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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第5章 貴族と平民のお見合い

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人を操る魔石



 人の認識をずらす、魔石……その存在は、俺とノアリにひとつの結論を出させた。


 ミライヤの身に、なにかが起きている。



「じゃ、行こう!」


「えっ」



 ヤネッサの言葉をきっかけに、俺たちは、ミライヤの部屋にやって来た。部屋にはリィがおり、ミライヤはいるかと聞けばいると返ってきた。だが、部屋の中に人がいる気配はない。


 やはりリィは、例の魔石の影響によりミライヤがいないのに、いるものだと認識してしまっているようだ。ノアリも一度部屋を訪ねたが、同じ方法でミライヤをいないものとして認識してしまったのだろう。



「これだ!」



 リィには悪いが、彼女を押しのけノアリ、ヤネッサ、そしてアンジーが部屋の中へと入る。さすがに、こんな状況とはいえ勝手に女の子の部屋に入るわけにもいかない。3人に捜索を任せ……聞こえてきたのが、ヤネッサの声だった。


 ちなみに、ここは女子寮であり男子は入れない。ならばなぜ俺はミライヤの部屋の前にいるのか。寮に入る際、教員のひとりに当然のように止められた。


 だがそこは、緊急を要すると説得して入れてもらった。



『緊急を要するんです! これでミライヤの身になにかあったらと思うと……え、ダメ? そうですか……あ、ちなみに僕の父親はあの『勇者』ガラド・フォン・ライオスなんですがね。いえいえ深い意味はないんですよ。ただ、この学園設立の発端は父の一声で、今も学園に多少の援助をしているとか。あなたくらいの教師なら、いつでも辞めさせられるでしょうし……いえ、すみません関係ない話でしたね』



 ……説得して、入れてもらった。


 正直、便利とはいえ『勇者』の称号を、それもあの男の名前を使いたくはなかった。今は俺の父親とはいえ、いずれ殺してやる男……そんな男の名前を使うなんて、ミライヤが危なくなければお断りだ。苦渋の決断だった。


 もちろん、名前を出したのはただのおど……説得の材料にするためだ。本当にあの男に頼るつもりなんかない。


 とはいえ、名前を出しただけで態度がころっと変わるとは。権力万歳。



「ヤーク、これ魔石だよ」


「おぉ」



 と、考え事をしているうちに魔石を持ったヤネッサたちが出てきた。俺は部屋に入るわけにいかないしな。


 魔石(それ)は、学園でよく見るもの……魔石には丸、四角、と様々な形があるが、これは四角だ。ただ、石の色が黒い。それはもう黒い。


 ただの魔石なら、用途により色が違うのはわかっている。火を出すなら赤、水なら青、灯りを灯すなら黄……しかし、黒なんて見たことがない。



「ね、ねえ、それ触って大丈夫なの? それに、私たちも影響を受けるんじゃ……」


「じゃあ、質問。ミライヤって子は、この場にいる?」


「そんなのいるわけない……ぁ」



 ノアリの心配事は、すぐに解消された。この魔石の影響により、ミライヤはいないものをいると認識をずらされていた。


 だが、今ノアリは……いや俺もだが。ミライヤがこの場にいないことをわかっている。それは、魔石の効力を受けていないことを意味していた。



「どうして……」


「それはだね……タラララーン! 魔力封じの袋~!」



 妙なリズムを口ずさみ、ノアリは手を掲げる。その手には魔石……いや、魔石がなにかに入れられている?


 それは、透明な袋だった。魔石を透明な袋に入れ、縛り、それをヤネッサは持っていたのだ。



「魔力、封じ?」


「文字通り、ね。これで魔石を包めば、魔石はその力を発揮できなくなるんだよ」



 魔石を入れた透明な袋。その中に入れた魔石は、効力が発揮できなくなる……そんな便利な、というか便利だが使いどころが限定されそうなものがここにあるなんて。


 ヤネッサ曰く、昔魔石を悪用した人間がいて、対処しようのない事態が起きた。火事とかだろうか?


 それを、エルフ族が開発した魔力封じの袋を使いあら不思議。事態は鎮火した。その時の教訓として、エルフ族はその袋を常に持ち歩いているのだとか。


 あの過激な格好のどこに隠し持っていたのか? そう思ったが、聞くのはやめておいた。今はそんな場合でもないしな。



「これで、魔石の効果は封じられてる。そこのリィちゃんも、もう正気のはずだよ」


「あ、あれ、皆さんなにを……あれ、ミーちゃんは?」



 先ほど、こうして押しかけてしまった際に部屋から押しのけ、理由も説明せずにあれこれ部屋の中を調べていたのだから、困惑するのも無理はないか。


 ミライヤがいないことを、ちゃんと理解している。確かに、魔石の効果は切れている。



「実は……」



 とりあえず、彼女にも知っておく権利はある。とはいえまだわかっていないことばかりだ、要点だけ説明する。ミライヤがいなくなったこと、魔石によってミライヤがいなくなったと認識できなくなっていたこと。


 そして……



「じゃあ……ミーちゃんは、誰かに誘拐、されて?」



 青ざめるリィ。もちろん、ミライヤがまだ誘拐されたと確証を得たわけではないが……


 もし自分で姿を消すにしても、わざわざこんな魔石を用意するだろうか。それに、どこで手に入れるという疑問もある。


 誰かに連れ去られ、その誰かが魔石を置いた、と考えるのが妥当だ。



「だとすると、犯人は女……?」



 この女子寮に、不審なく入れるのは女だけだ。生徒、もしくは教師……その、どちらか。それに、単独犯か複数犯か、の問題もある。


 そもそも、どうしてミライヤを……?



「ね、ねぇ、魔石って、魔力を溜め込んでいる……これも例外じゃないって言ってたわよね? ということは、ヤネッサに見つけてもらわなくても、いずれは効果が切れていたのよね」



 ノアリの言う通りだ。持続時間がある、ならば放っておいても、精神操作の効力がそのうち切れる可能性は高い。


 しかし……だからこそ、ミライヤが危険なのだ。



「もし効果が切れれば、俺たちは全力でミライヤを探し出す。騒ぎにもなる……そうなったら、ミライヤが殺されるかもしれない」


「そんな……」



 飛躍な考えかもしれない。だが、悪い想像ばかり浮かぶ。


 ミライヤを誘拐し、ミライヤの存在をごまかし、効果が切れるまでの時間でなにかをするつもりだった。


 だが、そのなにかが起こるまでに時間が来てしまったら……ミライヤを捜索される前に、彼女の命が絶たれるかも、しれない。

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