表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第6章 王位継承の行方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/308

混乱重なるさらなる事件



 その日から、状況は、一変した。国王が自分の過ちを認めたことで、これまで王族への思いを内に秘めていた人たちは、それを機に変化があった。


 アンジーによると、城へは連日大勢の人が押し掛け、まさに混乱状態。


 これまで表立っての騒ぎがなかったのが、嘘のように……いや、これまでだってただ隠れていただけで、いつこうなっても仕方のない危険性はあった。


 押し掛ける人たち……それに対して、国王どころか誰からも、国民の声に応えるものはない。



「どうして……」



 それは、純粋な疑問だ。国王が過ちを認めれば、騒ぎが大きくなることくらい誰にでもわかる。


 それに対処しないというのは、あまりにもおかしい。


 国王の真意が、読めない。


 ……いや、それどころではない。



「シュベルト様! 今、国王様が……」



 それは、国王の発言からわずか3日後のこと。老化により弱っていた国王が、死去したと……大々的に、報じられたのだ。


 国王の死去、それは国の一大事だ。だが、ただでさえ事態が混乱していたのに、それに輪をかける形になったのは、もうなにをどうすればいいのか、わからなかった。


 国王は、すでに自分の死期が近いことを、察していたのだろうか。だから、あんな暴露をして、次期国王にリーダ様を推した……?


 今の状況で、シュベルトを次期国王としたところで、余計にこじれるのは見えているから。



「じゃあ、あれは国王の意思で言ったってこと?」


「多分、だけどな」



 現在俺たちは、屋上に集まっている。俺とシュベルトを中心に、ノアリ、ミライヤ、アンジェさん、リエナ。リィも味方になってくれそうではあるが、この場にはいない。


 リィも今回の件で、なにか力になりたいと言ってくれた。だから、彼女には周辺の動向を探ってもらっている。基本、俺たちとの接触は控えている。



「……まさか、こんなことになるとは」



 と、つぶやくシュベルト。当然ながら、こんな急なことになるとは、思っていなかったようだ。



「今、学園内は大混乱。シュベルト様の出自に、リーダ様の次期国王任命。その任命をした国王が、亡くなったなんて……」


「一部ではすでに、動きがあります。なにせ、国王の死去と、遺言に近いリーダ様の次期国王任命……王族の間でも、かなり騒がれているようです」


「うーむ……」



 これだけのことが一度に起こると、もう俺たちだけでどうにか出来る問題ではないのではないか……なんて思ってしまうな。


 言い方は悪いが、今やシュベルトよりもリーダ様の方が支持が高い。ただでさえ、国王の遺言もあるのだ。もうリーダ様が次期国王になるのは決まったようなもの。


 だが……



「一部では、今回の件に疑問の声も上がっているようです」


「疑問?」


「国王様の死が、もしかしたら老化のもの以外の可能性が。世間が騒いでいるこの時期に重なったこと……シュベルト様への不信が高い中で、リーダ様が次期国王に任命された。そのわずか数日後に、国王様が…………もしかしたら、これは」


「リエナ、それ以上は」


「……失礼しました」



 疑問の声、か……確かに、なんかいろいろとタイミングが良すぎるとは、思わないこともない。


 シュベルトは話を遮ったが、つまりはこういうことだろう。……リーダ様の手の者が、国王を暗殺したのではないか、と。



「でも、死因は老化なんでしょ? だったら……」


「……ま、そう発表されてるだけ、ってことよ」



 老化という死因は、王族から発表があっただけにすぎない。もしかしたら……



「……今は、その辺のことは置いておこう」


「そうですね。今、考えるべきは……」



 国王が死んだこと、リーダ様が次期国王に任命されたこと、これらは事実だ。だがまだリーダ様は学生、次期国王として扱おうという動きはあるが、まだすぐにというわけではない。


 俺たちが今考えるべきは、そこではない。



「……これから、か」



 シュベルトの、これから。それを、考えなければ。


 シュベルトはすでに、第一王子ではない。それどころか、国民を騙していたレッテルを張られ本格的に遠ざけられている。シュベルトと仲良くしている俺たちにも、嫌な目が向けられるくらいに。


 リィを一歩引いた位置に置いているのも、このためだ。


 事実は、なにをどう考えても変わらない。悪いイメージも、すぐには晴れない。


 ならば、考えるのはこれからのこと、だ。シュベルトが王族であることには変わりなくても、その扱いはこれまでと変わるだろう。



「……みんな、私のことで、すまない」



 と、シュベルトが頭を下げる。別に、シュベルトが悪いことをしているわけでもない……とは言いづらいものの、謝る必要なんてない。



「頭を上げてください、シュベルト様。私たちは……」


「そうそう、友達だろ? なら、困ったときに力を貸すのは当然だ」


「……あぁ、ありがとう」



 まだ頭を上げず、目元を伏せたままのシュベルトからは、若干の涙声がした。



「ただ、ちょっとひとりで考えてみたいんだ。庭でも、歩いてきていいかな」


「それでしたら、私たちも……」


「いや……ひとりに、なりたい」



 顔を上げ、そう語るシュベルトの目から、迷いは消えていた。どうやら、自棄になっているわけでないようだ。


 本当なら、シュベルトをひとりで行動させるのはお勧めしないが……学園の中だ。心配するようなことは、起こらないだろう。



「わかった、こっちでもなにか、いい案を考えておくから」


「……あぁ、頼む」



 そう笑みを浮かべるシュベルトの顔は、いつも通りの、笑顔だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ