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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第6章 王位継承の行方

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ゲルド王国王位継承者



 ……突然だが、このゲルド王国の現国王、ゲオハルト・フラ・ゲルドは、現在病に侵されている。病とはいっても、病気ではない……老化という名の、病だ。それは、この国に住む者ならば誰でも知っている。


 現国王が亡くなれば、次期国王として王位継承権を持つ王子が選ばれるのは、必然だ。


 そのうちの最有力候補として、シュベルト・フラ・ゲルドがいる。騎士学園に通う生徒にして、このゲルド王国の第一王子だ。


 第一王子……それは、次期国王を約束された存在ということである。なにをせずとも……というわけではないが、順当に行けば、シュベルトが次期国王になるのは約束された道だ。王位継承権を持つ第一の存在であり、また絶対の存在でもある。


 第二、第三王子と続いてはいても、次期国王を狙うために争いを行うのは禁止している。身内での争いなど見たくはない、このような理由から作られた、ルールのようだ。


 ただ、第一王子の身になにかが起こった場合、次の王位を継承する者がいなくなるため、その場合は第二王子へと引き継がれる。そして、第二王子にも同様のことがあれば、第三王子へ。


 なんらかの理由がない限り、王位継承権が移動することはない。たとえ国民からの支持が割れていようと、国王自身が王位を移そうとしても。王位が移るのは、第一王子が自ら王位継承権を放棄するか……もしくは、暗殺等で王子が亡くなった場合だ。



『ヤーク、これは、誰にも内緒よ』



 ……さて、第一王子であるシュベルトが次期国王になるのは、約束された未来と言える。本来ならば。ふと脳裏に、ノアリの言葉が思い出された。


 このゲルド王国は、一夫多妻制が認められている。特に王族などは、本妻を迎えた後に側室として、女性を何人か迎えている。この国の法がそうであれば、なにも問題はない。


 ……ただし、暗黙のルールというものはある。国王は、自らの後継者となる王子……正式に王位継承権を持つ者を、育てなければならない。


 そのために、国王が世継ぎを産ませるのは、まず本妻が最初だと決まっている。夫婦の営みに誰がなにを言う権利もないが、国王に関しては、本妻との間に第一子を設け、その子を第一王子とする。


 それこそが、暗黙のルール。国王の第一子を、第一王子とする。その後、側室と子を成すなど、自由にすればいい。


 ……さて、ここからがノアリに聞いた話だ。



『それでね、これはアンジェさんから聞いた話なんだけど……』



 正確には、シュベルトの婚約者であるアンジェさんの話であるが。彼女たちは、1年前に秘密を共有した。


 第一王子であるシュベルトは、正式な王位継承権を持っている。国王の第一子として、大々的に発表されたからだ。


 ……だが、その発表には実は裏がある。シュベルトは第一王子と言うには、実は少々難しい立場にあったのだ。シュベルトが国王の子であることは間違いではない、だが……


 母となる人物は、本妻ではなく、側室の女性であった。


 暗黙のルール……国王は本妻との間に第一子を設け、その男の子を第一王子とする。ちなみに女の子なら、第一王女として次期王女になる。……さて、暗黙のルール、それが蔑ろにされ、国王は本妻と子を設けるより前に、側室との間に子を設けてしまった。


 そして、生まれたのが……シュベルト・フラ・ゲルドだ。シュベルトは国王と本妻の子ではなく、国王と側室の子であった。



『それは、王族の中でも一部しか知らないらしいわ』



 それは、そうだろう。こんなこと、世間にバレたらどんな反応を受けるかわからない。側室との間に作った子を第一王子として挙げた国王や、シュベルト自身にも良からぬことを言う者が出てくる可能性もある。


 アンジェさんはこれをノアリ、そしてミライヤとヤネッサにも話したらしい。それは信頼の証だと。もちろん、シュベルトにも事前に許可を取った上でだ。


 俺も、ノアリからその話を聞いたことは、シュベルトに報告した。シュベルトは、いつか自分から言おうと思ってた、と悔しがっていたが。



『……ヤークは、こんなボクを蔑むか?』



 そう聞いてきたシュベルトは、不安そうだった。


 国王と本妻の間に生まれた子なら、なんの問題もなかった。だが、生まれた子の親は側室の女性……本来、本妻との間に子を設けるまでの間、控えていなければならない。


 そのため、シュベルトは自身の出生の真実を知り、ひどく落ち込んだのだという。言ってしまえば、父親が性欲に負けて側室の女性と致し、本妻より先に子を産ませてしまったのだから。


 しかし、シュベルトはなにも悪くないではないか。



『そんなこと、あるわけないじゃないですか』



 俺の言葉は、本心だ。同じようなことを思う者は、他にもいるはずだ。シュベルトは、ほっとした顔をしていた。


 しかし、これにはややこしい話が続く。シュベルトが生まれたその後のこと、今度は国王と本妻との間に、男の子が誕生したのだ。国王と本妻との第一子、それはシュベルトが生まれなければ、本来第一王子となるはずだった子。


 王室では、次期国王の扱いについて大きく2つの意見に割れた。いかに側室との子とはいえ、国王の第一子であるシュベルトを第一王子とする意見。生まれたのが2番目だったとしても、本妻との第一子を第一王子とする意見。


 様々な議論がなされたようだ。結果として、シュベルトは第一王子として発表された。しかし、そのことを快く思わない者が多いのも、確かだ。公にはシュベルトが第一王子としては発表されているが……


 ……どうしてこんな話をすることになったのか。それは、シュベルトもアンジェさんも、懸念材料があるからだ。王位のあれこれを俺たちに話したところで、所詮蚊帳の外な俺たちにはなにもできはしないが……



『ボクの弟……第二王子が、来年、この学園に入学するんだ』



 シュベルトの弟である、王位の立場としては第二王子である人物。しかし、国王と側室の子であるシュベルトとは違い、こちらは国王と本妻の子。


 つまり、第二王子という肩書ではあるが、本来であれば彼が次期国王となる存在だったのだ。


 シュベルトは、弟に対し申し訳ない気持ちも持っているという。だが、弟がシュベルトにどんな気持ちを持っているのかは、わからない。恨んでいるのかもしれないし、それとも……


 ……兄弟とはいえ、気軽に会える立場ではない。おまけに、シュベルトはこの1年、騎士学園の寮暮らしをしていた。たまに城には戻っていたらしいが、そこでどんなやり取りがあったのか。


 ……そしてこの年。シュベルトの言う通り、その人物は入学してきた。それも、新入生代表として、入学式のその日、教壇に立ったのだ。確か、俺たちが入学した時、代表の挨拶はあったが、シュベルトではなかったはずだ。



『……初めまして皆さん。新入生代表、リーダ・フラ・ゲルドと申します』



 その人物は、シュベルトと同じく金髪に水色の瞳、そして爽やかな表情であった。どこか、落ち着いた雰囲気……背は低いが、どこか見上げたくなってしまうような迫力があった。同時に、その笑顔は……どこか、含みがあるような。純粋と呼べるシュベルトのものとは正反対の、ものを感じた。


 ゲルド王国第二王子、リーダ・フラ・ゲルド。彼は、それから間もなくとして、自分を中心とした派閥を、作っていくこととなる。

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