超人クラブ 先生のフィアンセ その21
「そうか。呑んでくれるか」
途端に孝雄の顔がほころんだ。
「実はお前に見合いの話があってなぁ。
大手お菓子メーカー『星咲』のお嬢さんだ。
いいとこのお嬢様だ。文句はあるまい?」
「へっ?あの、……要求って、お、お見合いですか?」
拍子抜けした話に思わずどもってしまう。
「他に何がある。はよう、結婚せい。わしゃ、孫が抱きたい」
「わっ、わかりました。見合いの日時を指定してくれれば合わせます」
色事が苦手な弘明ならではの慌てぶりだ。
草々にその場を退散しようとして土下座体制から立ち上がり、くるりと
踵を返すと、いつの間にか屋上へ上がってきた幹部二人と鉢合わせした。
動揺を隠して慌ててグラサンをかけ直す。
「若、もう帰るんで?」
「うっ、うるさい!若と呼ぶな」
またしても、しなった右手は顔にヒットした。
弘明は痛がる幹部をしり目に、そのままエレベーターホールに行き
中に乗り込んで、階下に降りて行ってしまった。
「おやっさん、若には甘いですねぇ。また、跡目の話しなかったんですかい?」
もう一人が言う。
強面の孝雄はじろりと二人を睨んだ。そしてため息をついた。
「……似ておるのだ。あ奴、小百合さんに」
小百合は弘明の母親の名前だ。
「ぐすっ」
孝雄は鼻をすすり上げた。
「はぁっ……」
「憂いを含んだあの眼で必死になって唇をかんで耐えているのを見ると
とてもとても跡目の話など出来るものではないわっ!」
「はぁっ……さようで」
「ああっ、小百合さん、儂は本当に息子に酷い事をしておる。
許してくれ。さゆりーっ」
孝雄は一人感極まってお-いおいと泣き始めた。
「おやっさんも人の子だったんですねぇ」
縁台から立ち上がって泣いている孝雄を見ながら
つくづく二人はそう思った。




