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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第1章 復讐者の誕生

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指導鍛練の始まり



 ノアリと友達になり、別れてから翌日……初めてできた友達の顔をしっかりと脳内に焼き付けた俺は、今日、また別のことへと胸を高鳴らせていた。


 今日は、剣の先生……ロイ先生が、直接剣の指導をしてくれる初めての日だ。独学では限界がある中で、教えを受けることが決まってから俺はこの日を楽しみにしていた。



「ヤーク、楽しそうね」


「はい、楽しみです!」



 このようなやり取りが、先生が初めてこの家に来る日にもあった気がする。それほどまでに、俺は剣を習うことを楽しみにしているということか。


 元々は、あいつを殺すためにと始めた剣術の鍛練。あいつを殺すために、一番効率のいい方法を考えて、剣が一番向いているだろうと思って、剣の腕を磨くことにした。だけど、いつしか目的は復讐のためだけではなくなっていた。


 転生前では、剣を触ることすらなかった……いや、触ることくらいはあったか。国宝により、ガラドやミーロと共に王都に呼ばれたとき……なにか俺にできることはないかと、あらかたの方法を試した。もちろん剣も握った。振るった。


 だが結果として、ガラドどころかそこいらの一般兵士にすら及ばない技量だった。力も速さも技術面も、てんでダメだった。全然ダメだった。別に自信があったわけではないが、なかった自信がさらになくなった感じ。


 そんな自信のない剣を選んだのが、やはり一番効率のいい殺し方だと思っていたから。そもそも、生まれてから初めて剣を握ってうまくできる方が異常なんだ。だから、転生後の体がある程度動くようになった今なら、剣を慣らしておけば、上達できると考えた。


 実際、今の俺なら転生前の俺よりも剣術に関してははるかに上だ。10歳以上の年の差があるとはいえ、そこは自分でも疑いようがない。やはり、独学でも振れば月日の経過でそれなりに強くなれる。


 強くなれること。剣を振るう毎日が、こんなにも楽しいとは思わなかった。少しずつでも、自分の力が、体力が、技術が、上昇しているのを感じる。なにかに夢中になれるって、こんなにもいいことだったんだなと。


 今はもう、剣は復讐のための道具じゃない。ちゃんと学び、純粋に強くなりたい。強くなってなにがしたいか……それはまだわからないが、強くなればやれることの幅が広がる。転生前の俺は弱かった……だから、あんな最期を迎えることになってしまった。


 力さえあれば、もっとマシな人生を送れただろう。それこそ、あいつにあの時殺されることも、なかったかもしれない。剣の腕をもっと上げて、俺を殺した男を……あの父上(クズ)を、殺す。そのために……



「! いらっしゃったようです」



 扉が、ノックされる。どうやら先生が来たようだ。まずはアンジーが玄関へと向かい、扉を開ける。その向こうには、予想していた通りの人物が立っていた。


 ロイ・ダウンテッド……俺の剣の先生として、今日から直接指導をしてくれる。人気の先生であるようだが、母上の知り合いということも手伝ってか、わりと早めに来てもらうことができた。



「先生!」


「こんにちわヤーク。元気ですね」



 先生は俺のことをヤークと呼び捨てにするが、それは頼んだことだから問題ない。その敬語は癖らしく、誰に対してもそうなるらしい。


 転生前でも敬語で話されるなんてことがなかったから、ちょっとくすぐったい気持ちもある。アンジーでだいたい慣れたが。



「先生、今日はよろしくね」


「や、やめてくださいミーロ様まで……」



 母上が少しからかうように先生を『先生』呼びすると、先生はわかりやすく慌てる。冗談だとわかっているのかいないのか、真面目すぎるのか。


 そんなやり取りがあり、早速剣の稽古をするために中庭へ移動。ちなみに剣は木刀だ。



「さて、ヤーク……まずは好きに打ち込んできてください」


「はい!」



 それはこの前と同じようで、少し違う。先生が初めて来たときは、直接の指導はなく俺の体力等々を見ただけだったが……そのわずかな間で、俺の剣のアラを指摘し、そこを直すようにと実際はアドバイスを受けた。


 それを踏まえての、打ち込みだ。



「たぁあああ!」


「いい声ですね、自らの覇気を上げるためにも、それは重要ですよ」



 それからしばらく、先生に打ち込む。当然だが、そのどれもが先生には防がれてしまうし、かわされてしまう。右から打とうが左から打とうが、後ろに回って狙おうが……まるで目があるみたいに。


 そうして、しばらく続けたあと……



「そこまで!」



 振り下ろした剣を"素手で"受け止められ、そこまでと終了の合図。いかに5歳の体とはいえ、力いっぱい振り下ろした木刀を、片手で素手で受け止められるとは……


 防いだりかわせていたのは、やはりしっかり、俺の動きも見えていたということか。



「前回指摘された部分を、しっかり直してきたようですね。それに、キレも増している……我流で、それもその年でここまでやれるとは、やはりキミの努力は並々ならぬものがありますね」


「我流?」


「えぇ。剣には、いわゆる流派というものがあり、基本的にはいずれかの流派を真似て自身の技量を上げていくのですが……ヤークのそれは我流、独学だったのだから当然でもありますが、誰にも習わず流派を基礎とすることもなく……コツコツと力をつけてきた、ということですね」



 剣には、いろんな流派がある……か。知らなかったな。


 俺のはまあ、がむしゃらにやっていた部分が大きいから……どの流派にも属さずに、作り上げられたってことか。

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