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超人クラブ 先生のフィアンセ その22
しばらくして孝雄はぴたりと泣くのをやめた。
「今の話。聞いておったな」
「へいっ、出入りですね。おやっさん」
孝雄の払った右手が幹部の顔にヒットした。
「バカたれ!なるたけ穏便にすませるんじゃ。穏便に」
「へっ、へいっ。穏便ですかい」
痛がりながらも返事をする。
いつもとは真逆の指示だ。
「弘明の友人とやらが壊したビルは子会社の都築建設に
全部直させろ。費用はこっち持ちでな」
「へい」
「誠道会に詫びをいれて、それからアレン・ホワイトという青年の
身柄をこちらで引き取りたい旨を伝えろ」
「へいっ」
「顧問弁護士の中川を使え。それでうまくいくだろう」
「承知しやした」
自分がその場を辞した後、
そんなやり取りがなされているとは知らない藤堂弘明は
例の黒塗りの外車を運転してカーレンタル店を訪れていた。
弘明に外車を乗り回す趣味はない。
この仰々しい高級車はただの借り物だった。
そこで自分のK自動車に乗り換えコートを脱いで
オールバックに整えた前髪をもとに戻した。
素の自分に戻ってようやく息をついた。
「はあーっ、緊張した……」
いつもながらに疲れる体面だ。
それにしても、お見合いだなんて困った事になったと
改めてそう思っていた。




