が武器のようなものだ。が、魔族は魔力を腕に纏わせることで、それを武器としている。四刀ともいえる武器が交錯する。


 魔族は、ノアリの腹部を蹴り飛ばす。やはり、今のノアリは正気では、ない。


 よたよたとふらつくノアリだが、その目は魔族を離さない。



「グゥああァ!」


「まさに、獣……!」



 パン……!



 ノアリの放つ拳を、魔族が受け止める……すると、その衝撃でノアリの、服の袖が弾け飛んだ。



「え……?」



 その、露になった肌に、俺は愕然とした。おそらくはガラドも。


 なぜなら、その肌は朱色に……染まっていた。いや、染まるというのは語弊だ。あれは……朱色の、鱗か?


 ノアリの肌は、朱色の鱗で覆われていた。あの鱗、見覚えがある……そう、もう10年は昔になる。


 たった一度だけ、会った……竜族の、体に。似ていた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ