超人クラブ 先生のフィアンセ その12
「タバコ、相変わらずですね」
「ああ、そうだな。
最近はどこも禁煙が厳しくなってきて肩身が狭い思いをしてるよ」
「いっその事、止めたらいいと思うんですが」
「何言ってる。他人より余分に税金納めてるのに、
なんでこんなに冷遇されなきゃいけないんだ。
そこら中に走ってる道路の一本くらいはきっと納めてると思うぞ。
道のどこかに藤堂弘明氏寄贈と明記してもらいたいくらいだ」
「おおげさな」
「本気で言ってるんだが」
弘明は名だたる酒豪だ。学生時代彼に勝てるのんべえはいない。
酒と煙草で他者よりも多い納税をしているのはまぎれもない事実だった。
「褒められた事じゃないと思います」
義之はそう言って椅子から立ち上がった。
換気の為の窓を開け放そうとベランダの方へ行く。
テラス戸の鍵に手をかけてがくりと膝を折った。
ガラス伝いに体が崩れ落ちる。
「義之!」
普段、名字でしか呼ばない彼を久しぶりに名前で呼んだ。
煙草の火を消して、倒れ伏した体を抱き起こす。
義之は安からな寝息をたてていた。
「オーバーワークだ。
お前、相変わらず頑張りすぎだ」
弘明は彼をお姫様だっこして、ソファに移した。
ネクタイを抜き取り第一ボタンをはずして、寝所から毛布を持ってきて体にかけてやる。
「おい、こら、買ったばかりの毛布をお前にかけてやるとは思わなかったぞ」
しどけなく眠る義之に話しかけても返答があるはずはない。
中学以来だった。
彼の超能力が目覚めた時。
力の使い方が解らず、暴走し、
挙句の果てにチート能力を使いすぎて意識を失くしたのは。
この力は無尽蔵に使えるわけじゃない。
使えば使っただけ肉体的な疲労が大きくなる。
以来、彼は極力この力を使わないようにしていた。
その彼が意識を失くすほど力を使ったのだ。
今回の一件はよほどの事だと理解せざる負えない。
改めてテーブルの上の人物相関図を見る。
弘明は彼の為に出来る限りの骨を折ってやろうと心に決めた。
義之の為にメモを書きつけ未明になってようやく寝入る。
明け方になって、トイレに起きた弘明はリビングにいたハズの義之を
探して姿がないことに気が付いた。
とっくの昔に自分のアパートに帰ったらしい。
部屋の電気をつけ、自分のメモはなくなり
代わりに残されたメモにありがとうの文字が記されて。
「相変わらず、つれない」
一人ごちた弘明は再び煙草に火をつけた。
一服してテラス戸を開け、夜明けの空を眺める。
彼にとって煙草は精神安定剤の役割を果たしている。
煙草は当分、やめられそうもない。
彼はそっと瞼を閉じた。
危なっかしい友を想って……。




