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超人クラブ 先生のフィアンセ その6

仁がトイレから出てくると

食卓の上には三人分のカレーライスとサラダが載っていた。

天板の厚いダイニングテーブル。四人分の猫足の椅子。

一人暮らしにしては立派すぎる。

三人で着席して手を合わせた。


「いただきます」

仁はくすりと笑う。

「手を合わせるなんて小学校の給食みたい」

「どんな時でも感謝の心を忘れずに手を合わせるんですよ」

俄神父にでもなったような面持ちで先生はツッコミをいれた。

「ぶっ!!」

一口食べてむせた。

げほっげほっとせき込んでいる。

カレーの横に用意されたグラスの水を一気に煽る三人。


「かっらー、ひかりさん。何を……。」

「ガラムマサラ?」

「唐辛子じゃね?そんな味がする」

「トウガラシ?そう言えばベランダのプランターに

 唐辛子植えたって言ってました」

有名店の十辛カレーを思わせる激辛な味に涙をこらえて

先生は言った。


「これは……何かの報復でしょうか」

「違うと思う」

ひかりはお風呂に入る前にはもうカレーを作り終えていた。

養子の話はその後の事で報復に

カレーの中に何か入れることはありえない。

「……先生、ほんとにあの人と結婚するの?」

「ええ」

「婚約、破棄されてよかったんじゃ」

「いいえ、断じてそんな事はありません」

きっぱりと言い切って先生は椅子から立ち上がった。


笛吹ケトルに水を入れ火にかける。

食品のストック棚を物色してカップ麺をみっつ取り出した。

「今日の食事はこれにしましょう」

二人の返事を待たず、包装紙を破り蓋を半分まで外して湯を注ぐ。

激辛カレーよりはましだったから、

三人共、それを胃袋に収めた。


お洒落なカフェで食事をしていたひかりは、くちゅんとクシャミをした。

「やだわ、誰かうさわしてる」

食事したなんて嘘だった。

先生の家でカレーを作って自家栽培した唐辛子を投入した。

あんなに辛くなるなんて……。


味見したとき辛過ぎて食べられなくなっていた。

まぁ、あんな突拍子もない事を言う先生とクソガキにはいい薬だったのかも知れないわ。

喫茶店のカレーを口に運びながらそう思う。


バイオレットアイズの彼には申し訳なかったけど。

王子様然としたプラチナブロンドの彼。どこか儚げな風情。

先生は彼を養子にしたいと言った。


訳も聞かずに先生に平手をかました事をひかりは後悔した。

「ちゃんと話すべきだった」そう思っていた。

銀縁眼鏡をかけて細身のスーツを纏った優し気な先生の顔を脳裏に浮かんだ。

「うーん、もう、先生の馬鹿!」

食事を終えて清算し店を出る。


婚約破棄宣言をしても動じることなくへー然と話しかけてくるあの図太い神経。

ちったぁ慌てなさいよ。苛立たしさを解消すべく

繁華街に近い駅のロッカールームに行き、預けてあった荷物を引き出した。。

ひかりはそのまま駅トイレに設置されたパウダールームに向かい着替えを始めた。


着替えを終えたひかりは、まるで年若い男性に見えた。

ダブル仕立ての黒のスーツとズボンに白いカッターを着てネクタイをしめ、

男物の靴を履いて髪は緩い三つ編みで右肩に流している。

もともとのベビーフェイスに加え、人を魅了する黒目がちな双眸。


ひかりは着ていた服をロッカーに預け、

繁華街に向かい煌びやかなネオン街の一角に消えた。

『謎のイケメンホストが夜のネオン街に出没するうわさ』が

SNSとツイッターで囁かれるようになるのはそれから二月ほど後の事だった。


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