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凡人な私は悪役令嬢らしい

 




 昼休み、私は今日も友梨ちゃんと食堂に向かった。

 昨日の失敗を繰り返すまいと今日はメロンパンを注文した。たかがメロンパンと言って侮ることなかれ!外はサクサク、中にはカスタードクリームが入っているとってもとっても美味しいと評判の逸品なのだ。そして何より、このメロンパンはビニールに包まれている。ここ大事。ビニールによって厳重に包まれているのだ!

 よってたとえつまずいてしまっても、誰かの服を汚すことはまずないのである。

 素晴らしきメロンパン!素晴らしきビニール袋!!


 席について、さぁ食べよう!と意気込んでると


「おい!そこのお前!」


 美希の友人の水瀬少年がやってきた。


「はい。なんでしょうか?ちなみに私は お前 ではなく美希の姉の明希です!」

「ふん。お前、美希のこといじめんなよ!!そんなことしたら俺が許さないからな!!!」


 私の言葉はスルーして自分の主張だけしてきた。


「いやいや!待ってよ!私、美希のこといじめたことなんか生まれてこのかた一回たりともないよ!

 昨日のは私のおっちょこちょいが招いた事故なのです!」

「は?そんなこと信じられるわけないだろ!?」


 えー!もーやだ。この子私の話を聞いてくれナイヨー。


「まぁまぁ、朝斗落ち着きなって。美希も明希さんはそんなことしないって言ってたでしょ?」

「そうですよ。それにたくさんの生徒が利用する食堂で騒いでは周りの迷惑になります。」


 そう言ってふたりの男子生徒がやってきた。

 先に喋った方が吉良(きら) (あずさ)で、後で喋ったのが松崎(まつざき) (さとる)だ。



  吉良 梓は私が初等部にいた時は東林学園の王子様的存在であった。顔良し、性格よし!モテないわけがない!!きっと今もそうなんだろうな〜 私は心の中では王子って呼んでる。

 

 そして、王子の幼馴染が松崎 悟だ。ズバリ!インテリ眼鏡だ。クールなイケメンです。頭が良く、毎回のテストでは匠と一位を争っている。(何気に匠は頭がいい)そして、彼もなかなかモテる。涼しげな視線がたまらなくかっこいいとかなんとか。ちなみに私は心の中では宰相閣下って呼んでる。


 我が校が誇る名物ペアである。


「いや〜明希さん朝斗がごめんね。

 というかお久しぶりだね。また一緒に学校生活を送れるなんて嬉しいよ。」

「お久しぶりです。これからまたよろしくお願いしますね。」

「こちらこそお久しぶりです。いつも美希がお世話になってます。

 それにしてもお二人とも相変わらずの人気ですね。」


 うん。今も周りからの熱い視線が2人に注がれているのをひしひしと感じますしね。

 そして私には冷たい視線がグッサグサ刺さってますね。すみませんね、私みたいな凡人が王子と宰相閣下と話してしまって。


「まぁ、そうだね。それじゃあそろそろ失礼するよ。」

「ほら、朝斗も行きますよ。

 明希さん、それでは失礼いたします。」


 王子と宰相閣下は水瀬少年を連れてこの場を去っていった。

 いや〜助かったわー。

 にしても、早いとこ誤解をどうにかしないとまずいことになりそうだねぇ。私に妹をいじめる悪役令嬢なんて勤まりません!!!

 絶品メロンパンを頬張りながら私は決意を新たにした。






 __________________________放課後。



 今日は風紀委員会がありまっす。

 フッフッフッ。私が東林の平和を守る時がやって来たのだな!!


 委員会がある教室に着くとそこにはたいっちゃんがいた。なんでいるのー!?!?


「お!小宮来たな!!俺が風紀委員会顧問だ!!わからないことがあったらなんでも聞きたまえ!!!」


 あー、顧問か。なるなる。てゆーかやっぱりこの人暑苦しいなぁ。

 でもこのくらいアツくないと東林の平和は守れないってことなのかも…

 私も見習おう!…見習えるか…?


「さてと、早速委員会を始めるぞ!!!

 今日は風紀委員の仕事である登下校時の挨拶運動の当番を決める!!!二人組で校内を回りながら行ってもらう。ペアはくじで決めるぞ!!!」


 挨拶運動とは、挨拶することで学校の風紀を向上させ、かつ生徒の服装をチェックする活動である。

 何事も挨拶から始まり挨拶に終わるからね〜うんうん。気持ち良い挨拶は素敵な毎日を作ってくれる。挨拶は大切である。


 さーてさてさて、くじの時間がやってまいりました。まぁ、誰とやっても同じだからね〜でも話しやすい人とだといいなぁ。


 私が引いたのは3番だった。私のペアは一体誰かなぁ〜と思ってる周りを見ても他の人は全員組んだ後で誰も残っていなかった。

 おい。もう1人の3番はどこいったんだ!?

 まさかのボッチか!?!?いーやーだー!!流石に寂しいぞ!!


「先生!3番の人がいないです!!」

「お!そうか!実は委員長がまだ来てないんだが、小宮は委員長と組んでもらう!!遅れてくるようなのでこの後来るまで残って待っていて欲しい!!!

 他の人は今日はもう帰っていいぞ!!!解散!!!!」


 ほぅ。委員長とペアですか!なるほどなるほど!!



 みんなが帰った後、1人で待っていると教室の扉がガラッと開いた。


「遅れてごめんね〜」


 全く悪いと思ってなさそうな声でそう言いながら入って来たのはチャラ男だった。別にだらしないわけじゃ無いし、わりときちんとしているのになぜかチャラチャラしたオーラがみじみ出ている。不思議だ。


「あれ?明希ちゃんしかいないの??」

「はい。挨拶運動のペアが風紀委員長だと聞いて残ってたんですけど、まさか芦澤先輩が委員長だったりしませんよね?ま、さ、か違いますよね??」

「あ〜ペアは明希ちゃんなんだ!

 ん?まさかも何も俺が委員長だよ!!」


 まじか〜むしろあんたが風紀乱してんだろっ!とか思っちゃうよね〜

 このチャラ男は芦澤(あしざわ) 悠哉(ゆうや)先輩だ。東林高校2年生である。このチャラ男もなぜかモテる。なぜだ?

 まぁ、面倒見はいいし顔もいいしおしゃれだもんね。あ、意外とポイント高かった。

 初等部の頃からの知り合いで私とは比較的仲が良い。


「先輩が風紀委員でしかも委員長だなんて、驚いて開いた口が塞がりません。」

「え!?そうかな〜

 あー。それよりさ!明希ちゃんって美希ちゃんをいじめてるらしいね(笑)」

「(笑)じゃないですよ!笑い事じゃないです!!

 なんか誤解されちゃったみたいなんですよね。まじで心外です!!!」

「まぁまぁ、そんなに怒らないで!

 俺は明希ちゃんがそんなことしないってことわかってるからさ!

 それに、初等部にいた奴らなら明希ちゃんが美希ちゃんのこと大大大っ好きってこと知ってるはずだしさ!!

 ま、困ったことがあったら俺に言ってね!力になれることもあるか知れないしさ〜」


 先輩ぃぃぃい!!!チャラ男とか思っててごめんなさい!!先輩は全然チャラくなんて無いです!!!!めっさいい先輩です!!


「先輩!見直しました!!

 これから挨拶運動頑張りましょうね!

 2人で東林の平和を守りましょう!!!」

「え?見直してくれてありがとう?

 そうだね!これからよろしくね〜」






 それにしても2年生にまで私が妹をいじめる嫌な奴!っていう噂が広がっているのか…

 困った。このままでは完全に悪役扱いされてしまう!!!

 何かしらの手を打たねばならぬなぁ。


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