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超人クラブ 先生のフィアンセ その9

ダイニングテーブルに菊留義之と差し向かいで座っていた藤堂弘明は話の詳細を聞いて。


「エッ、何、なんだって?」

と言って絶句した後、口元に持って行ったコーヒーカップを危うく取り落としそうになった。


「するってぇと何か。暴力団の根城に殴り込みをかけ生徒を二人拉致って来たって?」

「人聞きの悪い。拉致ってきたんじゃなくて奪還してきたんですよ」

「よく無事だったな」


義之はあきれ顔の弘明に憤慨しながら、入れて貰ったコーヒーを一口飲んで不満を表明した。


「コレ、……砂糖入ってますね」

「あーっ、めんどくせー奴、お前ブラックだっけ」

「そうですよ」

「はい」とインスタントコーヒーの入った瓶ごと義之に渡してやる。

「自分で入れなおせ」

「言われなくても」


そう言いながら流しに行きカップに入ったコーヒーを捨て自分用にもう一度入れなおす。

一口飲んで人心地ついたのか。義之が言った。


「実は相談があるのですが」

「却下」

「はぁ?、まだ、何も言ってませんけど」

「言わなくてもわかる。碌な相談じゃないってことは」


コーヒーを口に運んで弘明は言う。

「いいか?最初に言ったように俺は忙しい。

 離婚の調停に、遺言の作成、相続でもめてる家族の裁判、飲食業の食の安全に関する法令順守の相談。

 残業代を支払わないブラック企業の裁判、その他もろもろエトセトラ。

 目の前にある案件だけで手一杯だ。お前の相談にのる余裕はない」


嘘ではない。所属している事務所は200以上の案件を抱えている。

ただ、駆け出しの弁護士である自分は既存の弁護士事務所に雇われている身だ。

全部担当しているわけではなかったが、この場合大げさに云うべきだと心得ていた。


「……民事ばっかりですね」

「弁護士は、殺人事件の容疑者を弁護するのが仕事だと思われてるかも知れないが、

 実際は民事のもめ事を治める方が多い。漫画やドラマのようなかっこいい場面は皆無だ。」


ドラマで「異議あり」と颯爽と反論して見せる弁護士に憧れて、目指した職業が実はこんなに地味で真面目な仕事である事をとても残念に思っているのは弘明自身だった。


世の中結構、思うようにはいかない。


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