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復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~  作者: 白い彗星
第5章 貴族と平民のお見合い

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ヤネッサとノアリ



「はぁー、あったかあったか」


「だろうね」



 ヤネッサとの再会でひと悶着あったが、それも落ち着きヤネッサはアンジーが持ってきてくれた服を着た。服と言っても、上から羽織る程度のものだがあの痴女みたいな服よりはマシだろう。


 ヤネッサ曰く、俺に会いに来るために数日前からルオールの森林から旅に出たらしい。ひとりでの道のりは、それは大変だっただろう。



「やー、この国に来てからというのも、なんか視線が集まっているような気がしてね〜」


「でしょうね」



 現在、ヤネッサは胸元と下半身、際どい所を布で隠した程度の、なんとも過激な格好だ。初めて会った時も、こんな格好だったな。


 その姿に懐かしさこそ感じるが、同時にこの場ではものすごく浮いている。エルフの森では、ヤネッサだけでなく他のエルフも、似たような格好が多かったから。


 みんながみんなそういうわけではないが……エルフ族は、森の中で暮らしている。動きやすさを重視した結果、身軽な服装になっていったとのこと。服装と言っていいかは疑問だが、それは良しとしよう。


 なので、若者……それもよく森の中を移動したり、外に活動に向かう者がこういった服装をしていることが多い。


 とはいえ……



「ここは人里だからな、そんな格好じゃ目立つ。それにヤネッサはかわいいんだから、気を付けなきゃダメだろ」


「……うん」


「? ……いた、痛いっ。ノアリ、膝裏蹴らないで……痛っ」



 ヤネッサはここでは、というか人里ではちゃんと服を着たほうがいい。ヤネッサに限らずエルフ族は。


 そう心配してのことだったのだが、なぜかヤネッサは黙ってしまい、そしてなぜかノアリが俺の膝の裏を蹴ってくる。


 地味に痛い。やめてほしい。



「こほん。お二人は、なにをしていたんですか?」


「ウチに顔見せようと思って。ヤークは、連絡してないみたいだけど」


「あはは……サプライズ的な?」



 連絡もせずに帰るつもりだったので、ここでアンジーに会うのは予想外だ。別にやましいことがあるわけではないんだが、いいんだが。


 まあそれはそれとして、だ。せっかくヤネッサが会いに来てくれたんだ、積もる話もあるし、家でゆっくり話をするのもわるくないだろう。



「ヤネッサはもう、両親とは会ったの?」


「いえ、今お二方共お留守で……いきなり尋ねてきたヤネッサがヤーク様を探しに行ったので、追いかけてきたんです」


「ははぁ、なるほど。じゃあヤネッサ、改めてウチに……あれ?」



 家を尋ねて……か。以前家に来た時のことを覚えていたのか……いや、そういえばヤネッサは鼻が良かったな。俺かアンジーのにおいを頼りにしたのかもしれない。


 長旅をねぎらう意味でも、ヤネッサに家に来てもらおう。そう思ったが、少し目を離した隙にヤネッサの姿は目の前から消えていた。



「あぁ〜、ノアリかわいい〜! あんな小さな子が、こんなおっきくなるなんてー!」


「むむっ……」



 声がしたので、ノアリの方に視線を向ける。するとそこには、ノアリに抱きつき、頬擦りをしているヤネッサの姿があった。


 ヤネッサとは、『呪病』の件で共に旅をした中だ。その中で、ノアリのことも話し……家に帰った時には、実際に会ったりもした。もちろん、ノアリは眠っていたが。


 その後、体調が回復したノアリと話したりもしたようだが……ノアリは、よく覚えていない。それでも、俺がちょくちょくヤネッサの名前を出していたから、名前はよく知っている。


 ノアリにとっては初対面ではないが、初対面みたいなものだ。



「ヤネッサ、ノアリ様が困っていますよ」


「えー?」



 アンジーがヤネッサを引き離すが、ヤネッサは不服そう。エルフ族は長寿であるから仕方がないとはいえ、あの時子供だったノアリが、今ヤネッサと同じくらいの見た目になっている……なんとも不思議なものだ。


 ノアリはというと、俺と共に命を救う旅をしてくれた恩人、という認識があるからか、あまり強くは出られなさそうだ。あまり気にしないでもいいのに。


 アンジーに離されたヤネッサだが……ふと、なにかを思い出したかのように、鼻を動かす。においを嗅ごうとしている、犬のようだが……



「ど、どうした? ノアリ」


「ん……かすかに、魔力のにおいが、する」


「魔力の?」



 俺の問いかけに、答えるノアリ。それに対して、アンジーは怪訝そうに首を傾げている。


 魔力……それは、魔法と呼ばれるものを使うための力のこと。魔法とは、本来エルフ族にしか使えないもので、同時に魔力を感知できるのも、エルフ族だけという話だ。


 だが、同じエルフ族であるアンジーには、ノアリの言葉は理解できないようで……



「魔力の気配なんて、感じないけど……」


「気配じゃない、におい」



 魔力の気配、それならばアンジーも感じられるはずだ。だが、ヤネッサが言うのはにおい……それを、ここで感じるのだという。そもそも魔力はにおいとして感知できるのか、わからないが……ヤネッサが冗談を言っているようには、見えない。


 アンジーはヤネッサを解放し、ヤネッサはくんくんと鼻を動かしながら、においの方角へと足を進める。そこには……



「え、私?」



 ノアリがいた。困惑した様子だが、ヤネッサは至って真面目にノアリの頭から足まで、においを嗅いでいく。ノアリ本人はとても恥ずかしそうだし、周囲からチラチラ見られている。


 やがて、終わった後にヤネッサは少し離れる。そして、ノアリを見ながら……



「ノアリから、魔力の痕跡が、におう」



 そう、告げた。

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